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やまなしなひび-Diary SIDE-

変わらない価値のあるもの

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「2回作るとゲームは良くなる」けれど、「ゲームを2回売るのは難しい」

 『ゼルダの伝説 風のタクトHD』の社長が訊くで、ちょうど最近自分が考えていることに近いことを話されていました。


<以下、引用>
青沼「そうやって直してみると、やっぱり劇的によくなるわけです。
 「なんであの時、こうしなかったんだ?」 と思うくらい変わるところもあって。」

岩田「宮本さんがよく 「ゲームは2度つくるとよくなる」って言っていますけど、その言葉をかみしめるような話ですね。
 まあ「普通は2度つくれないんですよ」ってわたしは言うんですけど(笑)。」

青沼「本当にそうです。」

――――中略―――――

岩田「もちろん、あのときベストを尽くしてないとはまったく思っていませんし、
 実際、スタッフの情念ともいえる おびただしいエネルギーとアイデアが 注ぎ込まれている作品だとやっぱり思いますよ。
 そうでなければ今回HDに リメイクしようという話も出ないわけで。」

青沼「そこはやっぱり、11年経ったからはじめて振り返れることでもあるんですよね。」

滝澤「こんなふうに冷静な目でもう一回つくり直せる機会って、普通はないですからね。」

一同「(声をそろえて)ないですね。」

岩田「今回は「それができた」っていうことですね。」

青沼「その「前半が神で、後半が・・・」っていうことも、
 ずーっと「痛いなぁ」と思いながら、生きてきてるじゃないですか。
 だからたとえば5年前だったら、機会があってもまだやる気にはなれなかったかもしれないです。」
</ここまで>
※ 改行・強調など一部手を加えました



 自分はプレイしていないので「そう言われているのを読んだことがある」程度の話ですけど、ゲームキューブ版の『ゼルダの伝説 風のタクト』はゼルダファンの間でも「ポテンシャルはすさまじいんだけど後半の詰めを誤った」という評価をよく目にします。
 それは、当時のゲームキューブがなかなか普及しなかったことで、「クオリティ優先」ではなくて「納期優先」で仕上げるしかなかったからだ―――なんて言われていて。その噂の真偽はともかく、青沼さんはそれをずっと後悔しながら生きてきたのかと、改めてゼルダシリーズの重圧のようなものを考えてしまいました。



○ 同じ作品を作り直せば良くなる(リメイク)
 元作品の評価や反省点を受けて作り直された「リメイク作品」は、分かりやすく「良くなる」ことを狙って作られた作品だと思います。元作品に分かりやすい欠点があればあるほど、リメイクで化ける可能性は高くなると思います。

 「ゼルダ」と並ぶ歴史を持つ「ドラクエ」シリーズの『ドラゴンクエスト7』も、奇しくも今年リメイクされていました。こちらもリメイクが発表された際に「序盤にやたら時間かかる神殿部分を直しました」と、元作品の欠点を修正していることをポイントに挙げていたんですね。


 最初から完璧にニーズに応えられる商品なんて、そうそう作れるものではないです。
 ゲームが商品である以上「発売時期」との兼ね合いもあるし、必ずしも作り手が納得した形で出せるワケではありません。
 ならば、一旦市場に出て、評価を受け終わってから作り直すリメイク作品の方が、「元作品よりも市場のニーズに応えられた作品になる」という見方も出来るんですね。




○ それを活かしてもう一本作れば良くなる(続編)
 元々、「ゲームは2度つくるとよくなる」という宮本さんの発言は、Wiiの『スーパーマリオギャラクシー2』の「社長が訊く」の時に仰られたことだったと記憶していたのですが。今読み返してもそういう表現は……特にない……ですね。あれー?


 しかし、ここで宮本さんが仰っていることは「ゲームを2回作るメリット」なので、近からず遠からずですかね。せっかく気合入れて作った作品なんだから、それを活かしてもう1本作っちゃおうよ――――という考え方です。実は、近年の任天堂のゲームは結構こういうパターンが多いんですよね。


・『時のオカリナ』を活かして作った『ムジュラの仮面』
・『脳トレ』を活かして作った『もっと脳トレ』
・『Wii Fit』を活かして作った『Wii Fit Plus』
・『スーパーマリオギャラクシー』を活かして作った『スーパーマリオギャラクシー2』



 キャラクターの動きなどの“素材”を使いまわせることも大きいですが、1作目で作った市場があるので2作目を投入しやすく、予算も組みやすく、1作目からそれほど間を置かずに“同一ハードで”出すことが出来るんですね。


 もちろんこれは別に最近の任天堂ゲームに限った話でもないです。
 『ドラクエ』の後には『ドラクエ2』『ドラクエ3』……と続きますし。
 『ストII』の後には『ストII’』『ストIIターボ』……と続きますし。
 1作目の素材を使って次々に2作目・3作目と投入していくことで、作品としてもどんどんブラッシュアップされていくし、商品としても市場を形成していきやすい――――『レイトン教授』だって『龍が如く』だって『モンスターハンター』だって、そうやって育ったシリーズだと思うのです。


 私の大好きなDSiウェア『ラビ×ラビ』だって、元々は携帯電話用アプリですもんね。元作品の評判はあまり良くなかったみたいですが、その素材を活かしてDSiウェアで新たに作った2作目(『ラビ×ラビ』1作目)で神ゲーになったという例です。

 そう考えると、素材を新たに作らなきゃならなくなった3DSの『外伝』や『3』―――というのは、DSiウェアのようにはいかなかったということなんでしょうかね。値段も3倍に跳ね上がってしまったし。



 具体名は出しませんけど、PS3のゲームとかは、HD機になったばかりの頃は大変だったのか1作目はキャラも少なくて評判悪い→その素材を活かした2作目以降はグンと評価が上がる、みたいなソフトが多かったですよね。
 「シリーズ乱発」なんて言われてしまうけど、1作品だけに集中して作るよりも、1作目・2作目・3作目と出していくことで良くなっていくこともあると思うのです。

 だからさ!最近出たアレだって2作目・3作目と出ればどんどん良くなっていくと思いますよ!!(出るかは知らんし、相当な信頼は失っていると思うけど)





○ 欠点を修正&追加要素を足せば良くなる(完全版)
 突然話が変わりますけど、自分は今『ファンタジーライフLink』をプレイ中です。
 このゲームは、去年の12月に発売した『ファンタジーライフ』の、今年7月に出た完全版なんですが……『ファンタジーライフ』を持っている人は2000円の有料DLCを買うと完全版『ファンタジーライフLink』に変わるという不思議な仕組みになっているのです。もちろんセーブデータは引き継がれます。


 自分はその完全版からプレイし始めたのですが、元作品からずっとプレイしている母からはネチネチと、

・「前のはアイテムを10コまでしか重ねられなかったんだ」
・「アイテム作成の際に素材を倉庫から出さなきゃならなかったのに」
・「ビッグアイテムを受け取る人、前はこんなとこにいなかった」

 「最近の若者は便利になった世の中で楽をしておる」みたいなことを言われています(笑)。そんなこと知るかーーーっ!と思いつつも、それだけ「完全版でゲームが良くなった」ということなんですよね。これも言ってしまえば「2回作ると良くなる」という例です。



 「完全版商法」というのは同じゲームを2回買わせる酷い商売だとか、不完全版を売っていたのかとか、批判される対象になりがちですけど。「同じゲームを2回作る」ことで完成度が高くなる、という見方も出来るんですよね。
 この『ファンタジーライフ』のように、元作品を持っている人は有料DLCでアップグレード出来てこれからも長く遊べるor元作品を持っていない人は『Link』パッケージ版を買って最初から完全版が楽しめる――――というのは、ファンは長く遊べるし、メーカーは新たな顧客と収入源を得られるしで、理想的な形じゃないかと思うのです。


 『ブレイブリーデフォルト』も、「完全版ではない」とは言っていますけど(笑)、今度出る完全版のような作品は元作品を持っていた人には優待価格でDL版が買えてセーブデータも引き継げるなんて書かれていますね。
 この作品も元作品発売後の要望などを聞いて、問題点を修正していることをポイントに挙げられています。こちらも「ゲームを良くするために2回作る」例ですよね。


 さっき「続編」の例に出したけど、『Wii Fit Plus』もこっちの「完全版」かもですね。
 元作品を持っている人は2000円でバージョンアップ出来て、持っていない人は9800円で新しく買うことが出来た。




 ……ということで、「リメイク」「続編」「完全版」と「2回作るとゲームは良くなる」例を挙げさせていただきました。これだけ書くと「「リメイク」「続編」「完全版」は素晴らしい!全部の作品は2回作るべきだ!」と言っているように思えるかもですが、当然そういう話ではないです。

 冒頭に紹介した岩田社長のこの言葉を思い返してみましょう。


 「まあ「普通は2度つくれないんですよ」ってわたしは言うんですけど(笑)。」



 2回作られるゲームなんて、相当に幸運な作品でしかないんです。





 「リメイクされるゲーム」は、単に「欠点のあるゲーム」というだけではダメです。そりゃそうです(笑)。リメイク作品もそれなりに売れなくては赤字になってしまいますから、元作品もそれなりにヒットしていなくてはならないし、知名度もある作品でなくてはなりません。


 歴史のあるシリーズの場合―――『ドラクエ』も『ゼルダ』も、「9からドラクエ始めたから7やったことない」とか、「夢幻の砂時計はやったけど風のタクトはやっていない」という人もいるでしょうし。逆にリメイク作品からシリーズに入る人も多いでしょう。そうしたシリーズはリメイク作品を出すメリットが大きいんです。

 『ドラクエ』なんかは分かりやすく、「ナンバリングタイトルを出すハードにリメイク作品を」出すしますよね。『ドラクエ7』をプレステで出した1年後に『ドラクエ4』のリメイク作をプレステで出して、『ドラクエ8』をPS2で出す半年前に『ドラクエ5』のリメイク作をPS2で出して、『ドラクエ9』をDSで出す前後に『4』『5』『6』のリメイク作をDSで出して、『ドラクエ10』をWiiで出す前に『1・2・3』のリメイク作をWiiで出す。

 それは、過去作品を使って「そのハードでドラクエを売れる下地を作る」狙いと、「新作だけじゃなくてリメイクもあるからとそのハードを買ってもらえる」狙いがあるんだと思います。




 逆に言えば、売れてもいないし知名度もないしシリーズとして新作も出ない作品なんて、「ここを直せば傑作になるのになー」なんて分かっていてもリメイクなんてされませんし。
 そもそも一度クリアしたゲームのリメイク作品を遊びたいって思う人がそんなに多いとは思いませんしね。ナンバリング本編は300~400万本は売れる『ドラクエ』ですら、リメイクは100万~200万の間ですからね。半減以下なワケです。元がデカイからそれでも大ヒットなんですけど(笑)。

 加えて、そのハードのユーザー層に合っていなければ売れませんし、時代に合っていなければ売れません。
 『時オカ3D』は据置機→携帯機のリメイクだから売れたけど、『風タクHD』は据置機→据置機のリメイクだから正直厳しいんじゃないかなぁって思います。それでも、Wii Uソフトラインナップ拡充のためには必要な商品ではあるんでしょうけど。





 「続編が作られるゲーム」も、もちろん元作品が売れていなければなりません。
 前作がこれだけ売れたから続編はこれくらい売れると見越して予算を組むぞーってなるワケですからね。どんなに声の大きなファンが要望していても、元作品が売れていなければファンも少ないワケで、なかなか続編は作れませんよね。

 それと、“同一ハードで”続編を出すには……当然ハードの末期ではどうしようもないのです。
 『ラストストーリー』を遊んだ人は大抵「素材はイイのに調理の仕方で失敗しただけ。続編が出れば傑作になるだろう!」と思うのですが、あのゲームが発売されたのは2011年です。そこからWiiで続編を作っても完成する頃にはWii Uが出ているし(※1)、じゃあWii Uで続編をと考えるとHDグラフィックで作り直さなければなりません。それでは『ムジュラ』や『マリギャラ2』のように「素材が使えるから短い期間で続編が完成できる」とはいきませんよね。

(※1:サードーメーカーならWii Uが出てもWiiのソフトを出し続けてもイイだろうけど、任天堂はそれだとWii Uの普及を妨げるからやらないと思います)



 また、いくら素材が使いまわせると言っても「続編」を作るからには、「新しいストーリー」「新しいマップ」「新しい要素」がないと成り立ちませんから作るのにもちろん労力はかかるし。
 新しいものを足した結果、「1作目は良かったけど2作目はダメになっちゃった」って可能性だって余裕であるワケで。言うほど楽な話ではないんですよね。




 「完全版が出せるゲーム」も、もちろん元作品が売れていないとならないと思いますが。
 例えばストーリーメインのRPGとか、完全版が出たからと言って「また同じストーリーを遊ぶのかよ」って思っちゃいますよね。リメイク作品のように10年とかの年月が経っているワケでもなければ、続編のように「新しいストーリー」があるワケでもありませんし。「2回作ってゲームは良くなった」としても、元作品も完全版を買うって人はよっぽどのファンしかいないと思うのです。

 なので、元作品はXbox360で出したけど、完全版はPS3で出します―――みたいなことをして、余計な火種になってしまうという。あの手口、Xbox360ユーザーからすると「ふざけんじゃねえ」って話だと思うんですが。実際PS3で後から出した完全版が同等かそれ以上に売れてしまっているのを見ると、「ゲームを2回売るのはこの手口が最適解だ」と考えるメーカーが多くても仕方ないかなと思ってしまいます。

 せめて、『ファンタジーライフ』のように有料DLCでイイから、Xbox360で元作品を買ったユーザーには数千円で完全版にバージョンアップさせるみたいなことをすれば良かったと思うんですけどね……





 で、こんな風に「リメイク」「続編」「完全版」が増えて、「2回作ったからゲームは良くなったぞ」というソフトが増えると。今度は「「リメイク」「続編」「完全版」が出るまで待とう」という人が増えて、そもそもの1作目が売れない(なので2作目も作られない)――――なんてケースも出てくると思います。

 いや、流石に新作に対して「10年後にリメイクされるかも知れないから10年後まで待とう」なんて人は少ないと思いますが(笑)、完全版商法は新作を買おうという心にブレーキをかけてしまっているところはあると思います。


 また、そもそもの話なんですが。
 「2回作るとゲームは良くなる」と思って「リメイク」「続編」「完全版」を作った結果、元作品より悪くなるケースだってたくさんあるワケで(笑)。
 売れていないゲームは「リメイク」「続編」「完全版」が出ないけど、欠点のない完璧な作品は「リメイク」「続編」「完全版」を出しても良くなる余地は少なかったりで。「元作品の方が良かったな」「前作の方が良かったな」「完全版は蛇足だったな」という可能性もあるんですよね。



 「まあ「普通は2度つくれないんですよ」ってわたしは言うんですけど(笑)。」

 この岩田社長の言葉は、作り手はもちろん、ゲームファンとしても覚悟しておかなければならない言葉なんだと思うのです。「2回作る」機会が与えられること自体が幸運なんだ。


| ゲーム雑記 | 17:53 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

いやぁバンナムさん・・・。

| ああああ | 2013/09/25 20:06 | URL |

安いDLゲーはもう少し完全版にアグレッシブになってもいいんじゃないか、なんて思っちゃいました。
300円が500円になるくらいなら大したことは無いし、前作を買った人は200円でアップグレード出来るとかならお金払う人も多いと思うんですよね。

| ああああ | 2013/09/26 01:52 | URL |

ポケットモンスターさん…。

|   | 2013/09/26 08:23 | URL | ≫ EDIT















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