会社設立を相談するのはどの専門家がよい?士業別のメリット・デメリットと費用相場

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会社設立を相談するのはどの専門家がよい?士業別のメリット・デメリットと費用相場

監修: 菅原 裕和 税理士

新しく会社を設立したり、個人事業を法人化させようと思ったときに、自分で手続きを行うのか専門家に任せるのかは迷うところです。

会社設立の手続き自体は簡単ですが、準備や設立後の手続きも合わせるとすべきことは多数あります。その点、専門家に依頼すると面倒な手続きが短縮でき、ミスなくスムーズに事業を開始することができます。

専門家とは税理士や司法書士、行政書士をいいますが、誰に相談するのがよいのでしょうか。

目次

会社設立は自分でもできる?

会社設立の手続き自体は、専門家の手を借りずに自分ひとりでもできます。時間に余裕がある、自分でやってみたいという方はチャレンジしてみてもよいでしょう。

手続きについてわからないことがあれば、法務局や商工会で質問することができます。

設立に要する時間は、準備から登記完了までに1か月程度かかるのが一般的です。はじめて会社を設立する方は、余裕をもって準備しましょう。

また設立後にも税務署などで必要な手続きが多数あるので、それらも忘れないようにしましょう。

会社設立に必要な手続き

会社設立は、法務局に登記申請し受理されることで完了します。

登記申請には、会社の基本事項の決定や定款作成などが必要で、会社設立全体の流れを簡単にまとめると下記のとおりです。

  1. 会社の基本事項の決定
  2. 定款を作成・認証する
  3. 資本金の払込をする
  4. 登記申請をする
  5. 役所や税務署に届出を行う
  6. 会計処理や口座開設などの事務手続き

自分で手続きしたときの会社設立費用

会社を設立するときには、定款の印紙代登録免許税などの費用が発生します。

株式会社であれば、合計で約24万円かかります。その内訳は以下のとおりです。

株式会社の設立費用

  • 公証人認証手数料・・・5万円
  • 登録免許税・・・資本金の0.7%(最低15万円)
  • 定款印紙代・・・4万円(電子定款の場合0円)
  • 謄本交付手数料・・・約2000円(定款1枚につき250円)

近年設立数が増えている合同会社の場合は、公証役場での定款認証手続きが不要なため5万円の公証人手数料がかかりません。さらに、登録免許税の下限が6万円と株式会社の半分以下のため、約10万円で設立が可能です。

どちらの場合でも、電子定款にすると定款印紙代の4万円が節約できます。しかし、電子定款は、パソコンはもちろん、専用のカードリーダーやマイナンバーカードが必要になり、紙で申請するよりも少し手間がかかります。

作成に要する時間や手間、必要機器をそろえる費用を考えると、専門家に依頼したほうが安くなることもあります。

会社設立を専門家に依頼するメリット

会社設立の手続きは、準備や設立後にやることも含めると時間や労力が多くかかります。

自分で会社設立を行えば、専門家に支払う報酬費用がかからないのでコストを抑えることができますが、デメリットもあります。

たとえば、手続きを間違えてしまい希望日に登記が完了しない、設立後に提出しなければいけない書類を忘れてしまう、などのミスが起きる可能性があることです。

一方で専門家に依頼すれば、時間や労力を削減できるばかりか、電子定款を利用すれば設立費用を節約できる場合もあるのです。ミスなく確実に、時間や労力をかけずに会社設立ができるというのは、大きなメリットになります。

会社設立に関する手続きは一般的に、行政書士、司法書士、税理士のいずれかに相談します。専門家ごとに扱える分野が異なりますので、目的に合った専門家に依頼しましょう。

【専門家別:会社設立でできる手続き】
 できることできないこと
司法書士登記申請
(定款作成)
許認可申請
税務処理
行政書士定款作成
許認可申請(※一部業種を除く)
登記申請
税務処理
税理士資金調達
税務処理
(定款作成)
登記申請
許認可申請

それでは、それぞれの専門家について詳しくみていきましょう。

登記申請のみなら「司法書士」

会社設立の登記申請のみを依頼したい方は司法書士がおすすめです。

登記とは、法律で定められた一定の事項を帳簿や台帳に記載することで、登記申請を行えば会社は法人として認められます。

資産管理会社を設立して節税したいなど、とりあえず法人格が欲しいという方は司法書士に会社設立を依頼するとよいでしょう。

メリット

登記申請を代理できるのは司法書士のみです。

登記申請から定款作成まで、会社設立に必要な手続きをすべて代理で行うことができます。司法書士が役場や法務局へ代わりに行ってくれるので、自分は本業に集中することができます。

急ぎで会社を設立したいという場合は、追加料金を支払えば1〜3日ほどで設立してくれる事務所もあるようです。

また、会社設立後の本店の移転などによる登記申請にも対応することができます。

デメリット

司法書士は基本的に登記申請のみしか行えず、税金や税務に関することや特別な許認可についての相談はできません。

また、登記と無関係に定款を作成することはできないので、定款作成のみを依頼することもできません。

司法書士に依頼したときの費用相場

司法書士の報酬相場は5万円〜15万円ほどです。

司法書士は電子定款に対応しているケースが多く、利用した場合は4万円が節約できるので、報酬が4万円以下であれば自分で手続きするよりも安く済むということになります。

定款作成や許認可事業を行うなら「行政書士」

設立と一緒に許認可申請を依頼したい方、定款作成・承認のみを依頼したい方は行政書士がおすすめです。

許認可とは、特定の事業を行う時に必要な行政機関から得られる許可のことをいいます。飲食業や旅行業、建設業などの許認可が必要な事業を行う方は、行政書士に会社設立を依頼するとよいでしょう。なお、介護福祉、労働者派遣など一部業種の申請代理は社労士への依頼が必要となります。

メリット

定款など行政書類の作成は行政書士の専門ですので、定款作成や許認可申請のみを依頼することも可能です。

許認可事業なのに許認可申請を行っていなかったり、定款にミスがあって許認可が得られず、業務を始めるまでに時間がかかったという事態がなくなります。

また、会社設立と一緒に許認可申請を依頼すると報酬が安くなる場合があります。

デメリット

行政書士は登記申請の代理ができないので、自分でやるか別途司法書士に依頼する必要があります。また司法書士同様に、税金や税務に関する相談を行うことはできません。

行政書士は主に行政書類の作成が仕事であり、会社設立の知識があまりない方もいるので、依頼する際は会社設立の経験が豊富な方を探すことをおすすめします。

行政書士に依頼したときの費用相場

行政書士の報酬相場は5万円〜10万円ほどです。

行政書士に会社設立を依頼した場合は、許認可や定款の作成・承認のみをお願いして、登記申請は自分で行うというケースが多くなるでしょう。

会社設立後もサポートできる「税理士」

会社設立だけでなく、税務や節税などに関するサポートも依頼したい方は税理士がおすすめです。

ある程度の売上が予想されるので節税対策をしたい、資金が必要なので創業融資を受けたい、税務申告が自分ではできないという方は税理士に会社設立を依頼するとよいでしょう。

メリット

税務相談や税務申告の代理は税理士の独占業務なので、他の士業には依頼することができません。

会社設立の手続き自体はできそうだけど、税金の計算や税務申告は難しそうという方も多いかと思います。いずれ税理士にこれらの業務を依頼する可能性があるなら、顧問契約を前提に会社設立に関する手続きを依頼してみてはいかがでしょうか。

さらに、法人の顧問税理士の経験が多い方であれば、融資や助成金などの資金調達、節税対策、経営アドバイスまで幅広く相談することも可能です。

デメリット

登記申請の代理を行うことはできません。

また、許認可申請や登記と無関係に定款を作成できないので、定款作成のみや許認可が必要な際は税理士のみでは対応することができません。

税理士に依頼したときの費用相場

会社設立のみを税理士に依頼することはほとんどありません。基本的には顧問契約が前提で会社設立を依頼することになり、その場合は無償または低価格で手続きを行ってくれる税理士が多くいます。もちろん電子定款にも対応してるので、自分で設立するよりも費用が安く済むこともあります。

相場としては2万円〜5万円ほどで、融資や助成金の申請が必要な場合は、別途費用が発生することがあります。

また、設立後に税務署に届ける書類の作成のみであれば1万円〜3万円が相場となります。

雇用や社会保険の手続きは社労士へ

会社が設立したあとは、決まった期間内に社会保険の加入の手続きが必要になります。この手続きは社労士のみが代理で行うことができます。また、雇用に関する手続きや助成金の申請も得意分野としています。

おわりに

専門家に依頼される際は、自分が会社設立で何を重視するかを考えて、どの専門家に依頼するか考えてみてください。その際は電子定款に対応しているか、定款作成・認証を頼めるのかなど、どこまで対応できるかを事前に確認しましょう。

各士業は、法律で定められたサービスのみしか行えないので、税理士に社会保険の手続きを依頼したり、司法書士に税務申告を依頼したりといったことはできません。

ただし、多くの士業は他の士業と提携していたり、他の資格を保有していたりなど、まとめて手続きを依頼できることもあります。報酬金額や相性(人柄)なども踏まえて最適な専門家を選びましょう。

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