ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

確定拠出年金(401k)は20代30代の若者にはお薦めできないと思う

こんにちは、らくからちゃです。

ここ最近はほとんど開いていなかった証券会社のホームページを開いてみました。うーん、微妙(´ε`;)。まあ、基本的に長期保有が前提の銘柄ばかりなので、あまり一喜一憂せず、ひとつき一回くらい確認するくらいがいいのかもしれません。

昔は、ちょっとでもお金を殖やしたくて、いろんな金融商品を熱心に調べたりもしましたが、その中でも特に印象深かったのが『確定拠出年金』。いろいろな工夫も必要ですが、ただ貯金をするよりも、節税効果もあって、大変お得に見える制度です。

ですがこの制度、個人的には20代・30代の若者には全力でオススメ致しません。うっかり『税金が安くなるんだ!』と飛びつく前に、考えることがたくさんある商品です。まずは、『そもそも確定拠出年金って何?』ってところから、書いてみたいと思います。

確定拠出年金(401k)って何?

 『確定拠出年金(401k)』とは何かを一言で言うと『老後のための蓄えを作ることを政府がサポートしてくれる制度』といった感じでしょうか。確定拠出年金は、大雑把に分けて、働いている会社がやってくれるもの(企業型)と、自分で加入するタイプのもの(個人型)があります。

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(出典:確定拠出年金とは(個人型と企業型) : 三井住友銀行)

証券会社に確定拠出年金の『専用口座』を開設し、企業型であれば会社が勝手に、個人型であれば自分の預金口座から毎月引落しを行うように設定します。

振り込んだ後は、それぞれの証券会社の指定した物の中から、好きな『投資信託』を自分で選んで運用することが出来ます。対応している証券会社は何社かありますが、手数料の安さや取り扱い商品の豊富さで有名なのはSBI証券さんですね。

 

普通の証券会社の口座と何が違うの?(´・ω・`) というと、簡単にいえば税金が安くなります。

確定拠出年金のメリット

かつて会社員の老後は、定年退職時に払われる『退職金』や、企業が独自に運営する『企業年金』によって支えられてきました。しかし、全ての人が、老後十分な生活を送ることが出来るだけのサポートがあるわけではありませんが、国から支給される『公的年金』だけでは生活することが難しい時代です。

お金のない老人が増えてしまうと、社会的なコストも増大してしまいますので、若いうちからしっかりとお金を貯めることを奨励する。それが確定拠出年金の大きな目的です。

税金がお得になる点について、大きく3つのポイントに分けて説明しましょう。

支払時:所得が全額控除

まず一番のポイントがこれ。支払った金額が、全額所得控除となります。っていわれても何のこっちゃ?という人もいると思うので補足しましょう。普段、給料から勝手に天引きされているので、あまり意識されていないかもしれませんが、皆様の受け取るお給料からは、

  • 所得税
  • 住民税

が差し引かれています。これらの税金は、『所得≒受け取っているお給料』に税率をかけた金額になります。*1『所得控除』とは、実際に受け取ったお給料の金額より、お給料が少なかったものとして計算することができるようにする。という意味です。

運用時:利益が非課税

通常、株や投資信託を売買で利益が発生すると、利益額に対して税金がかかります。売買時の差益だけでなく、株であれば配当金、預金であれば利息に対しても税金がかかります。

一方、確定拠出年金口座の中にある分については、どれだけ利益が出ていたとしても税金がかかりません。

支給時:税金が掛かるがほぼ控除される

ここまで、いいことづくしのようですが、一点注意点があります。それが、お金を受け取るときに税金がかかることです。

こちらの記事にもありましたが、基本的に『確定拠出年金の所得の全額控除』は所得の発生するポイントを、お給料を受け取ったタイミングから、確定拠出年金の口座から引き出したタイミングに移すものです。

えー、結局税金かかるのかよーと思った方。ご安心ください。受け取る金額にも『退職金控除』が適用されます。退職金控除は、

  • 働いていた期間*40万円。
  • 20年目以降は*70万円。
  • 更にそれを超えた分も、半額は控除。

となっており、相当額の税金が減額されます。また受け取り方は、一括だけでなく分割型の商品もありますが、その場合も『公的年金等控除』を受けることが出来ます。

どれくらいお得になるのか?

じゃあ実際にどれくらいお得になるのか?こちらのサイトからシミュレーションできるようなので、ちょっとやってみましょう。

ひとまず自分のケースで計算してみました。

  1. 年齢・・・28歳(ちなみに4月27日が誕生日です(*ノω・*)テヘ)
  2. 課税所得・・・600万円
  3. 毎月の掛金・・・23,000円(限度額いっぱい)
  4. 予想利回り・・・2.0%

で計算してみました。その結果・・・

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SUGEEEEEE!!!!

所得税減税で、350万円もの節税になるようです。さらにさらに~

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TUEEEEEE!!!!

運用益から取られる税金を更に複利運用した場合の利益が80万円もあるそうです。

しーかーもー

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貯めた金額は1,200万円ですが、税金が係るのは1,600万円以上なので、税金を気にする必要もありません!ヽ(=´▽`=)ノ

これはすごい。まじですごい。確定拠出年金は神に違いない!いますぐこのリンクから口座開設をするべき!そうしたら俺のアフィも増える!

と、いいたい所なのですが、一個いい忘れてました。

この口座、一度預けちゃうと60歳まで引き出すことが出来ないんですよね。

流動性という武器

この確定拠出年金という制度、もともと『老後の資産形成』が目的の制度ですので、一度預けたお金は、そう簡単に引き出すことが出来ません。障害を負って働けなくなった時などを除いては、一定期間全く現金化することが出来ない資産となります。この制約は非常に強力で、仮に『自己破産』したとしても、確定拠出年金は差し押さえ対象となりません。(参考:確定拠出年金は自己破産手続きにおいて財産となるか - 過払い・債務整理ブログ)

これをどう考えるか、ですね。合計400万円近い節税効果は決して少なくない金額です。ですが、若いうちから、機動的に使える資産を減らしてしまうのは、非常に大きなリスクを伴います。普通預金など、いつでもすぐに使うことの出来るお金は、それだけで『流動性』という大きな武器になります。

わたしがそのことを強く意識したのは、あることがきっかけでした。

新築マンションを3割引で買った方法

これは、わたしが高校2年生くらいの話です。実家に居た頃、近所の親族の家に良く遊びに行っていました。まあ『ばっちゃん』としておきましょう。

晩ごはんを一緒に頂いたりと、割とよく甘えさせてもらっていたので、春休みに東京へ遊びに行った帰りに、お土産を持って(ついでにお小遣いもらいに)遊びに行きました。

ワイ『東京はな、カクカクシカジカでなー』

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ばっちゃん『そうかー、ところで話かわるんやけどな』
ワイ『なんや?』

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ばっちゃん『マンション買ってん( ・∀・)』
わい『(  Д ) ゚ ゚』

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ワイ『いやいやいやいや、おかしいっしょ。1週間前に遊びに来た時は全然そんなはなしなかったやんけ。』

ばっちゃん『うん。せやから、あんたが先週に来た後に見つけて、あんたが帰ってくるまえに買うてん。引っ越し手伝ってや。』

 

ええ、これが資産家かと思いましたね。

 

ワイ『ってそんな、大根買うみたいにいいなさんな』
ばっちゃん『いやそれがな、現金払いやったら3割引きにしてくれるって言うし。』

 

でまあ、色々と顛末を聞いていると、

  1. 知り合いが良さそうな物件を教えてくれた。
  2. 調べてみたら、相当資金繰り困っている模様。
  3. 『現金払いだったらどこまで値引きしてくれる?』と言ってみたらこうなった。

とのこと。この当時は、比較的不動産が売れない『不況』の時代でした。通常、ローンを組んで不動産を売買する場合、審査に時間がかかります。場合によってはローンの承認がおりない可能性もあります。

ばっちゃんは、そこを突いて、『ニコニコ現金払い』をすることを条件に、大幅な値引きを引出しました。これは、極端な例かもしれません。ただ、いつでも自由に動かせる現金がある。それは、大きな武器になる。そんなことを学んだ気がします。

お金の増やし方よりも大事なもの

ばっちゃんは、投資や資産運用といった話に興味があるようで、そういった話を良くしてきました。そんなばっちゃんに『資産運用を始めるなら、最低いくら位の資金があったほうがいいと思う?』と聞いたことがあります。その時帰ってきた答えは、

『資産運用は1000万円貯めてから。元金が100万とか200万とかじゃあ、時間の無駄。若いうちは、お金の増やし方より、使い方を勉強したほうがいいよ。』

でした。

社会人になりたてほやほやの頃は、この『使い方』とは、つまり『節約の仕方』だと思っていました。ですが、話を聞いていたら、どうやら違うんじゃないかなあということに気が付きました。

ばっちゃんは、細かく家計簿で支出を管理しています。その一方で、結構お金をつかうときは、食べ物でも着る物でも大胆に使うんですね。ばっちゃんと接していて気がついたのは、その『お金の使い方』の上手さ。ただ節約するんじゃなくて、きちんと必要な物にはお金をかけているんですね。

ちょっと高級なお肉とか、そういったものについては、お金を出し惜しみません。また凄いなあと思うのは、『誰とでも仲良くなれる』こと。一見すると、衝動買いのようにみえるマンションも、話をよく聞いていると、

  1. 仲の良い不動産業者から『お薦め物件』を紹介してもらった
  2. 仲の良い市役所職員から『それ、掘り出し物だよ』とお墨付きを貰う
  3. 仲の良い金融関係者から『あそこ、きっと資金繰りで困ってるよ』とアドバイスを貰う。

そういった条件が揃ったから出来たことなんですよね。決して、行き当たりばったりの判断ではない。ばっちゃんは、旅行に行ったり、良い物を買ったり、他の人に語れる経験を増やすことには決してお金を惜しまない。そして、誰にでもそのときの経験を話すので、自然と人の輪が広がっていく。

一年ほど前、ばっちゃんが『富士山を見たい』というので、一緒に河口湖まで遊びに行きました。神戸に住んでいるばっちゃんとの待ち合わせ場所は、東京駅。

東京駅で、新幹線から降りてくるのを待っていると、ばっちゃんは、20代前半の見ず知らずの青年と一緒に新幹線から降りてきました。もしかして、新幹線車内で体調を崩したりしたのかな?と、ドキドキしながら青年に話を聞いたのですが『いやあ、たまたま隣の席になっただけです。おばあちゃん、めっちゃ面白いですね(笑)』とのことで、胸をなでおろすやら、びっくりするやら、複雑な気持ちになりました。

ばっちゃんのいう『お金の使い方』とは、ただ節約するだけの話ではなく、色んなひととの接点を増やすことの出来る使い方、そんな意味のような気がするんですよね。

さて、随分と本論からはずれてしまいましたが、わたしは個人的には『確定拠出年金』を20代・30代のうちから利用することはおすすめしません。確かに、節税効果はあるのですが、それ以上に失うものが多すぎるような気がするからです。

投資をする前に、最低いくら位用意をしておくべきか?は人によって判断の分かれる項目です。100万円が正解かもしれないし、1億円が正解かもしれない。ただ、ばっちゃんの言っていたように、若いうちは、お金の殖やし方より使いかたを勉強すべき、というのも分かるような気がします。

確定拠出年金の制度は、確かにお得かもしれません。でも、旅行に行ったり美味しいものを食べたり、あるいは勉強したり。生きている間ずーっと使える経験を得る機会を失う可能性があります。また、『キャッシュでマンションを購入』は極端な例ですが、住宅を取得する予定があるのなら、利回りよりローンの利率のほうが高いかもしれない。

まあ、40台50台になって、定年までのお金の使い方がはっきりしてきて、かつ所得税の税率が上がってきたら、良い選択肢になるのかもしれませんが、20代30代のうちから考えるもんでもないかなーというのが個人的な感想です。

結局は皆さんの人生ですので、最終的な判断はおまかせ致します。ただ、『どのようにお金をつかうのか?』そういった視点も、忘れないようにしたいものですね。

ではでは、今日はこの辺で。

*1:厳密に言うと累進課税性なのでもう少しややこしい。