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03/23/2008

Culture Firstのウェブが公開

 Culture Firstのホームページが立ち上がったようです。そこでは、

私たちは、流通の拡大ばかりが優先され、作品やコンテンツなどの創作物を単なる「もの」としか見ないわが国の昨今の風潮を改めるべく、文化の担い手として社会に喜びと潤いをもたらす役割を果たしていくことをあらためて表明するとともに、次の3つの行動理念を掲げ、最先端の知財立国として、世界に冠たる「文化=Culture」が重要視される社会の実現を求めます。

との意見表明がなされています。「文化の担い手」が起草しまたは承認したものとは思えない、空虚で上滑りした文章です。

 しかも、そのための具体的な行動方針として、私的録音録画補償金制度の拡充を求めることしかしていないというあたりが何ともいえません。私的録音録画って、作品やコンテンツの「流通」自体を拡充するものではなく(例えば、私が、購入したCDを、CDコンポに挿入して聴くのではなく、iPodにリッピングして聴くことにしたとして、そのことにより「流通」は拡大していません。)、むしろ、作品等の享受形態を拡充するものです。より正確に言えば、私的録音録画は、作品等を、いつでも、どこでも享受できるという言語著作物については写本の時代から実現できていたことを、音や影像でも実現する手段としてなされているにすぎず、作品等の享受形態の拡充というより、回復といった方がよいかもしれません。

 その上で言えば、経済の発展や情報社会の拡大を目的としたどんな提案や計画も、文化の担い手を犠牲にし進められることのないよう、関係者並びに政府の理解を求めますとのことですが、私が、購入したCDから音楽をリッピングしてiPodで聴くことにより、「文化の担い手」がいかなる意味で犠牲になるというのでしょうか。理解を求めるというのであれば、その前にきちんと説明すべきです。

 また、文化の振興こそが、真の知財立国の実現につながることについて、国民の理解を求めるとともに、その役割を担っていくことを表明しますとのことですが、ハードウェアメーカーの利益の上前をはねなければ振興されない事業なんてものは、「立国」の役には立ちません。知財立国を実現する、すなわち、知的財産によって国家の存立・繁栄を図るというのであれば、私的録音録画補償金などに頼らず、海外に進出して、世界中からお金を集めるくらいのことが必要です。補償金に頼り、補償金の拡充の陳情に明け暮れる事業者の団体がどのくちで「立国」などといえるのか、大いに疑問です。

Posted by 小倉秀夫 at 03:00 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

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Commentaires

個人的には、Culture Firstの文化をもっと大切にって考え方には概ね同意なのですが、私的録音録画補償金制度の話が前面に出過ぎなんですよね。そもそも、私的録音録画補償金制度は、Culture Firstの推進団体の一部にしか分配されてないようですし・・・。放送インフラを通じて配信されるメジャーなコンテンツは、補償金で守ってくれるとして、民俗芸能みたいなニッチなコンテンツはどうするの?という疑問にCulture Firstが答えてないんですよね。個人的には、ニッチなコンテンツを守るためには、むしろ流通経路の拡大とコストを低減が必要な気がしますが、これを気に、私的録音録画補償金制度をニッチなコンテンツにも分配します!とか発表されれば、もうちょっと考えてあげてもいいかもと思います。

Rédigé par: Transferrin | 28 mars 2008, 00:23:33

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