時子様はシュウとサフィーネの娘である。
- 2021/11/28
- 21:48
グランゾンのパイロット財前時子はシュウ・シラカワとサフィーネ・グレイスの娘である。
オルタナ・デフォルト
そして、彼女の遺伝子は『ZEROシステム』の制御ユニットであるZ-AMSのコアにも用いられている。
「……まさか」
時子が思わず息を呑んだその時だった。
突然、コクピット内に警報が鳴り響いた。
「なっ!?」
慌ててコンソールパネルを操作するも、機体ステータスには異常がない。
だが、次の瞬間、モニターがブラックアウトし、メインカメラの映像が消失した。
「くっ!何よこれは!」
時子の焦りなど知らぬかのように、通信回線から声が響く。
『ようこそ、我らが"神の御座"へ』
「誰!!」
時子の声に応えたのは男とも女ともつかぬ中性的な声であった。
『私はあなたをお迎えするためにお待ちしておりました』
「……迎え?」
『はい。あなたは選ばれし者なのです。どうぞ、こちらへいらして下さい』
「…………」
相手の言葉に時子は一瞬躊躇したが、意を決して言った。
「断るわ」
『何故ですか?あなたはこの世界の希望となるべき人だ』
「それはあなたの都合ね。私には関係ないわ」
『……そうですか。残念です。では仕方ありませんね』
「えぇ、ごめんなさい」
時子が詫びたその瞬間、コクピット内が再び闇に包まれた。
「うっ……」
時子は全身を襲う倦怠感に襲われて意識を失った。
………………………… どれくらい時間が経っただろうか。
時子はゆっくりと目を覚ました。
ぼんやりとした視界の中に映ったのは見知らぬ天井だった。
(ここは?)
上体を起こして周囲を見渡すと、そこは病室のような部屋で、自分がベッドの上にいることに気付いた。
「気が付いたか?」
不意に声をかけられて振り向くと、そこには白衣を着た女性が立っていた。
「……ここって一体どこなの?」
時子は警戒しながら尋ねた。
女性はそんな彼女を安心させるように微笑んで言う。
「心配はいらない。ここは中立都市アル・アジフにある私の病院だよ」
「アル・アジフ……聞いたことない地名ね」
「無理もないさ。君はまだこの世界に来て日が浅いだろうからね」
「どういう意味?」
「そのままの意味さ。君は異世界から来たのだから知らないのも当然だろう」
「!?」
女性の言葉に時子は絶句する。
「あなた……何を言ってるの?」
「ふむ、記憶の混乱が見られるようだね。まぁいい。順を追って説明しよう」
そう言って彼女は語り始めた。
曰く、自分はこの世界で魔導士と呼ばれる存在であること。
曰く、自分を含む魔導士たちは、とある組織に属する人間であること。
曰く、自分はその中でも異端であり、組織の目的に背き、研究を行っていること。
曰く、その研究過程の事故で異世界とのゲートが開かれた。
曰く……
「ちょっと待ちなさい!色々話が大きすぎて理解できないんだけど!」
話の途中で混乱した頭を整理しようと遮るように叫んだ。
「ふむ、そうだな。まずは自己紹介をしておこうか。私はリリス・クロスティアというものだ」
「……クロスティア?」
聞き覚えのあるファミリーネームに首を傾げる。するとリリスと名乗った女性は苦笑して言った。
「私の姓は捨てたものだよ。今の名前はただの通り名に過ぎない」
「通り名?本名は別にあるということ?」
「あぁ、私の名は『アメリア・ローレンス』。それが私の本名だ」
「……ローレンス?」
その名前に時子は眉をひそめた。
「知っているのか?」
「……いえ、聞いたことがあるような気がしただけよ」
「そうか、なら教えよう。私の祖先はかつて大魔導師と呼ばれ、『ZEROシステム』の原型を作り上げた男だ」
「ZEROシステムの原型……?」
その名を聞いた瞬間、時子の脳裏にフラッシュバックが起きた。
ZEROシステム。
それは超常の力である魔法を解析し、再現するために生まれたシステム。
そして、そのシステムは同時にある兵器を産み出すためにも用いられた。
『ZEROシステム』によって生み出された究極の破壊力を誇る機体。
それは、"神の御座"の名を冠した機体。
「……まさか」
「どうやら思い出してくれたみたいだね」
時子は信じられないという顔で呟いた。
「あなたが"神の御座"を作った本人だというの?」
「そういうことになるかな。もっとも、作ったといっても、私はほんの一部の機能を提供したにすぎないけどね」
「……」
「まぁ、君の反応は理解できる。なんせ、あれは禁断の技術だったからね」
「……禁断?どうして?あの機体は世界を救うことのできる機体じゃない」
「確かに、あれは救うために作られた。だが、同時に壊すための武器でもあるんだよ」
「え?」
「あれを生み出したのは人の業だ。それは決して消えることはない。だから、私はアレを封印することにしたんだ」
「……そう」
「だが、君が現れた。私の目の前に。だから、私は決めたのだ。君を使って"神の御座"を作り出そうと」
「……私を?」
「そう。君は選ばれた者だ。この世界を、人々を、未来を救うために選ばれた存在なのだ!」
「……」
「どうか協力して欲しい。きっと、私たちならこの世界の希望となることができるはずだ」
彼女の言葉を聞きながら、時子は思った。
(こいつは、本当に心の底から世界のために何かしたいと思っているのね)
時子はじっと彼女を見つめた。
「……一つ聞かせて欲しいわ」
「なんだ?」
「"神の御座"は完成したの?」
時子の言葉にリリスは一瞬目を見開いたあと、ニヤッとして言った。
「もちろんだとも!」
リリスは懐から一枚のカードを取り出して見せた。
「これが証拠だ!これがあれば私たちは理想の世界を手に入れる事ができるのだよ」
時子は無言でそのカードを眺めていた。
(これは夢ね。悪い夢。早く覚めないと……)
「さぁ、一緒に行こう、クリストフの娘。君がいれば、この世界を変えることが出来る」
リリスの言葉に、時子はゆっくりと立ち上がった。
「……あなたに付いて行けば、お父さんに会えるかしら?」
「あぁ、会わせてあげるとも」
「そう、分かったわ」
時子はそう言うと、右手の手袋を脱ぎ去った。
露になった手を見て、リリスは驚きの声を上げた。
「!?お、お前、それは……!?」
「……ふぅん、やっぱりね」
時子の手が真っ赤に染まっていた。
「ど、どういうことだ!なぜ、お前の手が血に濡れている!」
狼のように叫ぶ彼女に、時子は静かに告げる。
「さぁ、殺し合いを始めましょう」
リリスは動揺した。
目の前の女が突然、自分の手を切り裂いたからだ。
しかも、女は流れ出る血液を気にすることもなく平然としている。
「な、何をしているんだ!早く治療しなければ!」
リリスは慌てて時子に駆け寄ろうとしたが、一歩踏み出したところで、その足を止めざるを得なかった。
床に落ちた血が魔法陣を形取っていたからだ。
「……! グランゾンを召喚する気か!?」
時子はリリスを無視して呪文を唱えた。
「『天より降り注ぐは裁きの雷』」
すると、時子の周囲に無数の光の玉が現れ、それらが空中に浮かび上がる。
次の瞬間、全ての光が合わさり、巨大な光の柱となって天井を突き破った。
「くっ!!」
リリスは咄嵯に防御結界を張ることに成功した。
だが、あまりの圧力にじりじりと後退していく。
(馬鹿な!!こんな魔法見たことがないぞ!!)
そして、ついに耐え切れなくなったのか、リリスの張った結界が砕け散った。
直後、凄まじい衝撃とともに、彼女の意識は闇に飲まれていった。
「誰であろうと私の自由を侵そうとする奴は許さないわ」
***
オルタナ・セリフ
その事実が、彼女の中に深いしこりとなって残っていた。
「……」
彼女は考える。
なぜ自分は、こんなにも苛立っているのか? 何に対して憤っているのか? 自分の中で渦巻く感情の正体に気づけない事が、彼女にとっては歯痒かった。
だからだろうか
「……」
彼女はふらりと歩き出す。
そしてそのまま、格納庫の片隅にある物置部屋へと足を向けた。
そこには今、誰もいないはずだから――
***
「……ん?」
その気配を察知したのは、偶然だった。
「どうかしましたか?」
「いや、なんでもない」
突然立ち止まったヴァレンシュタインに、リザは首を傾げる。
だがすぐに彼は何でもないと首を振ると、再び歩き出した。
(今のは……)
その時ヴァレンシュタインは確かに感じていた。
格納庫の奥の方、そこにいるであろう少女の気配を。
「……」
ヴァレンシュタインは無言で扉を開ける。
そこは雑多な荷物が置かれた倉庫のような場所であり、人の出入りはほとんどない。
しかしそんな場所に、彼女は立っていた。
「……」
まるで誰かを待つように、じっと部屋の片隅で。
「あ……」
そこで初めて気づいたという風に、彼女は顔を上げる。
そうしてヴァレンシュタインの姿を視界に収めると、小さく息を呑んだ。
「こんな所で何をしている?」
ヴァレンシュタインが尋ねる。
それは問いかけというよりも確認に近い口調であった。
しかし少女は何も答えず、
「あの」
おずおずといった様子で口を開いた。
「あなたは、私のお父さんを知っていますか?」
「!」
「私の父です。名前はシュウ・シラカワ、たぶん日本人だと思います」
「……」
ヴァレンシュタインはその言葉を聞きながら、ゆっくりと近づいていく。
「母が言うには、私が生まれる前にラ・ギアスから日本に帰ったらしいのですけど、詳しい事はわからないんです。でも一度だけ聞いたことがあります。父は軍に所属していたって」
「……」
「どんな人だったんでしょう?私と同じ髪の色をしていたんでしょうか?」
「……」
「私もいつか会えるかな? 会えたらいいな……」
「……」
ヴァレンシュタインは無言のまま歩み寄り、そして少女の前で立ち止まる。
すると、その小さな身体を優しく抱きしめてやった。
「え……?」
驚いたような声を上げる少女を無視して、ヴァレンシュタインはそのままそっと頭を撫でる。
「……」
やがて少女は何かを諦めるように目を伏せると、静かにヴァレンシュタインの抱擁を受け入れた。そして少し経ったのち、
「ありがとうございました」
そう言って彼女は静かに腕を振りほどき、そして無表情のままその場を後にした。
***
「まさかこの私が、このような行動に出るとはな」
自嘲するように呟くヴァレンシュタインの顔はどこか気落ちしたように見える。
「シュウ……お前は今どこで何をしている? 家族を捨ててでもやらなければならない事なのか?」
オルタナ・ナラティブ
その事実を、彼女は知らないが……。
──だから。
彼女が父と同じ戦場に立つのは必然だった。
それが彼女にとって幸せなのか不幸なのかは、わからないけれど。
※
──……夢を見る。
それは、いつからだろう? 記憶の彼方に消えた光景。
遥か昔、誰かと一緒にいた頃の情景。そして、今はもういない人の面影。
それは、いつも決まって同じ場面から始まる。
場所は、何処かの荒野。
そこに、自分はいる。
自分以外は誰もいない。
ただ一人で、佇んでいる。
そこは、とても寒い場所だった。
見渡す限り広がる赤茶けた大地には雪が積もっていて、空は灰色に曇っている。
吐く息は白くて、視界はとても悪い。
自分が今立っているこの場所だけが、ぽつんと雪に覆われていないだけで、それ以外は全てが凍り付いたような世界。
そんな場所に、たった一人で立ち尽くしている自分の傍には、いつもある人物が寄り添っていた。
その人は、白い外套を羽織った男性だ。
名前は知らないし、顔もよく覚えていない。
ただ、その人が自分に優しくしてくれたことだけは、よく覚えている。
でも、彼は自分を残して、一人だけ先に行ってしまったのだ。
──……嫌だなぁ。置いていかないでよ。
そう呟いても、返事はない。
当然だ。ここにあの人の声が届くわけがないのだから。
それでも、寂しくて仕方ないから、自分は何度もその名を呼ぶ。
──……おとうさん! ねぇ、待ってよ! 一緒に行こうよ!! しかし、やはり返事はなかった。
やがて、どれくらいの時間が流れただろうか? ふいに、目の前の風景が変わる。
何もなかったはずの空間に現れたのは、巨大な機械仕掛けの城のような建物だった。
その城の前には、一人の女性が立っていた。
美しい女性だ。
金色の長い髪に、透き通るような青い瞳をした美女。
彼女は自分を一振りの剣に変えて、手渡した。
──……これは?
時子は思わず尋ねる。すると、女性は答えた。
──貴女が探していたものよ。
……ああ、そうだ。思い出した。
これは自分の探していたものだったんだ。
剣を手にしてから、ずっと心にかかっていた霧のようなものが晴れていく。
そして、ようやく理解する。……自分は父に会いたくて旅をしていたんだということを。
どこへ行ったかもわからない。生きているのかさえわからない。
ならば、せめて父の残した何かを探したいと思ったのだ。
それが何なのかはわからないけど。ただ漠然と、その気持ちに従って歩き出したら、いつの間にかこんな所まで来ていたのだ。
──さあ、行きなさい。……もう時間がないわ。
女性が言うと同時に、景色が変わった。
今まであった城はなく、代わりに現れたのは巨大なロボットの姿だった。
蒼色に輝く装甲に身を包むそれは、まるで要塞のようにも見える。
これが自分の探し求めていたものだというのはわかる。だけど……。
──おとうさんは!? この中にいないの!? 叫ぶように問いかけると、女性は悲しげに目を伏せる。
──ごめんね。もうここにはいないのよ。
どうして? なんで会えないの? 理由を聞くと、女性は申し訳なさそうに答える。
──あなたのお父さんは、遠い所に行ってしまったから。
そんな……じゃあ、私はどうすればいいの?
途方に暮れるように聞くと、女性は微笑みながら言った。
──大丈夫よ。あなたならきっとまた逢えるわ。だって、あなたのお父様は強い人なんだもの。
だから、信じて進みなさい。
それだけ言って、女性は姿を消した。
後に残された時子は何もできないまま、しばらくその場に立ち尽くすだけだった……。
※
夢の終わりを告げるように、瞼を開ける。
そこには見慣れた天井があった。
カーテンの隙間からは朝日が差し込んでいて、小鳥たちの鳴き声が聞こえてくる。
夢を見ていたらしい。それも懐かしい過去の記憶の夢を。
だが、その内容ははっきりと覚えているわけではない。
覚えているのは断片的な記憶だけだ。
そのどれもが曖昧で、本当に見た夢だったのかも定かではない。
ただ一つ言えることは、自分があの人と別れた場所にいたということだけ。
そして、その人はもういないということだ。
ベッドから出て、着替えてから部屋を出る。
廊下に出ると、すでに起きていた使用人たちが慌ただしく動き回っていた。
朝食の準備をしている者。洗濯物を干している者。屋敷内の掃除を行っている者もいる。
その誰もが忙しなく動いている。
おそらく、今日もまた普段通りの日常が始まるのだろう。
昨日と同じ朝が来て、明日も同じ一日が訪れる。
そんな当たり前な日々を、人々は送っているに違いない。自分もその一人だ。
今の生活に不満があるわけじゃない。
むしろ恵まれていると思うし、感謝もしている。
ただ、時々思うのだ。
自分がもっと強ければよかったのではないか? 父が残してくれた力があれば、守れたのではないかと。
その考えが頭を過るのは一度や二度ではない。
そして、その度に思い知らされるのだ。
──今の私では、父に届かないと。
それでも、いつかは追いつきたいと願う。
父の背に追いついて、並び立って戦えるようになりたい。
そのためには、もっともっと強くならないとダメだ。
そうでなければ、自分はきっと一生後悔し続けることになる。
だから、進まなければならない。
たとえ茨の道であっても、険しい道であろうと。
それが、自分にできる唯一の贖罪なのだから。
そう思って、今日も彼女は戦い続ける。
自分の中にある、弱さと戦うために。
感想
アイマスファン「時子様が乗ってるって事はヤバい機体なんだろうな」
スパロボファン「グランゾンに乗ってるって事はヤバいアイドルなんだろうな」
時子様の髪の色はサフィーネ譲りだよね。
AIのべりすと先生はなんだろう。ロリ時子様が好きなの?
とりあえずシュウはマサキに殴られて。