デザイナーやクリエイターの職場。美しく、創造性あふれるものはどのような環境から生まれるのか?
「そんな探究心から、私は米国へ旅立ったに出た」わけではないが、3月末にアメリカ西海岸に拠点を置く、2つのオフィスを訪問する機会を得た。ひとつは、BMW傘下で、ジェット機から生活家電までさまざまな機器のデザインを手がけるBMW Group DesignworksUSA。もうひとつが、カンフーパンダなど、CGアニメの世界では非常に有名なDreamWorksだ。
HPの新型ワークステーション・Zシリーズの発表会に参加する傍ら、米国流の創造性がどのようにかもし出されるのか、その源泉を見てきた。
広々としたオフィスで自然なコミュニケーションを育む
DesignworksUSAは、日本でも有名なBMWの子会社。1972年にロサンゼルス郡西部の町マリブで、Charles W. Pelly氏など、3人のデザイナーによって設立された。1995年からはBMW傘下となり、現在は135人以上のデザイナー/エンジニアが所属している。本社は米国だが、オフィスはミュンヘンやシンガポールにも構えている。
守備範囲は多彩だ。自動車では「BMW Z4」をデザインしているが、実際に動かしているプロジェクトの約半数は、BMWグループとは直接関係ないものとなっている。ジェット機やヨット、工作機械、発電機、パソコン、事務機器、さらにはエスプレッソマシンや水道の蛇口など、身近な家電からあまり目にすることのないゴージャスな一点モノまで、大小さまざまな製品を手がけていることになる。
HP製品では、これまでも複合機やスキャナーのデザインを担当してきたが、今回は同社の最新ワークステーション・Zシリーズのうち、ハイエンドのZ800とミッドレンジのZ600のデザインで協業している。
Studioと呼ばれる同社のオフィスは、広々としたもの。海外企業のオフィスでよく見かける、数人で個室をシェアするタイプではなく、壁のない広い空間にゆったりとした机が多数並べられ、複数のデザイナーがコミュニケーションを取りながら作業を進めている。同社はこれを「オープンドアポリシー」と呼んでいるそうだ。
この部屋の中央には、ピアッツァ(広場)と呼ばれる、広い空間が設けられていた。ここにはいすや机はなく、クッションが置かれている。デザイナーたちは、床にそのまま座り、リラックスしたムードでブレストする。これ以外にも、小さなカフェテリアのカウンターや、立ったまま作業が進められる協業スペースなどが散見された。こういったコミュニケーションから創造力を刺激し合う仕組みを重視しているのだろう。
また集中力を高めるために、音の立ちにくい素材のカーペットを使用したり、昼光が直接入るようにするといった工夫も見られた。