ユニバーサル アナリティクスが正式に公開されて1年。グーグルは「マルチデバイス」「マルチスクリーン」の計測ができると謳っているものの、「大きなサイトの話で自分には関係なさそう」「面倒くさそうなので従来のまま使っている」という人も多いでしょう。この連載では、ユニバーサル アナリティクスにまだ移行していないユーザーを対象に、小さな企業やWebサイトで役立つユニバーサル アナリティクスの便利な使い方を紹介します。(編集部)
「Google アナリティクスがなくなる?」の誤解
「ユニバーサル アナリティクス」は、Google アナリティクスのデータ収集と処理方法を改善したバージョンアップ版です。といっても、「Google アナリティクス」の名前がなくなるわけではなく、あくまでもGoogle アナリティクスの内部的なバージョンアップとの位置づけです。
ユニバーサル アナリティクスは2014年4月に正式版がリリースされ、現在、新たにGoogle アナリティクスのアカウントを開設すると、自動的にユニバーサル アナリティクスになります。一方、以前からGoogle アナリティクスを使っているユーザーの場合は、「トラッキングコードの変更」が必要です。
グーグルは、ユニバーサル アナリティクス以外のデータ収集手法を2年後に終了すると発表しています(追記:2015年10月15日現在、発表時のページは閲覧できなくっています。アーカイブはこちら)。正式版がリリースされた2014年4月を基準とすると、2016年3月には移行が完了している必要があります。計画的に準備を進めましょう。
今回は、従来のGoogle アナリティクスからユニバーサル アナリティクスへ完全に移行する方法を説明します。
analytics.jsのトラッキングコードを入手する
ユニバーサル アナリティクスの移行作業は、トラッキングコードを「ga.js」から「analytics.js」へ置き換えるだけです。Google アナリティクスの[アナリティクス設定]から、[トラッキング情報]→[トラッキングコード]を選びます。
「www.google-analytics.com/analytics.js」が含まれていれば、ユニバーサル アナリティクスのトラッキングコードです。このコードをテキストエディターなどにコピーします。
Google アナリティクスを設置しているページを開き、「ga.js」のコードを丸ごと置き換えれば移行は完了です。
トラッキングコードのカスタマイズ
特殊な計測をしている場合は、トラッキングコードの修正が必要です。設定に必要なおおよその時間も示しましたので参考にしてください。
イベントトラッキング(想定時間10分×設定数)
Google アナリティクスの[行動]→[イベント]→[サマリー]を開き、[イベントカテゴリ]にデータがあれば、設定の変更が必要です。
■ga.jsの場合
_gaq.push(['_trackEvent', 'category', 'action', 'label',value,opt_noninteraction]);
■ユニバーサル アナリティクス(analytics.js)の場合
ga('send', 'event', 'category', 'action','label',value , opt_noninteraction );
具体的な設定はサイトごと異なりますのでこちらのヘルプを参考にしてください。
イベント トラッキング - ウェブ トラッキング(analytics.js)
カスタム ディメンション(想定時間10分×設定数)
[ユーザー]→[カスタム]を開き、[カスタム変数]や[ユーザー定義]にデータがあれば、設定の変更が必要です。ユニバーサル アナリティクスでは、カスタム変数の代わりに「カスタム ディメンション」を利用します。
■ga.jsの場合
_setCustomVar(index,’name’,’value’,scope)
■ユニバーサル アナリティクス(analytics.js)の場合
[アナリティクス設定]→[プロパティ]→[カスタム定義]→[カスタム ディメンション]で
カスタムディメンションの作成時に表示される「範囲」が、従来のGoogle アナリティクスのカスタム変数における「scope」に該当します。
カスタム変数のscopeは、「1」がユーザー、「2」がセッション、「3」がページでした。カスタムディメンションの「範囲」では、ページに該当する[ヒット]、[セッション]、[ユーザー]、[商品]を選択できます。
トラッキングコードに以下をカスタマイズして追加します。
ga('set', 'dimension1', 'custom data');
具体的な設定はサイトごと異なりますのでこちらのヘルプを参考にしてください。
カスタム ディメンションとカスタム指標 - ウェブ トラッキング(analytics.js)
バーチャルページビュー(想定時間10分×設定数)
バーチャルページビューとは、資料ダウンロードなどのクリックを架空のページビューとしてカウントする手法のことです。仮想ページビューとも呼びます。[行動]→[サイトコンテンツ]→[すべてのページ]に実在しないページのデータがあれば、設定の変更が必要です。
■ga.jsの場合
_gaq.push(['_trackPageview', 'dummyurl']);
■ユニバーサル アナリティクス(analytics.js)の場合
「ga('send', 'pageview');」を以下に修正します。
ga('send', 'pageview', {
'page' : ' url ', //ページで確認できます
'title' : ' タイトル' //ページタイトルで確認できます
});
たとえば、以下のようにトラッキングコードを変更すると、PDFファイル、ZIPファイルへのリンクをバーチャルページビューで指定できます。
<script src="//ajax.googleapis.com/ajax/libs/jquery/1/jquery.min.js"></script>
<script type="text/javascript">
$(function(){$("a").click(function(e){
var ahref = jQuery(this).attr('href');
if(ahref.indexOf(".pdf")!=-1 || ahref.indexOf(".zip")!=-1){
ga('send', 'pageview', {'page': this.href, 'title': this.innerText });
}
});});
</script>
具体的な設定はサイトごと異なりますのでこちらのヘルプを参考にしてください。
ページ トラッキング - ウェブ トラッキング(analytics.js)
クロスドメイン設定(想定時間20分)
ユニバーサル アナリティクスへの移行で、修正箇所がもっとも多いのが「クロスドメインの設定」です。
■ga.jsの場合
_gaq.push(['_link',this.href,true]);return false;
■ユニバーサル アナリティクス(analytics.js)の場合
トラッキングコードの修正と設定画面で対応します。たとえば、「aaa.jp」と「bbb.com」でクロスドメインを設定する場合は、コードを以下のように修正します。
aaa.jp のトラッキングコードの変更
ga('create', 'UA-XXXXXXX-1', 'auto', {'allowLinker': true});
ga('require', 'linker');
ga('linker:autoLink', ['bbb.com'] );
ga('send', 'pageview');
bbb.com のトラッキングコードの変更
ga('create', 'UA-XXXXXXX-1', 'auto', {'allowLinker': true});
ga('require', 'linker');
ga('linker:autoLink', ['aaa.jp'] );
ga('send', 'pageview');
ドメインが3つ以上ある場合は、「autoLink」にカンマ区切りでドメイン名を指定します。
ga('linker:autoLink', ['aaa.jp, bbb.com'] );
続いて、管理画面での設定です。[アナリティクス設定]→[プロパティ]→[トラッキング情報]→[参照元除外リスト]を開き、それぞれのドメインをカンマ区切りで設定して参照元から除外します。
このままだと「aaa.jp/index.html」と「bbb.com/index.html」など、ドメイン配下でファイル名が同一のときに、データが合算されてしまいます。そこで、[アナリティクス設定]→[ビュー]→[フィルタ]で以下のように設定します。
具体的な設定はサイトごと異なりますので、ヘルプを参考にしてください。
クロスドメイン トラッキング - ウェブ トラッキング(analytics.js)
◆
ユニバーサル アナリティクスへの移行は、トラッキングコードの差し替えだけでできますが、特殊な計測をしている場合はコードのカスタマイズが必要です。移行に失敗するとデータが途切れてしまいますので、影響の小さいサイトで試すなどして計画的に取り組みましょう。また、トラッキングコードの変更時にデータが瞬断することもあります。移行スケジュールを関係部署やメンバーと共有し、トラブルを回避しましょう。