財務省と厚労省が攻防…2200億円めぐり

 毎日新聞、<社会保障費>財務省と厚労省が攻防…2200億円めぐりより。

<社会保障費>財務省と厚労省が攻防…2200億円めぐり
5月27日19時6分配信 毎日新聞


 自民党社会保障制度調査会など三つの合同部会が27日、社会保障費の伸びを抑制する政府方針の撤回を決議したことで、09年度予算編成での社会保障費に関する攻防の幕が開いた。医師不足などを理由に、抑制方針撤回を訴える厚生労働省や厚生族議員に対し、財務当局は方針を貫く構えだ。6月末に固まる政府の基本方針「骨太の方針08」に、抑制方針の継続を盛り込むかどうかで、両者の対立は激しさを増している。


 同調査会の決議文は、09年度に基礎年金の国庫負担割合を50%へ引き上げるため「税制抜本改革」を行う必要があるとし、「新たな国民負担をお願いしなければならない時に、更なる社会保障費の削減は理解が得られない」と指摘した。年末には消費税率のアップを決めなければならないのに、福祉サービスを削れるはずがない、というわけだ。舛添要一厚労相も閣議後会見で、「医療費の削減努力は限界に近い」と述べた。


 高齢化に伴い、社会保障費は毎年7000億〜8000億円増えている。構造改革路線を掲げた小泉政権は02年度以降、診療報酬や生活保護費をカットして、ほぼ毎年、伸び幅を2200億円抑えてきた。同政権で最後となった「骨太の方針06」では、07〜11年度の5年間でさらに1.1兆円(年平均2200億円)削る方針を打ち出した。


 ただ、7年に及ぶ抑制策は、産科医不足による患者の搬送受け入れ拒否など、地域医療の崩壊を招いたとされる。警鐘を鳴らしてきた自民党の尾辻秀久参院議員会長は、25日の講演で「今年の骨太の方針で(抑制策に)触れさせてはいけない。命がけの勝負をする」と“宣戦布告”した。


 それでも、額賀福志郎財務相は27日の会見で、「財政健全化の道筋が揺らぐことがあれば、日本の信頼を失う」と強調。厚生族の動きをけん制した。


 具体的な抑制策として、財務省は介護保険の自己負担増などを挙げるが、メーンに想定するのは、失業給付に充てる雇用保険の国庫負担(08年度1600億円)の全廃だ。雇用情勢の改善で失業給付が減り、08年度の積立金は5兆円に達する見込み。国庫負担を廃止しても問題はない、と同省はみる。


 厚労省は、07年度に国庫負担を半減したばかりとあって強く抵抗するが、雇用保険の国庫負担については06年7月、「07年度に廃止を含む見直しを行う」方針が閣議決定されている。このため財務省は「情勢に変化はない」と、全廃を迫る方針だ。【吉田啓志】


 ■骨太の方針06に基づき、07年度予算以降伸び幅を削減してきた社会保障分野(09年度は検討項目)


 07年度 2200億円=▽雇用保険への国庫負担削減(1800億円)▽生活保護の母子加算の段階的廃止(400億円)

 08年度 2200億円=▽診療報酬(薬価)削減(660億円)▽後発医薬品の使用促進(220億円)▽政府管掌健康保険の国庫負担削減(1040億円)▽その他(280億円)

 09年度 ? 円=▽雇用保険の国庫負担廃止1600億円▽介護保険の自己負担割合引き上げ700億


 乾いた雑巾をさらにしぼろうと財務省は計画している。この3年間だけでも、失業者、母子家庭、病人など弱いものにしわよせがきている。尾辻秀久自民党参院議員会長が宣戦布告をしたとのこと。さずがに、「骨太の方針」をこのまま放置したままでは自分の首が危ないことに気づいたようだ。是非とも頑張っていただきたい。