2026-04-17

【AISS】『呪いの鎧』

ある日、見習い騎士アルド市場の片隅で、いかにも怪しげな露店を見つけた。

「お兄さん、いい鎧あるよ。超軽量、完全防御、しかも“ちょっとした特典付き”だ」

店主は歯の隙間から妙に白い笑みをこぼす。

アルドはその時点で引き返すべきだったが、見習いゆえの慢心が勝った。

「買います!」

——それがすべての始まりだった。

城に戻り、さっそく鎧を装着する。

「おお、軽い!これは当たりだ!」

その瞬間、鎧がぴたりと体に吸い付き、ギギギ…と不穏な音を立てた。

「……ん?」

兜の内側から声が響く。

契約成立。これより貴様は我が宿主である

「は?」

『我は古代の呪装具。外すには三つの条件を満たせ』

「いや外したいんだけど今すぐ」

『一つ、真なる勇気。二つ、無私の行い。三つ——』

「長い長い長い!」

その日の夕方

城内はちょっとした騒ぎになっていた。

アルド、なんで厨房で皿洗いしてるの?」

同期のリナが呆れ顔で尋ねる。

「“無私の行い”って言われてさ……」

『いいぞ、徳を積んでいる。だがまだ足りぬ』

「うるさい!」

鎧が勝手発言するたび、周囲の兵士たちがじわじわ距離を取る。

翌日。

勇気だ!勇気を示せばいいんだな!」

アルドは訓練場で先輩騎士決闘を申し込んだ。

結果は一瞬だった。

「ぐはっ!」

勇気は認めるが無謀である

「どっちだよ!」

三日後。

最後の条件、“真なる自己理解”って何なんだよ……」

アルドは城の庭で頭を抱えていた。

そのとき、リナがぽつりと言う。

「アンタさ、ずっと“騎士っぽくなろう”としてるだけじゃない?」

「え?」

「強く見せたいとか、勇敢に見せたいとか。そういうの抜きにして、何したいの?」

アルドはしばらく黙ったあと、小さく言った。

「……正直、怖いし痛いの嫌だし、でも誰かを助けられるならやりたい」

しばしの沈黙

『……条件達成』

「えっ今ので!?

ガコン、と鎧が外れ、地面に落ちた。

アルド自由になった腕を見て、へなへなと座り込む。

「助かった……」

『ではさらばだ』

鎧は自分で立ち上がり、ぴょこぴょこと歩き出した。

ちょっと待て!」

『次の宿主を探す』

「やめろ被害拡大するな!」

アルドとリナは慌てて追いかける。

城の廊下に、再びドタバタが響き渡った。

——後にこの日を、人々は「呪いの鎧マラソン事件」と呼ぶことになる。

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