朝日新聞による、学校法人「森友学園」に関する財務省の決裁文書「書き換え」疑惑報道について、OBが厳しい視線を送っている。元朝日新聞の敏腕記者、長谷川煕(ひろし)氏は「私が在籍したころなら、ボツにされるような曖昧な記事に感じる。『正しい記事だから信じろ』というのか。慰安婦問題の虚報などへの反省がない」と語った。
長谷川氏は、慶応大学卒業後、1961年に朝日新聞に入社。経済部や週刊誌「AERA」などで活躍した。93年の定年後も2014年8月までは、社外筆者として健筆を振るった。最近、『偽りの報道 冤罪「モリ・カケ」事件と朝日新聞』(ワック)を上梓した。
国会を空転させた今回の報道を、次のように分析した。
「具体的な証言や写真など、記事の裏付けが不十分だと感じた。朝日新聞が、決定的証拠となる文書の写しを入手済みなら、情報源秘匿のために掲載はしないまでも、もっと信用性を高める書き方をしたはずだ」
朝日新聞は2日朝刊の1面トップで「森友文書 書き換えの疑い」との大見出しで、疑惑を報じた。国有地取引の契約当時の文書に記された「特例的な内容」「本件の特殊性」などの文言が、昨年2月の問題発覚後に国会議員に開示した文書にはなかったという。2つの文書は、起案日や決裁完了日、番号が同じだとした。
だが、記事には「書き換え」を裏付ける写真などの決定的証拠はなく、《文書を確認》《複数の関係者によると、問題発覚後に書き換えられた疑いがある》とした。
長谷川氏は「《確認》といっても、関係者からの聞き取りなのか、実際に文書を見たのか。疑惑が事実だとしたら、政権を揺るがす重大な問題にもかかわらず、表現が曖昧だ。掲載基準が相当、緩くなっているのではないか」と指摘し、次のような「仮説」を示した。
「朝日新聞は、大きな勘違いをしているのではないか。それは『安倍晋三政権つぶしの闘争のためなら、多少の記事の不備はどうでもいい』という考え方だ。だとすれば報道機関とはいえず、危険な発想だ。メディアの責任として、決定的な裏付けをもって、疑惑の実態を明らかにすべきだ」