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漫画の話です。

全一お嬢様は世界を熱くする!『ゲーミングお嬢様』の話

全一お嬢様。
国民の九割がご存知のとおりそれは、ゲームの大会で優勝したお嬢様のこと。今その看板を背負うのは、日本屈指のお嬢様が集う超・お嬢様高校、聖閣東芸夢学園に通う祥龍院隆子である。eお嬢様戦国時代にその名を轟かす彼女は今日も、勝てば全力で相手をあおり、負ければお嬢様式罵詈雑言をまき散らしながら台パンをし、eお嬢様としての己を高めていくのである……

ということで、原作・大@nani先生、画・吉緒もこもこ丸まさお先生の作品『ゲーミングお嬢様』のレビューです。
原作者の手による読み切りがジャンプ+に掲載されたときには、その荒ぶる絵柄とセリフ回と格ゲーへの狂熱にネット界隈がざわめきましたが、さすがに荒ぶりすぎた絵柄のせいか、作画を付けた上で晴れて連載となりました。
中身は、格ゲーへの愛を狂気とウソンコお嬢様で煮詰めたギャグ漫画。テキトーな上品言葉で悪口雑言というのはそれだけで楽しいですよね。クソわよ!
石を投げればeお嬢様に当たるくらいにゲームが席捲している日本を舞台に、音ゲー、MOBA、FPSと、多くのeお嬢様が鎬を削るゲームジャンルの中で、格ゲーを最上位カーストに押し上げ、とどめているのが、主役たる全一お嬢様・祥龍院隆子です(持ちキャラは当然リュウ)。
皆の前では、数多のeお嬢様の憧れたる完璧な淑女。だけどその陰では、全一お嬢様たる自分をなおも高みへ登らせようと、練習の日々。それはあたかも、優雅な白鳥が水面下では必死にバタ足をしているがごとし。
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ゲーミングお嬢様 1巻 p6

必死にバタ足をしているお嬢様です。
とまあ、バタ足の姿がどんなに醜かろうとも、全一お嬢様にかける彼女の思いは本物。

私は偶然の勝利など求めませんわ
何が起きようと決して動じずに 触らせず 近寄らせず 必ず勝つ そこに紛れが起こる余地はない
立ち回りに完璧を求め続けたことが 私が「全一お嬢様」たる所以ですわ
1巻 p37

勝とうが負けようが回線が落ちて怒り散らそうががゲーム代のためお嬢様らしからぬバイトをしようが、この気概と実力で、彼女は全一お嬢様として君臨しているのです。
もちろん登場するのは彼女だけでなく、心友と書いてライバルと読む雷撃院蹴子お嬢様や、隆子お嬢様の弟子である二回堂転子お嬢様(その他ベガ立ち要員であるモブお嬢様)などがいるのですが、読んでて楽しいのは、彼女らは(果てしなく誇張しているとはいえ)、ゲームの勝敗に全身全霊で一喜一憂しているところです。
勝てばこの世の春とばかりに己の強さを誇り喜び、負ければこの世の終わりとばかりに身悶えし転げまわり地団駄踏みまわる。遊びでやってんじゃねえんだ!と言わんばかり。というよりは、遊びでやってるからこそ、己の楽しみ以外に奉じるものはないわけで、勝てば喜び負ければ悔しがる。それが当然なのです。
また、気心の知れた間柄であれば、戦う前にはお互い相手を全力で煽り合い、勝てば言葉の限りで罵り尽くし、負ければ相手からの罵詈と自分が言った煽りのブーメランで燃えカスになる。そんな煽り合いもまたゲームの華。お排泄物ご令嬢のように無邪気に全力に、彼女らはゲームを遊びつくすのです。
1巻でもゲーセンで格ゲー以外にちょろっと触っていますが、未収録分では温泉地にあるような古っいゲームやボードゲーム、アナログゲームにも興じています。ゲームを全力で楽しむ姿はこちらでも健在です。
ゲームに賭ける熱くクレイジーな思いと、お嬢様の口から吐かれるクレイジーなお嬢様ワード。大人になると人は、子供のころにはあれだけ熱くなっていた遊びへの気持ちを忘れてしまうものですが、この漫画を読むことで、昔の自分に会えるかもしれませんね。いやそんないいもんじゃないけど。自分が子供のころこんなに煽りはしなかったけど。
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