●語り:向井秀徳(ミュージシャン:ナンバーガール/ZAZEN BOYS) 「平成」はどんな時代だったのか。 ここでは歌舞伎町に絞って振り返ろう。数多くの写真家が歌舞伎町に魅了されてきたが、20年以上撮影を続けているのは韓国人カメラマンのヤン・スンウーだけだ。写真界の直木賞といわれる「土門拳賞」を、外国人として初めて受賞。とにかく被写体との距離が近い。ヤクザだろうが、喧嘩の現場だろうが、必ず声を掛けて撮影し見る者を圧倒する。しかし、被写体の宝庫だった歌舞伎町に、異変が起きているという。平成の最後に、ヤンと街を歩いた。 ―“人間の匂い”を感じづらくなった ネオンが眩しい風俗店。呼び込みの男たち。一見すると、歌舞伎町は以前とあまり変わっていないようだ。しかし、路上で目立つのは酔客ではなく、外国人観光客や親子連れ。どこにでもいたヤクザも見当たらない。「2004年の浄化作戦以降、ヤクザを路上