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01/04/2010

番組のギャラってそんなに安いと思われていたの?

Rocket News24が次のような記事を掲載しています。

人気テレビ番組のスペシャル版『新春大売り出し!さんまのまんま』の番組内で、ゲストとして呼ばれた女性タレントが800曲の音楽が記録されているiPod nanoを明石家さんまにプレゼントするという衝撃のシーンが放送された。iPod nanoのプレゼントは問題ないが、楽曲が記録されたiPod nanoのプレゼントは著作権法違反に触れる可能性がある。しかも800曲という膨大な量の楽曲の為、巨額の罰金が発生する可能性が高い。

 果たしてそうでしょうか。

 公衆の定義については争いがありますが、行為者から見て行為の相手方が「不特定人」である場合にはそれが一人であっても「公衆」にあたるという見解をとったとしても、特定の友人に複製物をプレゼントしたということであれば、「その著作物……をその原作品又は複製物……の譲渡により公衆に提供」したとはいえないので、譲渡権侵害は成立しません。

 友人にプレゼントをする目的でiPod nanoに(CD等からリッピングした)楽曲データを転送することが「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること……を目的とする」「その使用する者」による複製にあたるかということは、実は難しい問題です。複製物の作成者自身がその複製物からその著作物を知覚する場合のみ「その使用するものが複製する」といえるという解釈をとると、「少人数の勉強会で発表者が関連する文献をコピーして参加者に交付する」ということも第30条第1項で正当化されなくなってしまいますが、それは「家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること……を目的とする」場合もカバーすることとした同項の趣旨をないがしろにするものであるように思われるからです。複製物を譲渡することも著作物の「使用」に含めてしまえば、それが「家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において」なされる限度においては、そのことを目的としてiPod nanoにデータを転送することは第30条第1項によりカバーされることになり得ます。

 さらにこれが著作権侵害に当たるとしても、賠償額が「巨額」といえるかは大いに疑問です。

 Rocket News24は、

このプレゼントを合法的なプレゼントにする方法もあるが、それには事前にJASRACに対して800曲分の著作権料を支払う必要があり……。番組のギャラ以上の巨額が必要となることもありえる!?

などと煽っていますが、オーディオ録音の場合のJASRACに支払うべき使用料は、定価の明示のない場合、1曲8円10銭ですから、800×8.1=6480円程度にしかなりません。「番組のギャラ」ってそんなに安くはないと思います。まあ、隣接権者に支払うべき賠償金も計算に入れよと善解すべきなのかもしれませんが、邦楽CDだって概ね1曲200円前後(アルバムごとに差があるにせよ)で、掛率約7割とすると、JASRACと隣接権者が分け合う基礎って1曲あたり140円前後です。800曲分でも140×800=112000円程度です。その番組を見ていないのですが、明石家さんまの友人として同人に番組上でプレゼントを渡す程度の芸能人であれば、「番組のギャラ」ってそんなに安くはないと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 09:33 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

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Commentaires

お笑い芸人『ジャルジャル』が違法ダウンロードの可能性
http://rocketnews24.com/?p=22104
懸念したとおりの展開ですが、ネットメディアが率先して加担するというのは予想外でした。

Rédigé par: 無七志 | 6 janv. 2010, 20:55:04

 もう聞き飽きた話かもしれませんが・・・なんて面倒な法律なんでしょうね。こんなことも簡単に分からないなんて・・・。「難解な条文は専制の象徴」という法諺を聞いたことがありますが、ちょっとでも怪しいことは「違法」に見えるために萎縮効果を生むこの法律は、法による専制そのものだと思います。

Rédigé par: gase2 | 5 janv. 2010, 22:18:51

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