オープンソースの地図プロジェクトは、Googleマップのデータ利用コストに悩む開発者の救いとなるだろうか。
私はGoogleマップが大好きだ。自分のiPhoneで恐らく他のどのアプリよりもよく使っている。これは私だけではないだろう。多数の情報筋によれば、地図や道案内はモバイルデバイス上で最も重要な検索パラメータの1つとなっている(最上位にはグーグルの文字検索が位置している)。
実際、最も地域に密着した広告は、結局は地図に連動したものだと私は思っている(位置ビーコンを利用したものを除いて)。単独のオフライン店舗の命運が、地図アプリがどれだけ顧客を運んでくれるかによって分かれる時代がすぐそこまで来ているのだ。
Googleマップの使い道は、場所を発見することだけではない。私はGoogleマップのナビゲーション機能をよく利用している。他の都市に旅行する際に訪れたい場所の地図を作成したり、休暇のドライブに使ったりするのだ。また私は街中でよく自転車を利用するのだが、グーグルの自転車向けのナビゲーションは他のどんなアプリよりも優れている。
さらに私は、近場にある特定の種類の店を検索する場合にもGoogleマップを使っている。例えば2番通りとHoward通りの交差点にいるときに、近くの美味しいコーヒーショップを探そうと思った場合、私はまずGoogleマップをまず立ち上げる(YelpもいいがGoogleマップには敵わない)。
グーグルは独自のデータ収集車両を使い、膨大な予算と時間をかけた取材活動によって、詳細で高水準な地図を提供している。そしてその精細さのおかげで、Googleマップは有望なマーケットプレイスへと成長を遂げた。恐らくは数十億ドル規模のポテンシャルを持つであろう、巨大なマーケットプレイスだ。人々がこの地図を使って何かを検索するたびにグーグルのエンジンはその情報を吸収し、個々のリクエストにより適したサービスや店、レストラン等を提供してくれるようになる。
オープンソースによる新たな競合の誕生
とはいえ、マーケットの成長には競争が不可欠だ。なので私は、Telenavが同社の人気GPSアプリ「Scout」にOpenStreetMap(OSM)を採用すると聞いた時はうれしかった。Scout は地図、渋滞情報、ナビゲーション機能を提供しており、OSMはTomTomが提供していたナビデータに代わって採用されることになる。
さらに重要なのは、Telenavが同時に「Scout for Developers」プログラムを発表したことだ。これによって開発者は、デスクトップだけでなくモバイル上でも、OpenStreetMapをベースとしたGPSナビゲーションを利用して独自のアプリを作ることが可能となる。つまり、Googleマップに対抗し得る強力な競合製品を生み出す可能性を秘めているのだ。
ちなみにOpenStreetMap(OSM)は、各地方のボランティアが集まって作成する無料の世界地図で、ウィキペディアの地図版とでもいうべきものだ。グーグルのMap Makerツールとは異なり、OSMはオープンソースの原理に基づいて地球的規模で推進されているコミュニティーだ。すでに多くのサービスがこのOSMを地図データとして利用している。
またOSMには全世界に150万人もの公認エディターが存在し、アクティブなエディターは自分の携帯やコンピューターから定期的にデータを更新している(当然かもしれないが、TelenavはOSMを金銭的にも支援している)。
ScoutはGoogleマップほどの人気はないかもしれないが、多くのユーザーに利用されていて、評価も高い。一方、OpenStreetMapには爆発的な可能性が秘められている。グーグルは自社の地図データをアプリ開発者に有料で提供している。アプリケーションの利用率が上がると地図データの利用コストも上がるため、多くのアプリ開発者はこれに苦しんでいるのだ。
今のところ、このグーグルのビジネスモデルを非難する者はいない。しかし、OpenStreetMapとそれを利用したScoutという新たな存在は、地図業界に波乱をもたらすだろう。コスト面でグーグルを大きく引き離すだけではなく、グーグルでは実際に不可能であった、地図のホワイトレーベル化(自社ブランド化)も可能なのだ。
より多くのアプリ開発者がOSMを採用するようになれば、そのネットワークの効果によって地図の精度や品質は向上していく。OSMではアプリ内にデータ収集システムを導入することが可能で、携帯電話からデータを(匿名で)収集してデータ品質を改善することができる。いずれはOSMも検索による収益化が可能なマーケットへと成長するかもしれない。
地図のオープン化によってGoogleマップの地位は多少揺らぐかもしれないが、Googleマップが依然として圧倒的に優位であることは変わらない。Google NowやGmailなどのサービスと統合することで、グーグルの地図製品の地位はより強固なものになるだろう。
OpenStreetMapにはまだ、Googleマップユーザが親しんできたようなリッチなエコシステムやツールは存在しない。しかし地図というのは基本的に情報の一形式であり、情報は無料であることが理想なのだ。
インターネットは常に変化しており、それを効果的に分類してスキャンするためにはグーグルのように巨大なインフラストラクチャーの維持が必要となる。一方で位置データは比較的有限で静的であるため、地図であればオープンソースにも勝ち目はあるかもしれない。グーグルもWazeアプリのユーザからクラウドソーシング・データを取得して利用しているが、それはあくまでも交通情報に過ぎず、OSMのように地図データの作成自体にユーザが積極的に参加している訳ではない。
今後、世界中の位置データを全て収集して照合することはますます容易になり、ドローンや安価なセンサー、超小型衛星などの新しいデータ収集メカニズムからも情報を得ることができるようになるだろう。さらに150万人分の人力センサーがこれに加われば、OSMやTelenavが真剣にGoogleマップと競合し、より高い精度の地図を数分の1のコストで作ることができるようになるかもしれない。
競争は続いている。
編集部注:この記事は、ゲストライターのAlex Salkever氏(Silk.coのプロダクト・マーケティングおよび事業開発の責任者)によって執筆されました。この記事は彼のTumblrに投稿されたものです。
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Alex Salkever
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※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちら