今井一彰「はじめよう上流医療 あいうべ体操で元気な体」
医療・健康・介護のコラム
日本語から「い」が消えてゆく! マスク時代、あなたの発音は大丈夫?
言葉は生きもの、時代とともに移り変わっていくものと頭では分かっていても、慣れ親しんだ言葉が変わっていくのは、なんだか時代に取り残されていくようで寂しいものです。
ところで、マスクにより表情筋の衰えを実感している人は多いと思いますが、マスクで口元が見えないと相手の発した言葉もよく分からず、コミュニケーションがお互いに取りづらいですね。そもそもリモートワークで人としゃべる機会が減り、久しぶりに長時間おしゃべりしたら疲れたなんて声も届きます。
使わないと衰えていく人間の機能ですが、それを保つために面倒なことをしたくないのも本心。それは発音も同じなのです。
「いやだ」が「やだ」 「うまい」が「うまっ」
日本語から「い」が消えていっている、と言ったら、あなたは驚くでしょうか。たとえば「いやだ」が「やだ」とか、「うまい」が「うまっ」というふうに音が脱落したり、語尾が変化したりしています。思い当たりますよね。それではなぜ、このような現象が起こるのでしょうか? 実は発音の“省エネ化”からなのです。
口の中で舌を前上方に引き上げ、口角を左右に引き、喉頭を少し締めた状態で声を発する母音――。文字で書くと、なんだか難しくなりますが、「い」の発音の仕方はこのようになります。私たちは普段、無意識にこうやって筋肉を動かして発声しています。マスクをした状態では当然、口の動きはマスクによって制限され、滑舌が悪くなり、相手が聞きづらくなってしまいます。
さらに、マスクがなかったとしても、これまで身近にも「やばい」が「やべー」や「やば」と変化したり、「難しい」が「ムズい」から「ムズッ」へと変わったりしている例があることに気がつきます。これも省エネ化の表れなのです。
「い」の発音は前舌母音といい、舌の位置が他の母音よりずっと高く、声帯のある喉頭をキュッと引き締めるエネルギーの要る発音法なのです。ですから、この“面倒くさい”(これも「メンドくさっ」と「い」が落ちますね)発音をより楽な方、楽な方へと変えていってしまったのです。
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