2025年 10月 18日
Noir Exquis L'Artisan Parfumeur/ 栗の薫り |
Noir Exquis
L'Artisan Parfumeur
Gourmand
ゴルマンド、と呼ばれる薫りは比較的新しい。
20年前にはそういう枠はなかったと思う。
香水のなかでゴルマンド、に入るのは、食べ物や飲み物のノートを含み、それらが色濃いものである。
ヴァニラや柑橘系のノートを含む薫りは、かつてからある。
砂糖、キャラメル、ウイスキー、ブランデー、ラム酒、カカオ、珈琲、茶の各種、野菜、煙草、ミルク、トロピカルフルーツ、マシュマロ、綿菓子などがノートとして使われるようになった。
そのせいか、単に甘い薫りが流行ってきたのも困ったものである。
悪質の安物で、嗅ぐだけで歯が痛んできそうな酸化した駄菓子のようなフレグランスは、はたち前後のこどもたちがつけていて、ジムのロッカールームにその匂いが籠るほどで、広くなったジムでもその犯人はすぐに突き止められる。
良質のものはいい。
過ぎなければ、バランスが良ければ、いい。
L'Artisan Parfumeur
Niche、という類の薫りを販売し始めた老舗。
洋服のデザイナーブランドの名前と大衆受けすることを期待しないで生まれた薫り。
栗が好きで、秋には食べたいが、隣町でやっと買えるものは虫食いが多くて生栗を買うたびにがっかりする。
このごろは剥き甘栗をオンラインで買う。
一年中食べられるのがありがたくも、ちょっとつまらなくもある。
栗の季節に帰省して、いよいよこちらに帰るとき道中でおあがりと、母は紫蘇の握り飯を、父は茹で栗を半分に切ったのを小さな匙をそえて持たせてくれた。
栗の薫り。
栗の花の薫りは生々しくて落ち着かない。
落葉の舞う、美しい季節になった。
ブラッドベリが、何かがむこうからやってくると予言した季節。
セーターを引っ張り出しては着たり脱いだりの、どっちつかずの天候に遊ばれている。
寒い季節に似合う薫り。
日本で馴染んだ栗、というよりも、マロングラッセみたいな栗の匂いだけど、わたしも好きなノートがうまくブレンドされている。
着古しのスウエットセーターに染み込んだ薫りに、泣きたいような懐かしいような想いに浸る。
柔らかく、ふくよかに甘い。
花と香木に酔う。
トップノート:栗、オレンジ
ミドル: メープルシロップ、珈琲、オレンジの花
ベース: ヴァニラ、黒檀、トンカビーンズ、白檀、キダチルリソウ
枕にひと吹きして眠れば、おいしい夢を見るか、想いに溢れて切ない夢を見るか。
このブランドには好きなものがたくさんあるが、なかでも”Timbuktu"はわたしの最も好む薫りだ。
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by ymomen
| 2025-10-18 01:26
| 香り
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