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まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第24回

アニプレックス 宣伝プロデューサー 高橋ゆま氏インタビュー(前編)

「ゴミ屑みたいな社員」(本人談)から、宣伝プロデューサーに

2011年06月11日 12時00分更新

文● まつもとあつし

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自らを宣伝ツールと化し、ユーザーと接する異色の宣伝マン

 引き続きアニメビジネスを追う。

 今回は、アニメを中心とした映像作品の製作・販売大手であるアニプレックスで宣伝プロデューサーを務める高橋祐馬氏に話を聞く。ネット上では「ゆま」というニックネームで活動し、『劇場版 空の境界』『化物語』などヒット作の宣伝を手がけてきた。

 氏の宣伝手法は従来のものとは異なっている。たとえば人気ライトノベル『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(以下、『俺妹』)のアニメ化発表を、自社サイトやアニメ誌ではなく、作中にも登場する秋葉原系ニュースブログ「アキバBlog」で初公開するなど型破りだ。

 また、ゆま氏は都条例問題に端を発して企画されたアニメコンテンツエキスポ(ACE)の総合プロデューサーに抜擢され、その準備や調整に奔走した人物でもある(その後ACEは東日本大震災の影響で中止)。

 連載で繰り返し触れているように、アニメ市場全体としてはパッケージの売り上げが伸び悩み、制作本数も純減している状況だ。“面白い”だけでは売れない時代に、宣伝というアプローチでいかにして作品をヒット商品に転換しているのだろうか? ざっくばらんに話を伺った。

 なお、インタビュー中の名称は、ネット連載であることを考慮して、あえてニックネームの「ゆま」で統一した。

宣伝は「媒体を買う」のではなく「媒介を生み出す」のが仕事

―― アニメの宣伝がどんなお仕事なのか、一般にはあまり知られていない部分もあるかと思います。特に、(一企業の広報と異なり)複数企業からなる製作委員会のなかでの位置づけなどですね。最初にそのあたりから伺えますか?

今回は、宣伝プロデューサーとして『劇場版 空の境界』『化物語』などのヒット作に携わってきたアニプレックス 第2企画制作グループ 宣伝部チーフの高橋祐馬氏にお話を伺った

ゆま 「基本的には作品が立ち上がる、つまりプロデューサーが企画を立ち上げた後に、上司が担当を決める場合と、プロデューサーが宣伝担当を指名する場合とがあります。

 すでにその時点で放送時期・スタッフ・キャストなど大枠は決まっています。

 その作品の情報を受け取った後に、どんなタイミングでいかなる情報を出すのか――たとえば雑誌で制作発表、ウェブでキャストやスタッフの発表、店頭用にPVを作ろうといった按配――を決めていきます。

 ユーザーに伝える情報一切を、全体の骨格を決めたのちに、具体的な作業に落とし込むというわけです。

 ただし、思いついたら即実行というわけにはいきません。あとで述べるように、製作委員会メンバーの同意の下に動く必要があります。

 ひと言でアニメ誌の企画といっても、取材の持ち込み・立ち会い・イラスト納品など多岐に渡ります。簡潔に言うのはなかなか難しいのですが、基本的に、ファンがアニメの情報を得られるいろんな“媒介を生み出す”仕事だと言えると思います」

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―― “媒体を買う”という表現はよく聞きますが、“媒介を生み出す”とは初めて聞きました。

ゆま 「アニメの宣伝で伝えるべき内容はスタッフやキャストの情報など、どの作品でもほとんど同じものです。だからこそどう伝えるかが腕の見せ所なんです。

 媒介と言うとちょっと難しく聞こえるかもしれませんが、作品とファンとの間に橋をかけることと思っているんですよ。

 たとえば、『俺妹』のアニメ化決定発表などはわかりやすい例ですが、“アニメ化決定”という情報を伝えるのであれば、公式ホームページという媒体を作って、そこで告知するのも1つの方法です。どんな橋を架ければいいのか、アイデアを考えて実行する――そんな仕事かなと思います

 そこを『俺妹』の場合は、“アキバBlogでの発表”という橋を架けたわけです。もっとも、これは三木さん(電撃文庫副編集長 三木一馬)の発案でしたが」

―― ものすごく単純な質問ですが、いわゆる宣伝担当と宣伝プロデューサーの違いは何でしょう?

ゆま 「実務を担当するのが宣伝と呼ばれる人たちです。その宣伝の実務のほかに、全体のプランニングとお金の管理が入ってくると、宣伝プロデューサーになります。僕は基本的に、宣伝プロデューサーを名乗ることが多いですね」

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