「(Androidは)それほど機能の差がない。発表会という形式の役割は終わったものと認識している」。5月7日の決算発表会で、ソフトバンク代表取締役の孫正義社長はスマホ新モデルの発表会を当面実施しない方針を明言した。
スマホのコモディティ化はすさまじい速度で進行している。KDDIとドコモが発表した2014年夏モデルを比較すると、各メーカーのハイエンド機がズラリと並ぶ。どれを買っても、できることはほぼ同じだ。
米国国防総省の軍事規格をクリアした「TORQUE」や初心者向けの「らくらくスマートフォン」といったターゲットを明確にした機種を除けば、孫社長が指摘するように機能面の差別化が難しくなっている。
MM総研によると、2013年度のメーカー別国内スマホ出荷台数シェアのトップは、アップルが約37%で頭ひとつ抜けている。他のAndroid端末メーカーはシャープが13%、ソニーが約12%、京セラ・富士通が約9%と団子状態だった。
海外に目を向けても、いまだ日の丸スマホの存在感は薄い。米調査会社IDCの最新の調査結果からも、世界のスマホ市場シェア上位に日本メーカーの名前は見当たらない。
端末の機能が同じなら、値段で勝負するしかない。しかし、世界には高品質低価格路線を貫き、創業からわずか4年で世界シェア6位になった企業がある。中国Xiaomi(小米)だ。昨年発売されたスマホ「Redmi」(紅米手机)は高性能ながら799元(約1万2600円)で発売され、話題を呼んだ。
英調査会社カナリスによると、2014年1〜3月期の世界出荷台数ベースでXiaomiは世界第6位のメーカーに躍り出た。97%が中国国内における販売台数にもかかわらず、だ。同社は昨年8月にグーグルのアンドロイド担当幹部ヒューゴ・バラ氏を引き抜いており、世界市場に打って出る日も近いものと思われる。
Xiaomiの存在は日本のスマホメーカーには脅威。ただし日本のスマホ関連産業にとってすれば、そうとも言い切れない。Xiaomiのスマホには、日本メーカーの部品が多く使われているからだ。
報道によると、Xiaomiの端末の液晶はシャープ製で、カメラのCMOSセンサーはソニーのものを使っているという。SAWフィルターは村田製作所、水晶振振動子は京セラが関わっている。
Xiaomiに限らず、中国メーカー製スマホの躍進は日本メーカーに恩恵をもたらしている。ジャパンディスプレイの2015年3月期連結業績見通しは、中国向けの重要などを見込んで営業利益が前期比65%増の315億円としている。2014年3月期決算でも、太陽誘電やアデカといったスマホ関連の部品メーカーが軒並み最終増益だった。
端末で差別化できないのも、スマホの中身が同じ日本メーカーの部品を使っている場合が多いから。日の丸スマホが売れなくても、メーカーは生き残るのだ。