(社説)女流棋士と出産 二者択一 迫るのでなく

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 将棋の福間香奈女流六冠が、妊娠・出産を巡って日本将棋連盟が定めた規定の見直しを求め、先週会見した。

 連盟は今年4月、優勝者に称号が与えられる公式戦である女流タイトル戦用の対局規定を施行した。対局日程が産前6週から産後8週に重なる時や、事前に定めた日程と場所で対局できない時などに、対局者を変更し、次点者を繰り上げるとした。

 規定作成の契機は、昨年の福間さんの出産だ。当時、出産時のタイトル戦の対応について具体的規定はなかった。福間さんは日程などの変更を申し入れたが、タイトルを持つ3棋戦は出産後に延期された一方、挑戦者だった2棋戦で、調整がつかず妊娠による体調不良で不戦敗となった。

 どこまで日程や場所の変更が可能かはケース・バイ・ケースとしても、出産を理由に棋戦に「参加させない」方法ではなく、「参加できる」ための調整方法や条件を、まず定めるのが筋ではないか。連盟によれば、感染症など事情に応じて対局日を変更する場合があるという条項も存在はする。しかし新規定は、対局者変更が原則になることを、あえて定めるものだ。対局者は今まで以上に難しい交渉を迫られるのではないか。

 妊娠は自在に時期を選べるものではなく、時期の調整を強いられるべきでもない。仮に出産日を選べても、毎月のようにある八つのタイトル戦のほとんどに出場権を得た昨年・今年の福間さんのような場合、14週間不出場になれば必ず不戦敗が生じてしまう。

 福間さんは要望書で、日程・場所の変更を可能にすることや、出場できなくても失冠しない仕組みを求めている。会見で「女流棋士がますます活躍して将棋界を盛り上げて欲しいが、タイトルか出産かを諦めなければならない状況なので、将棋界の未来に強い不安がある」と訴えた。

 規定には主催者からも異論が出ている。連盟は現在、規定の改定案を検討中といい、改善に期待したい。出産後に一定期間ランキングが凍結される女子テニスなど、他業種の取り組みも参考になる。日程・場所の変更などには費用や手間がかかるが、スポンサー企業にも応援して欲しい。

 福間さんの問題提起は、棋界にとどまらない普遍性を持つ。仕事をするなら出産を、出産するなら仕事を、諦めなければならない。その二択を迫られ、今までどれだけの女性が苦しみ、地位や収入を失ってきたか。「仕方ない」ことにされていたことが本当に仕方ないのか、省み、変えていかなくてはならない。

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