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01/04/2008

正規レコード・CDの代替商品は何だったのか

 平成12年と平成18年のJASRACの収入を比較してみて、レコードやCDの売上減少分のうち適法な代替サービスに向かったと思われるものがどの程度あるのかを予想してみることにしました。


 平成12年のオーディオディスクからのJASRAC収入が37,749,723(千円)なのに対し、平成18年のそれは 24,252,050(千円)ですから、この間の減収分は、13,497,673(千円)ということになります。ここから、ビデオグラム増加分4,780,484(千円)、着うた分2,189,716(千円)、その他音楽配信分2,167,863(千円)を差し引く(さすがに、「着メロ」は音楽CD等の代替とはならないでしょうから計算に含めていません。)と、残りは4,359,610(千円)となります。これは、オーディオディスクからの著作権料の減収分の約32.30%に過ぎません。


 では、この残りの約32.30%は、違法ダウンロードにより生じたものなのでしょうか。ここで考えなければいけないのは、着うたにせよ、その他音楽配信にせよ、通常1曲単位で購入することが可能だという点です。レコードにせよ、音楽CDにせよ、特定のヒット曲のみを購入したと思っても、1個のパッケージに収録されている楽曲(シングルCDですら、カップリング用の楽曲に加えて、カラオケバージョンやリミックスバージョン等が含まれているのが通常です。)全てを購入しなければならなかったわけで、それら「特に欲しかったわけではない」楽曲についての著作権料も消費者は間接的に負担してきたわけです。それが、着うたにせよ、iTunesのようなその他音楽配信にせよ、欲しい楽曲のみを購入できるわけです。したがって、1曲あたりの著作権料が変わらないとした場合、消費者が楽曲データを購入する手段を音楽CDから音楽配信に代替させた場合、抱き合わせ分を買わなくともよくなった分だけ、JASRACに間接的に支払うべき著作権料が減少することになります。


 仮に、このように抱き合わせ分を購入しなくとも済むようになったことにより購入する楽曲数がマキシシングル(5曲)から1曲に減少したと仮定した場合、着うた及びその他音楽配信による著作権収入分を5倍したうえで、オーディオディスクからのJASRAC収入の減少分からビデオグラムからの著作権収入の増加分を差し引いた金額からさらにこれを差し引いた数字が、「レコード・音楽CDから他の正規商品への代替」以外の要因によりオーディオディスクからのJASRAC収入が減少した分ということになります。


 ただ、困ったことに、

13,497,673-4,780,484-2,189,716×5-2,167,863×5=-13,070,706(千円)

ということで、むしろ、正規に楽曲を購入する手段がレコード・音楽CDからビデオグラム・着うた・音楽配信へと移行するに伴って、却って消費者はまじめにお金を払うようになっているという結論すら導き出されかねない状況です(といいますか、貸しレコードからの著作権収入の減少分10,724,434(千円)を補ってなお余りがあります。


 このように考えてみると、著作権管理団体が「違法アップロード」により収入が減少したと考えている分の多くは、実は、抱き合わせ販売ができなくなったことによる収入減少に過ぎないのではないかという気がしてなりません。そして、それは、コンテンツビジネスにおいて、むしろ正常な姿に近づいているといってもよいのではないかとも思えたりしてきます。

Posted by 小倉秀夫 at 07:58 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

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Notifié: 5 janv. 2008, 02:10:31

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