またまたまた、お持ち帰りメインのエントリー(^^;)
税についてオススメの論評がこちらです。
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法学館憲法研究所
今週の一言
憲法理念による税制改革を
―――2009年、長年続いた自民党中心の政権から民主党中心の政権への交代がありました。まずは浦野さんに、新政権の税制改革をどのように評価されるかをお聞きしたいと思います。
(浦野さん)
税制を含めて社会を変えてほしい、という国民の期待によって政権交代がおこなわれました。いま新政権が2011年以降の税制についての検討をすすめていますが、新政権が実際にすすめてきた税制改革を検証する場合、2010年度税制「改正」大綱(2009年12月22日に閣議決定=新政権として初めての税制に関わる閣議決定)とそれにもとづく2010年度税制改定がその判断材料になります。
この2010年度税制改定では、所得税・住民税の扶養控除(16歳未満)が廃止されました。所得税・住民税の課税対象は所得の金額です。所得にはいろいろな種類がありますが、サラリーマンの収入は給与所得に区分されます。給与所得の金額は受け取った給与から給与所得控除額を控除した額です。扶養控除は、基礎控除や配偶者控除などとともに憲法25条の生存権を具体化する課税最低限を保障するものです。すでに自民党中心の政権のもとで、老年者控除や配偶者特別控除の原則廃止がなされましたが、新政権は年少分扶養控除を廃止し、庶民増税を断行したのです。
2010年度税制改定では、このほかに、特定扶養控除(16~22歳)の高校生部分(16~18歳)も縮小しました。また、相続税における小規模宅地等の評価減の縮小による庶民増税もはかりました。そして、税の滞納者への罰則を強化しました。
新政権は、一方で、大企業向けの法人税減税(研究開発税額控除)の2年延長、証券優遇税制の拡大・維持、住宅取得資金の非課税限度額を500万円から1500万円に拡大、など大企業・資産家減税をすすめました。
2010年度税制「改正」大綱には「納税者主権の確立に向けて」というタイトルがつけられました。そして、その中では納税者権利憲章の制定なども述べています。一見納税者の権利を守る施策が講じられるかのように見せかけています。ところが実際には庶民に対する増税をすすめ、一方で大企業・資産家減税をはかるものとなっているのです。また、円滑に徴税をしていくという名目で国民総背番号制をめざす納税者番号制度を設けたり、新たに税の取立てを強化する歳入庁の設置なども謳うものとなっています。
新政権の税制改革には極めて重大な問題点があるのです。
―――憲法理念に則った税制改革はどうあるべきでしょうか。
(浦野さん)
日本国憲法が考えている税金の取り方は、応能負担原則にもとづくものでなければなりません。税は支払能力に応じて負担するという考え方です。これは、憲法第13条(個人の尊厳、幸福追求の権利の尊重)、第14条(法の下の平等)、第25条(生存権、国の生存権保障義務)、第29条(財産権の保障)などを根拠としています。国税も地方税も、また社会保険料なども応能負担原則にもとづいて課さなければなりません。
具体的には、所得課税については、①高所得者には高い負担を、低所得者には低い負担を求める累進課税にする、②同じ所得であっても、給与などへの課税よりも利子・配当・不動産などの資産所得への課税を重くする、③最低生活費・生存権的財産には課税しない、ということが原則とされるべきです。
最近税の累進性が後退していることは重大です。所得税・法人税の累進性を強化するよう税率構造が見直されるべきです。
資産課税については、相続税の基礎控除縮小や小規模宅地の負担軽減縮小などの動きがすすんでいます。これも庶民増税となり、応能負担原則に反するものとして警戒しなければなりません。
消費課税については、菅首相が消費税増税を検討していますが、そもそも日本の消費税は世界に類のない、異常に高いものとなっていることを指摘しなければなりません。実は、標準税率が17.5%であるイギリスよりも税率5%の日本のほうが国税収入に占める消費税の割合は高いのです。イギリスでは、日本と違い、食料品、上下水道、書籍、障がい者・視力障がい者用具、住宅建設、旅客運賃、医薬品、子供服などの消費税率は0%です。日本では、すべての消費に消費税を均一に課しているため、税収に占める消費税の割合が世界最高水準となっているのです。よく北欧は、福祉の水準は高いが、税金も高いと言われます。ところが、日本の場合は生活必需品などにももれなく消費税を課していますので、低所得者の税負担は北欧の人々の負担よりも大きいのです。消費課税も負担能力に応じて課す個別消費税を中心に抜本的に見直されるべきです。
―――こんにちの税制が大企業・富裕層を優遇し、庶民に厳しいものになっている背景には、国民に対して税についての情報や考え方があまり伝わっていない状況があるのではないでしょうか。
(浦野さん)
税の負担者の多くを占めているのは勤労者=サラリーマンですが、税は源泉徴収=天引きされますから、税への関心は低く、その負担の重みをあまり感じなくなります。
税は専門的な知識がないとわかりませんから、税務署の職員や税理士を除いてはあまり理解されていません。国会議員や裁判官、弁護士にもあまり税情報は伝わっていません。税の問題はいわば暗闇の中にあります。その方が課税する側にとっては都合がよいのでしょう。労働組合なども税の問題へのとりくみはまだこれからとなっています。国民の中に税の問題点が浸透していない中で、こんにちの税制になっているのです。
―――ところで、いま理不尽な税の取立てへの異議申し立てが広がっているそうですね。
(浦野さん)
いま国民生活が危機的な状況になり、納税が困難な人々が増えています。2010年の税金の滞納は国・地方で4兆円にもなっています。
このような中で、いま地方自治体が地方税の滞納者からの取立てに躍起になっています。たとえば、滞納者の銀行預金などの差し押さえをしています。生活費に関わる給与や年金を差し押さえることは違法です。当局は給与が振り込まれ預金債権になったらは差し押さえられると解釈し、差し押さえをしているのです。今年私は、給与差し押さえの取り消しを求める訴訟で「給与の預金債権は差押禁止財産」であり「差押処分は違法」とする鑑定書を提出し、原告の勝利的和解を勝ち取ることができました。私の鑑定書の全文が業界団体の機関紙に掲載されたところ、理不尽な税の取立てに不服申し立てをする全国各地の方々から協力依頼を受けています。これは、憲法に明記された生存権を保障させる取り組みです。私に対するマスコミなどからの取材も増えています。多くの人が税を払えないのは、憲法にもとづく応能負担原則の則った税制になっていないからです。このことを広く伝えていきたいと思います。
―――税については、そのとり方とともにその使い方も注目されるべきですよね。
(浦野さん)
日本国憲法は平和と福祉を重視するものとなっています。国民の「納税の義務」は、国民が平和に生存するために税金を使うことを前提にしています。つまり、憲法上はすべての税金は「福祉社会保障目的税」なのです。
この視点からも政府の予算などが吟味されなければなりません。
―――本日は有意義な問題提起をしていただき、ありがとうございました。
※以上のインタビューは2010年12月13日におこないました。
(引用終了)
ざっとまとめてみましょう。
① 庶民増税、大企業資産家減税庶民に対しては、
・所得税・住民税の扶養控除(16歳未満)廃止
・特定扶養控除(16~22歳)の高校生部分(16~18歳)も縮小
・相続税における小規模宅地等の評価減の縮小
これらによって増税を行い、且つ、税の滞納者への罰則を強化。
一方で大企業・資産家に対しては以下のように減税。
・大企業向けの法人税減税(研究開発税額控除)の2年延長(5%減税決定)
・証券優遇税制の拡大・維持、
・住宅取得資金の非課税限度額を500万円から1500万円に拡大、
そして、円滑に徴税をしていくという名目で、国民総背番号制をめざす納税者番号制度導入を年末のどさくさにまぎれて決定。
(◆低気温のエクスタシーbyはなゆー
年末のドサクサにまぎれて「共通番号制度(国民総背番号制)」導入決定 参照)
強きを助け弱きをくじく税制改悪だというのが実によくわかりますね。
しかし、大企業や資産家を優遇してまず上を潤わさないとそのおこぼれが下に滴ってこないではないかという所謂「トリクルダウン」を国民に信じさせようと、いまだに財界、政府、マスコミは頑張っていますので、何度も同じ事を書きましたが、また書いておきましょう。
トリクルダウンはありません。これまでも法人税減税は行われましたが、いつまで待っても正社員の賃銀がさっぱりあがらず非正規切りも横行して、ちっとも労働者の賃金アップや安定雇用に滴ってきませんでした。大企業は法人税率を下げて浮いた分を内部留保として貯め込んだのです。そして大企業の内部留保はどんどん増えて過去最高になったのにちっとも下に滴らせようとはしませんでした。これが現実なのです。
村野瀬玲奈さんのこちらのエントリーから文章をまるっとお借りしますと、
米倉弘昌日本経団連会長は法人税引き下げの条件として企業側が雇用確保などを約束すべきという意見が出ていることについては「私が約束したとしても経済界がやってくれるかどうか。経団連は予測値を提出済みだ。資本主義でないようなことをやってもらっては困る」と語っていますし、
財務省の政府税調向けの公開資料でも法人税引き下げ分を内部留保にまわすとする企業が最も多くて25%とトップでしたから、法人税下げが雇用や給与や設備投資に回る割合は少ないだろう予想されます。
つまり、上が潤えば下にもおこぼれが滴ってくると言うトリクルダウンなどまやかし、期待して待っていても虚しいだけなのです。
米倉弘昌日本経団連会長に言わせれば「下の労働者におこぼれなんか滴らせないことこそが資本主義だ、トリクルダウンなど資本主義ではない」ということになりますね。
また、日本は法人税率が高いから低くしないと企業が海外に逃げてしまう、というのも嘘です。
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法人税Q&Aちなみに法人税と消費税の関係はこちらをどうぞ
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消費税Q&A・
騙される側の論理~消費税の場合このように一部の富裕層ばかり潤わせて大多数の庶民を締め上げれば内需が冷えて景気が落ち込み続けるのは当たり前です。
② 日本の消費税は世界でも異常に高いことも国民に余り知られていないし、源泉徴収制度のせいで多数の国民は税に関心を持たない。税の問題点が国民に浸透しない状態が続いている。以前、税についてよく知らないまま
税金を払ってることが日本人の許可証であるかの如く威張るある種の人々について書きましたが、そう言う人々は為政者にとって都合の良い存在であり、滑稽な感じがしますね。
③ 国や地方自治体は納税困難な貧困者からの取り立てに躍起になり、貧困者の生存権を脅かしている。江戸時代の非情な年貢取り立てかと思わず錯覚してしまいます。応益負担原則から言えば、そもそも担税能力のある所からもっと税を納めさせる税制に改正すべきなのですが。
④ そもそも国民の「納税の義務」は、国民が平和に生存するために税金を使うことを前提にしている、つまりすべての税金は「福祉社会保障目的税」というのが憲法の理念に沿っているこれにはなるほどと心強く思いました。
しかし、年2000億円ずつ削減され続けた日本の脆弱な社会保障制度をみれば、日本の税の使われ方は、再分配機能に乏しく「税金はすべて福祉社会保障目的税」という憲法の理念からほど遠いのが現状です。
何かにつけ憲法の崇高な理念を無視したがる非・法治国家の日本は、
税の徴収の仕方に於いても使い道に於いても憲法の精神を無視している非・法治国家である、と言う批判があてはまるのではないでしょうか。
さて、担税力がある所から徴税しないければ当然税収は減りますから、政府はそれを事業仕分けという経費削減で間に合わせようとしました。そのつけはこんなふうに回ってくるのだという実例をまたまたはなゆーさんからお借りします
●〔鳥取大渋滞〕民主党政権は「道路の除雪費」を大幅に削減していた
http://alcyone.seesaa.net/article/177957508.html● 民主党政権が「北海道の除雪作業費」を20%削減して路面が危険
http://alcyone.seesaa.net/article/178023570.htmlいっときもてはやされた事業仕分けの正体は、
国民生活に欠くことの出来ない安全さえも削るものだということがわかります。
そして、キタキタ、税収が足りないから消費税増税を、のお約束が。
●経団連会長と同友会代表幹事がそろって「消費税率の引き上げ」を要求
http://alcyone.seesaa.net/article/177887495.html●労働者の味方と称する「連合」の会長があらためて消費増税を容認
http://alcyone.seesaa.net/article/177886570.html国民は「怒」のプラカードでも持ち、空き缶を叩きながら何度でも大きな声をあげるべきではないでしょうか。、
「公約違反も大概にしろ。我々は消費税増税を決して‘甘受する’ことはない。」と。
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