【特集】感度高まる「相互通行型授業」…三田国際
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三田国際学園中学校・高等学校(東京都世田谷区)は、前身の戸板中学・女子高等学校を共学化し、今年3年目を迎える。世界標準の教育を目指し、日々
身近な不思議を仮説から検証

取材に訪れた6月22日、サイエンスラボと呼ばれる化学実験室に、白衣をまとい、タブレットを小脇に抱えた中学1年生が集まってきた。大学のゼミの光景のようで、一般的な中学の授業とは違った雰囲気だ。
この日は、水の沸騰を考察する実験が行われた。さあ、これからというとき、鈴木朋美教諭から「水は温めたときだけ沸騰するのかな?」と問いかけがあった。生徒の興味、関心を引き出すきっかけとなるこの問いかけは「トリガークエスチョン」と呼ばれる。
鈴木教諭は正解を述べることを求めているのではない。この質問をきっかけとして生徒たちが自主的に仮説を立て、検証を重ね、結論を導き出すように手助けしているだけだ。むろん、思考を組み立てるための前提として事前に「沸騰=(蒸気圧>大気圧)の状態」という知識は習得しているが、あとは生徒が試行錯誤していく。これが同校の授業のフォーマットだ。
実験の手順をタブレットの動画で確認すると、さっそく実験がスタートする。ガスバーナーでフラスコ内の水を100度まで温めたら、火を止め、中の気体が逃げないように栓をして保冷剤で冷やしていく。慣れた手つきで実にてきぱきと進めていく。

フラスコ内の水蒸気が水に戻ると、内部の気圧が下がり、底にたまっていた水からボコボコと泡が立ち始めた。実験に取り組んだ小池日和さんは「沸騰は水を温めたときに起きるものだと思っていたので、冷やしても沸騰するというのは新しい発見でした」と、日常生活では見られない不思議な光景を面白がった。
この実験のねらいを鈴木教諭が説明する。「WHAT(何が起きているか)とWHY(なぜ)に対してどうアプローチするか。身近な不思議に対して仮説を立て、データを集め、結論を導き、理由をつけて人に伝える力を身につけることが目標です。その中でコミュニケーション力やプレゼンテーション力も磨かれていくはずです」
実験は、一部始終を動画で記録し、それを基に実験の見直しや発表・レポート作成を行う。校内にはWi-Fiが完備されており、こうしたデータを即時に共有することができる。ICTの活用により、授業をより分かりやすく円滑にし、生徒が自ら思考することを活性化させている。
実験を終えた川口天斗君は「実際にやってみることで『こうなるんだ』という新しい発見がありました。予想外の結果が目の前で起こることで、予測の幅が広がると実感しました」と話した。こうした科学的な思考法を身につけることがサイエンスリテラシーの養成にほかならない。
中学1年からプログラミング

中学3年のクラスでは「情報」の授業でプログラミングを行った。同校は、中学1年からプログラミングを授業に取り入れている。2年次までの授業では、画面内でキャラクターを動かすプログラミングだったが、3年からはロボットなど実際の物体を動かすプログラミングの学習が始まる。
この日行われたのは、車型のロボットにパソコンで作成したプログラムを組み込み、指示通りに動かす授業だ。斎藤春香教諭は授業の冒頭と要所で説明したり、質問に答えたりしていたが、あとは生徒が自主的に試行錯誤してロボットを動かそうとしていた。生徒たちの表情には、分からないことに挑み、手探りしていくことを楽しむ余裕さえ感じられた。
斎藤教諭によると、実際の物体はプログラム通りには動かず、外的要因を考慮したプログラムが必要となるそうだ。それを体感させることが一つの狙いだという。そこから「なぜなのか」「どうすればいいのか」と考えることにつなげていく。こうして手探りを重ねるうちに教師が驚くようなアイデアが生まれることも珍しくないという。
「中学の3年間にコードでプログラミングできるようになるのが目標です。高校ではさらに、身につけたプログラミングの技術を、数学や理科などの授業課題に役立てるところまでもっていきます。いわゆる、学科横断的な授業展開です。身につけた技術が実際に使えることが分かれば、生徒も意欲が高まるでしょう」
情報の学習に対する生徒の感度は高い。中学2年の基礎ゼミナールでも「プログラミング」を選択している森脇ひなたさんは、「楽しみながらいろいろなアプリ制作に挑戦できるので、今後は販売できるくらいのアプリを作ってみたいです」と前向きだ。佐藤夏響さんは「将来の夢は保育士ですが、母子手帳や保育日誌の電子化に役立つと思います」と将来の暮らしとの結びつきを意識していた。こうした目的意識を持たせることも同校の教育の特徴なのだ。
来たれ、「好き」を突き詰める生徒

今回、取材した2科目に限らず、同校の授業は全て、トリガークエスチョンをきっかけに生徒が自主的に調べ、考え、まとめていく。知識を与えるだけの一方通行の授業ではなく、「相互通行型授業」と名付けている。いわゆるアクティブラーニングの考え方だ。
同校では、生徒たちに身につけてほしい「五つの力」として、考える力・英語力・コミュニケーション力・サイエンスリテラシー・ICTリテラシーを掲げている。その力を育むための授業がこの「相互通行型授業」だ。
こうした考えの根底には、「発想の自由人たれ」という大橋清貫学園長の言葉と、戸板学園創設以来115年受け継がれる「知好楽」の教育理念がある。社会の様々な変化に対応できる人材になることと、未知の物と出会い、それを好きになり、最後に楽しむ境地に至ること。これからの時代にも通じる学習者の姿勢だ。
田中潤教頭は、「生徒たちが興味をもったことを調べたり、まとめたりする力は目を見張るものがあります。話す内容もしっかりしてきています。こうした好きを突き詰めるタイプの生徒には当校はうってつけの環境だと思います」と話す。
生徒たちの生き生きとした学習姿勢に目を見張らされた同校の授業風景だが、田中教頭は「まだ発展途上」という。確かにまだ始まって2年余りである。今後期待される様々な改良、発展に注目していきたい。
(文・写真:深澤恭兵、一部写真:三田国際学園中学校・高等学校提供)
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