ある日、見習い騎士アルドは市場の片隅で、いかにも怪しげな露店を見つけた。
「お兄さん、いい鎧あるよ。超軽量、完全防御、しかも“ちょっとした特典付き”だ」
店主は歯の隙間から妙に白い笑みをこぼす。
アルドはその時点で引き返すべきだったが、見習いゆえの慢心が勝った。
「買います!」
——それがすべての始まりだった。
城に戻り、さっそく鎧を装着する。
「おお、軽い!これは当たりだ!」
その瞬間、鎧がぴたりと体に吸い付き、ギギギ…と不穏な音を立てた。
「……ん?」
兜の内側から声が響く。
「は?」
「いや外したいんだけど今すぐ」
『一つ、真なる勇気。二つ、無私の行い。三つ——』
「長い長い長い!」
その日の夕方。
城内はちょっとした騒ぎになっていた。
同期のリナが呆れ顔で尋ねる。
「“無私の行い”って言われてさ……」
『いいぞ、徳を積んでいる。だがまだ足りぬ』
「うるさい!」
鎧が勝手に発言するたび、周囲の兵士たちがじわじわ距離を取る。
翌日。
結果は一瞬だった。
「ぐはっ!」
「どっちだよ!」
三日後。
アルドは城の庭で頭を抱えていた。
そのとき、リナがぽつりと言う。
「アンタさ、ずっと“騎士っぽくなろう”としてるだけじゃない?」
「え?」
「強く見せたいとか、勇敢に見せたいとか。そういうの抜きにして、何したいの?」
アルドはしばらく黙ったあと、小さく言った。
「……正直、怖いし痛いの嫌だし、でも誰かを助けられるならやりたい」
しばしの沈黙。
『……条件達成』
「えっ今ので!?」
ガコン、と鎧が外れ、地面に落ちた。
「助かった……」
『ではさらばだ』
鎧は自分で立ち上がり、ぴょこぴょこと歩き出した。
「ちょっと待て!」
『次の宿主を探す』
「やめろ被害拡大するな!」