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誰も教えてくれない「コンセプト」の作り方 (1/3)

2010年08月20日 10時00分更新

文●小池 勉/コンテンツブレイン

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サイトマスター

商品のコンセプト、例えば商品の魅力は、モニター上で素敵な言葉をいくら羅列してもなかなか伝わりません。コンセプトは商品や作品の本質そのものなので、言葉にするのは難しいのです。だから私はコンセプトを伝えるシンプルな一言を探します。それが「コンセプトキーワード」です。コンセプトキーワードは特別なものではなく、製品の開発や企画書のタイトルなどさまざまな場面でよく使われる言葉ですが、ここでは「商品の魅力を表現する」キーワードのことを指します。コンセプトキーワードを制作の柱としてコンテンツを作ることで、魅力の本質がユーザーの心に届くようになります。コンセプトキーワードを決めなければ広告作りは先に進まないので、いわば魅力を伝える力の源泉、ご本尊と言えるものです。


 前回、サイトマスターはコンセプトをまとめる前に情報収集をすることを書きました。その上で魅力、ターゲット、タイミングを考えるわけですが、今回は魅力を「相手に伝わる情報」に昇華させることにしぼって説明します。

 みなさんは、自分が買った新たな商品の魅力を言葉だけで説明するとしたら、どうしていますか? 「要するに、これは○○だ」という極めて単純な一言から切り出し、相手が食いついてきたら、細かい説明に移るのではないでしょうか。

 逆に、分かってもらおうとするあまり、最初からたくさんの情報を与えてしまうと、相手はうまく理解できなくて「結局のところ、それは何なの?」と聞いてくるでしょう。結果、「一言でいうなら、○○だ」とポイントを押さえた一言で説明し直すことになるはずです。

 要するに最初の段階で一番の利便性を分かってもらう(理解のきっかけを作る)ほうが、商品の概念や全体像を理解しやすいし、相手の心に届きやすいのです。

 たった一言で相手の心に浸透させるのがコンセプトキーワードの役割です。だからコンセプトキーワードには、「想像をかき立てる力」「イメージが発展していく力」があることが欠かせません。

コンセプトキーワードは企業とユーザーを結ぶレンズの焦点になる

 コンセプトキーワードは「レンズの焦点」のようなものだと私は思っています。レンズの一方には「企業がユーザーに伝えたい情報」があり、商品の魅力を表す要素が数多く並んでいます。


 しかし企業の言葉を通すには、焦点を作らなければなりません。コンセプトキーワードは、企業が伝えたいことをユーザーの心に映す、まさに焦点です。焦点が合うことでレンズの向こうにあるユーザーの心に、他の多くの魅力も一緒に復元されるのです。コンセプトキーワードには、サイトとユーザーの心を一気通貫させる力があるのです。

 とはいえ、数多くの魅力を一言にまとめるのは難しいことです。実際サイトマスターのみなさんも、「自社の商品の魅力をたった一言ではまとめられない」と思った方も多いでしょう。ですが「魅力」は羅列した段階で、説明に過ぎない言葉になってしまいます。それでは聞いた人の頭の中でイメージが膨らみません。逆に想像力を刺激するコンセプトキーワードは、「もっと知りたい」「興味が湧く」「買ってみても良いかも」と発展していくのです。

 制作スタッフの意志統一もコンセプトキーワードの力

 コンセプトキーワードの役割は、ユーザーに対して魅力を伝える力だけではありません。制作スタッフの意思統一にも役立ちます。

 制作の現場では、情報をより魅力的に表現するために、さまざまなスキルを持ったスタッフがいろいろなアイデアを出して表現していきます。スタッフ全員が同じ方向を見て力を合わせているうちはいい仕事につながりますが、ときとして手法に凝るあまり本質を見失うこともあります。現場が迷ったとき、サイトマスターには本筋に立ち戻す役割が求められます。

 そんなときコンセプトキーワードは、サイトマスターがスタッフに指し示す道しるべになるのです。明確な方針がシンプルな言葉になっていれば、外部スタッフと頻繁に会えない、サイトマスターが立ち会えないときでも、スタッフの考えを整理してくれます。

 コンセプトキーワードは制作の方向性を示すのですから、コンセプトキーワードづくりはサイトマスターにとってデザインづくりと同じといってもいいでしょう。それぐらい、コンセプトキーワードはサイトマスターにとって重要なものなのです。

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