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かつて中東でもっとも平和な国であった、シリア。しかし出口の見えない内戦が長く続き、街は破壊され、数多くの人々が国から逃れ難民として暮らしています。幸せな日々を突然失った子供たちの気持ちを思うと、やりきれないものがあります。

ただそれは遠い中東だからちょっとピンと来ないかもしれない……では、それがもしイギリスで起こったことなら?

内戦が起きたという設定のもと、シリアをイギリスに置き換えて少女の悲惨な日々を描いたムービー、「The Most Shocking Second A Day」。こども支援専門の国際組織『セーブ・ザ・チルドレン(Save the Children)』が2014年に発表された映像は、幸せな日々を失っていく少女の姿とリアルに映し出される悲惨な状況から、大きな話題となりました。

そして、今年5月9日から、その続編「Still The Most Shocking Second A Day」が公開されています。前作同様に「映像上の1秒=少女の1日」というスタイルで描かれるこの作品もまた、必見です。

【難民キャンプで暮らし始めた少女でしたが……】

ふつうのイギリスの子供として、不自由のない幸せな日常を送っていた少女。しかし突如戦争がはじまり、家族もろとも巻き込まれてしまいます。やがて父と離れ離れになり母と2人きりになった彼女が、難民キャンプで暮らし始めるところで、前回の物語は終了しました。

【さらに崩壊していく少女の日々】

そして今回公開された続編は、難民キャンプで暮らすシーンからスタート。

13歳のLily Rose Aslandogduさん演じる主人公は、ムービー冒頭でお母さんから誕生日祝いとしてウサギのぬいぐるみをプレゼントされます。でも……幸せな瞬間はこれを最後に、もうほとんどありません。

まずそうな食料を少しだけ配給される、「父を捜しています」のチラシを抱きしめる、「もうこの国のキャンプはいっぱいだから移動しなさい」と言われる、武装組織に銃をつきつけられる、上空すれすれを爆撃機が飛ぶ、移動中の車のガラスに銃弾が直撃する……

【母と離れ離れに】

そして、母親は決意します。少女を難民ボートに乗せて、ドーバー海峡の向こうへと逃がすことを……。「ママがいないなら乗らない!」と抵抗する少女ですが、「かならず見つけてあげるから」というお母さんの言葉を胸に、乗ることに。

でも、決して頑丈とはいえないボート。嵐のなかで転覆、少女は海へ放り出されます。フランスの海岸へと流れ着き、気を失っていたところを救われるのですが、ついにひとりきりになってしまいました。

【それでも強く生きなければ】

キャンプで知り合った弟のような男の子と行動をともにしますが、フランスだから言葉も通じない。頼りになる大人もいない。すれ違うネオナチは「出て行け!」と言葉を投げつけてきます。

しだいにお姉さんのような役割を果たしていく少女ですが、結局男の子の家族がアフリカにいることがわかり、また彼女は孤独に。

【そうしてやってきた誕生日】

そうしてまた迎えた、誕生日。ムービー冒頭では、キャンプでのこととはいえ、お祝いしてくれる母親もいて、プレゼントももらえた。今はもうまったくの孤独……

「誕生日ね、どんなことをお願いするの?」と少女にたずねてしまった女性は言葉をひっこめ、「ご両親の名前は?」と質問を変えます。少女が浮かべているのは、何を考えているか読み取れない、暗く、色のない表情。

【これはほとんどフィクションではありません】

なんと言葉をかけていいのかもわからない。彼女はこれから一体、どうやって生きていけばいいのだろうか。私たちは、彼女のような子供たちに、何をしてあげられるのだろうか。

このムービーはフィクションではあるのですが、これとまったく同様のことが今、現実に、シリアで起きています。たとえば、これまで32万5千人以上もの子供たちがボートで海を渡り、昨年9月までの間におよそ340人の子供たちが溺れ、命を落としました。

【メディアで見なくなっても、忘れないで】

現在ほとんどメディアに登場しなくなってしまったシリア紛争ですが、悲劇は今なお、進行中です。家族、家、教育。紛争によってすべてを奪われた子供たちが大勢いることを、今改めて、思い出させてくれる1本です。

参照元:Save the Children [YouTubeシリア危機]
執筆=田端あんじ (c)Pouch

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