雑草の言葉

規模の悪魔

2007/12/07
都市/文明 2
 マンモスを1頭でなく2頭を一度に殺すことを覚えた旧石器時代のハンターたちは進歩を成し遂げた。しかし、群れ全体を断がい絶壁から追い落として二百頭をいっぺんに殺すことを覚えたのは進歩のし過ぎだった。彼らはしばらく羽振りのいい生活を送ったが、そのあと飢えてしまった。
・・・・・ ロナルド・ライト[Ronald Wright]
       暴走する文明[A Short History Of Progress]    第1章から


 旧石器時代に滅んだとされるマンモスやその他の巨大動物・・毛サイ、ジャイアントウォンバット、大きな陸ガメ、ラクダ、大型バイソン、大ナマケモノ・・・の絶滅原因は、色々な説があります。気候変動も有力な説です。
 しかし、人間が新しい土地に現れると間もなく大型猟獣が姿を消しはじめています。人類の関与を示す証拠も圧倒的にあります。銃などの武器が沢山存在した近代ならいざ知らず、まだ石器時代の人類の乱獲によってマンモスなどの大型動物が滅びた可能性が極めて高いことに驚きました。しかし同時に納得致します。・・きっと人類が大きな原因でしょう。・・こんな古代から人類は生物を絶滅させていたのです。
 ほかの動物のように必要最小限の動物の捕獲に満足せず、必要以上に動物を乱獲したからです。

 規模が大きいことは効率がいい事として、大量生産がなされる事によって、大量消費も進みました。でも、規模が大きい事は、効率がいいようで、非常に無駄が多く、かつ、その社会の存続に関わる大きな問題を生み出すのです。

 現代の大量生産大量消費文明は、ほんの2百年ほど前の産業革命以降に始まりました。マニュファクチャリングで、同じ製品を1個でなく10個作ることを覚えた現代の製造業者は進歩を成し遂げたように見えました。しかし、石炭、石油をエネルギー源として使っての、大量製造ラインで同じ製品を何千何万と作ることを覚えたのは進歩のし過ぎだったのです。その結果、自らを文明人と呼んで、羽振りのいい生活を送っていますが、その後の反動は旧石器時代の比ではないでしょう。
 飢えるだけではありません。廃棄物による汚染の問題、原子力の恐怖・・・みんなグローバル化で世界規模に膨れ上がり逃げ場がなくなってきました。かつては規模の悪魔によって社会が崩壊しても、まだ他の地に逃げることが可能性として残っていました。しかし、現在の規模の悪魔は、『グローバル』の言葉通り、遂に地球規模になってしまいました。崩壊は世界規模で、逃げ道なし・・・です。
 宇宙に逃げるなんて不可能なことを探るのではなく、地球上で生き残ること・・「規模の悪魔」を止める事を考えるべきでしょう。

 規模の悪魔は、人間の限りない欲望から生まれた人間ならではの悪魔でしょう。規模の悪魔は現代社会を蝕み、確実に破滅へと導いているのです。




  参考文献  :暴走する文明[A Short History Of Progress]
  ロナルド・ライト[Ronald Wright]著 星川淳 訳 
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Comments 2

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guyver1092

暴走する文明読了

 狩猟採取の時代の分明の暴走の形が食べられる以上の乱獲で、現代文明の暴走のひとつはやはり食べきれないほどの食糧生産と、廃棄食料品かと思われます。狩猟採取文明の乱獲の結果、狩る獲物の消失なら現代文明の食べ過ぎの結果は、農地及び森林の消失でしょう。地球の耕地可能面積を年間消失面積で割れば、文明崩壊までの時間も計算できるのではないでしょうか。農地の消失は指数関数的でしょうから、単純な割り算にはならないでしょうが・・・
 槌田氏は、私にとっては、現代文明に対する狂信を打ち砕き、世界の実態を見せてくれた人物です。過去に間違ったこと言っていたこともありますし、ひょっとしたら将来的に今言っていることを訂正したりする部分もあるかもしれませんが、本質のところは正しいのではないかと思っています。
 「石油と原子力に未来はあるか」はアマゾンで検索したら、まだありました。
 本当に進むべき道として江戸時代は参考になると思いますので石川英輔氏の大江戸エネルギー事情等はどうでしょうか? 読み応えとしては、かなり落ちますが・・・
 

2009/08/03 (Mon) 00:16

雑草Z

素早いですね。

    guyver1092さん

 「暴走する文明」もう購入されて読んでしまったのですね。行動が素早いですね。コメントでご紹介したのが7月30日の夜です。・・それから3日後には購入して読み終えてしまったのですね。びっくりです。

 作者のロナルド・ライトは歴史家で、文系の人物です。小説やエッセイも書いているようです。
槌田敦さんやジャレド・ダイアモンドのように科学者ではないので、読み応えがないかな・・・と思いきや、非常に面白く読めました。・・・小説家らしい表現の比喩の類は、知識を得る為の参考文献として読むときには、時として鬱陶しいものですが、本書の表現の妙は非常に気に入りました。・訳者も上手いのですね。
  guyver1092 さんは、ここのコメントからはそれほど名著とは感じなかったのかも知れませんね。・・・是非書評を書いて欲しいですね。この記事の一つ前の【進歩の短い歴史】に私の書評も書いてますので・・・もしよろしければ、お互いに読んだ「文明崩壊」と対比した書評を簡単にそこに書いて戴ければ幸いです。

 「石油と原子力に未来はあるか」は、購入出来れば是非読んでみたいと思います。ご紹介有難う御座います。・・・まあ、槌田敦さんの主張は本書を読まなくとも他の書物から十分にわかりますが、彼の著書は文章としても非常に面白いので読む価値は十分にありますね。

guyver1092さんのおっしゃる通り、槌田敦さんは

>本質のところは正しい

と思います。読み応え十分ですね。

石川英輔氏の「大江戸エネルギー事情」も検討させて戴きます。
他に文明論のお勧めがあれば教えてください。


 +++++    ++++    ++++

>現代文明の暴走のひとつはやはり食べきれないほどの食糧生産と、廃棄食料品

そうですね。これも規模の悪魔の典型ですね。おっしゃるように食料不足が文明崩壊の大きな要因になるでしょうね。

2009/08/03 (Mon) 10:05
☘雑草Z☘
Admin: ☘雑草Z☘
無理に経済成長させようとするから無理に沢山働かなければなりません。あくせく働いて不要なものを生産して破局に向かっているのです。不要な経済や生産を縮小して、少ない労働時間で質素にゆったり暮らしましょうよ!「経済成長」はその定義からも明らかなように実態は「経済膨張」。20世紀に巨大化したカルト。
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