ものづくりとことだまの国

縄文・弥生・古墳時代の謎。古神社、遺跡、古地名を辿り忘れられた記憶、隠された暗号を発掘する。脱線も多くご容赦ください

【縄文石棒】が【おしゃもじさま】になった経緯【そして荒脛巾神社・再考】

はじめに

青梅市の3回目。出土した縄文 #石棒 が #おしゃもじさま になった経緯。郷土博物館の三好さんは #石神(シャクジ・セキジン)が転訛して杓子(シャモジ)を奉納するセキ #咳鎮め の社になった経緯を解説。練馬区石神井とも共通

目次

本文

前回からの続きです。

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青梅市郷土博物館 おしゃもじさま紹介ページ

park2.wakwak.com

リンク先(青梅市郷土博物館)のポイントを整理しました。

● (多摩川の河岸段丘に縄文遺跡が集積する)青梅市内からは以前より時々、石棒が出土し、中には神社や祠の奉納物や御神体になったものがある

● 後世に(土中から現れる)石神としてシャクジとも呼ばれるようになり、イシガミ(石神)、シャクジイ(石神井)などの地名にもなった

● おしゃもじさまは御神体として祀られた一例ですが、それとともに、縄文石棒の完形遺物として青梅市の有形文化財に指定されている

● おしゃもじさまは「シャクジ(石神)」の転訛(開物注:カタチも似ている)

● 石神は「セキジン」と音読みすることから、咳(鎮め)の神様となり、子どもが病気の時など、シャモジを持ち返り、祈り、快癒すると新しいシャモジとともに返納する信仰となった

執筆者の三好さんは専門家でありながら、誰にもわかりやすい文章で、縄文石棒がおしゃもじさまとして継承された経緯について、たいへん重要なことを書いておられます。

*****

【石神井の地名の由来。ねりま区報】(石神井神社、練馬区石神井町4-14)の経緯はおしゃもじさまと同じ。御祭神は少彦名命(クニづくり、医薬の神)*1。医薬は咳鎮めと神徳的に類似。)

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関東地方のおしゃもじさま

青梅市のおしゃもじさまは一例に過ぎませんが、はるか古代の縄文遺物が、田んぼの造成や井戸を掘っていて突然現れ、その特徴的なカタチから、その時代(中世~江戸期)に合わせた新たな石神様の信仰(御神体や奉納物)となって継承された歴史が浮かび上がります。

関東でグーグルマップで「おしゃもじさま」を検索すると、東京都大田区、同港区、埼玉県北本市、神奈川県座間市などの小祠が上がってきます。

ただ、今のところ(私調べで)縄文石棒との関係が明らかなのは青梅市のおしゃもじさまと、伝承レベルでの練馬区の石神井神社です。

古い信仰を推理する面白さ

おしゃもじさまは咳鎮めの神様として信仰されていましたが、では、その信仰経緯はほかの地域でも同じだったのでしょうか。

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アラハバキ解 第30章より

(アラハバキ解の復習になりますが)その手がかりは 薬師(薬力)信仰 にあると考えています。例えば宮城県の荒脛巾神社(あらはばきじんじゃ)に、その信仰様式が境内配置に顕在化しています。

同社では荒脛巾&道祖神(男性シンボル=コンセイサマ)と養蚕神社(ハサミ←病(咳)を断ち切る=薬力)に分けられていますが、ひとつの祭祀空間に同居しています。

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荒脛巾神社(宮城県多賀城市)境内配置

一年前の考察ですが、あらためてよく考えてみると、道祖神が男性、養蚕社が女性 をシンプルに意味しているのではないかという妄想が湧いてきました。笑

そう考えると中央の「二荒神社の碑」は男性神(アダム)と女性神(イヴ)の二神の登場(アラ=あらわれる)という意味で自然に解釈することもできます。(アラの考察。アラハバキ解・汎日本古代信仰の謎に迫る|03)古代日本では「生、誕生」に反転した「荒」|NOVEL DAYS)

(信州の男女が抱き合った道祖神(碑)は、中世あるいは近世以降の新しい像容。古来の道祖神は鼻高のサルタヒコ=男石で表現する。サルタヒコは、おそらく平安時代の平安京で、天孫降臨神話の影響を受けて、アメノウズメと結婚させられて以来、夫婦神に変えられてしまいます。)

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ひとつの近接した空間に「薬力−せき−道祖神」が集積した類似例として。稲荷山(伏見稲荷)のおせき社、薬力社(わらじが奉納物)あたり。

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青梅市を流れる多摩川(中流)

*1:和歌山市加太の淡嶋神社では裁縫の神としても崇められる