行列店で増える「ファストパス」、新たな客層つかむきっかけに…消費者のタイパ意識が後押し

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 行列のできる人気の飲食店で、追加料金を支払えば優先的に案内される「ファストパス」の導入が増えている。時間をお金で買うサービスで、「タイパ(タイムパフォーマンス=時間対効果)」を重視する消費者が増えていることが一因とされる。店側が新たな客層をつかむきっかけにもなっているという。(鈴木彪将、苅田円)

ファストパスの利用客(左)と行列をなす客(奥)(4月、大阪市北区で)=浜井孝幸撮影
ファストパスの利用客(左)と行列をなす客(奥)(4月、大阪市北区で)=浜井孝幸撮影

ネットで手軽に

 JR大阪駅直結の商業施設「KITTE(キッテ)大阪」にあるラーメン店「小麦の 麺神めがみ 」。4月の週末のランチ時、記者が訪れると、店の出入り口には約40人が行列をなしていた。一方で、「ファストパス待ち列」と書かれた看板前に来た客は、待つことなく店員から誘導され、席に着いた。

 同店では、ネットで購入した800円のファストパスを店員に示せば優先的に入店できる。2024年7月のオープン時から行列が常態化し、首都圏で同様のサービスが広がっていることを知り、約1か月後に導入した。多い月で約300人が利用するという。

 観光で訪れた北海道室蘭市の会社員男性(35)は、前夜に行列の長さを見て一度は断念したが、ファストパスを使って再挑戦。「おいしいものを食べたいし、観光の時間も確保したい。まぜそばはおいしく、時間を買った価値はあった」と笑った。

 遠藤光樹店長(32)は「ビジネス客や観光客の利用が多い。『並ばずに行列店の味を楽しめる』と好評だ」と話す。

顧客開拓にも

 近年、飲食店向けのファストパスは予約システム会社数社が提供しており、小麦の麺神のシステムは「テーブルチェック」(東京)が開発した。利用者は、スマホやパソコンから来店時間を選択し、店側が設定したファストパス代を支払う。24年2月からシステムの提供を始め、現在は100店以上で利用されている。

【図解】飲食店でのファストパスの仕組み
【図解】飲食店でのファストパスの仕組み

 テーブルチェックによると、回転率が高く行列の絶えない店での利用が多く、ラーメン店やカレー店、カフェなどが導入しているという。担当者は「行列を理由に避けていた客層を取り込める」とアピールする。

 京都市東山区の中華料理店「マルシン飯店」も1人500円のファストパスを25年3月に導入した。

 1977年創業で地元住民に親しまれてきた同店は、約10年前に雑誌で取り上げられると、観光客らで行列ができるようになった。夏場に熱中症の症状を訴える客が出たことなどもあり、利用を決めた。

 店主の前川流史郎さん(48)は「得られた手数料で、原材料価格の高騰も何とかしのげている。顧客サービスとして続けていきたい」と話す。

元祖は?

 ファストパスが広がったきっかけの一つが、東京ディズニーランドでの導入だ。

 2000年から始まり、ディズニー側が指定した時間帯にアトラクションに向かえば、優先的に楽しめる仕組みで、無料で利用できる。現在は終了し、同様の仕組みの「プライオリティパス」がある。1人1500~2500円を支払えば、利用客が時間帯も選べる「ディズニー・プレミアアクセス」も発行している。

 消費者行動に詳しい大阪公立大の磯田友里子准教授は「スマホでゲームや映画も楽しめるなど娯楽が多様化し、できることの選択肢が増えた一方で、1日24時間という時間が増えることはない。そうした中で時間的コストに敏感な人が増えた。お金を払って時間を買うという行為は今後も広がるだろう」と指摘している。

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