ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

新入社員にオススメの本をまとめてみた

こんにちは、らくからちゃです。

気がつけばもう今年度も今日でおしまい。明日にはピカピカの新入社員が入ってきますね。

9年前の私のときと同じく「社会人としての自覚が」「あれをやっておけ」「これもしておけ」と事細かく言われることでしょう。そんなのは、余裕がある範囲でやっとけばOKです。勉強なんて後からいくらでもできます。一番大事なのは、

同期と仲良くなること

と違うんじゃないかなあと思うです。

最初は、集合研修の会社が多いでしょう。みんなでお昼ご飯を食べに行ったり、休日は今まで存在すら知らなかったお互いの趣味にチャレンジしたり、そんなことができるのは時間的にもタイミング的にも今だけです!

高校や大学に入ったときも、まずクラスメートと仲良くするのが大事だったと思いますが、会社員生活もこのタイミングでリア充ルートから外れると仕事でもいろいろ苦労します。

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とはいえです。一人で過ごす時間もゼロでは無い。その間に勉強したいなーと思うひと向けに、個人的に「この時期読んでおけば良いと思う本」をピックアップしてみます。

選んだ基準は以下の通り。

1.ずっと役に立つ内容であること

巷には数多の「新入社員にオススメ!」と銘打たれた本があります。ただその多くが本当に新入社員のときにしか役に立たない物が大半です。

せっかくですので、何十年と語り継がれる内容を扱っているものを中心に考えました。

2.広く知られている内容であること

偉い人たちは、皆さんが思っているよりも読書好きです。そして本の中で取り上げられている例や良く使います。例えば「ロングテール」と言えば、売上の大部分には占めない部分、とかね。

そうした広く知られていることによって、ある種の「諺」みたいになっているキーワードを学べる内容を扱っているかどうかもポイントにしました。

3.読んでいてい楽しい内容であること

新入社員諸君は、研修に遊びにと、いろいろ気疲れも多い日々を過ごすことになるかと思います。そんなときに分厚い学術書を持って来られても、まあ頭には残らないでしょうね。

大事なのは読むことじゃなくて、役に立つことです。そのためには面白さも重要です。上記を満たしつつエンタメ感覚で楽しめるかどうかもポイントにしました。

とまあ前置きが長くなりましたが、早速、並べていってみたいと思います。

ザ・ゴール

ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か

ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か

 

 世界中のビジネスマンの間で、聖書の次に読まれているんじゃねえの?との評判もある本ですね。

工場の立て直しを命じられた新任の工場長が、いろいろグダグダになった生産工程をなんとかしようとするも全部空回り。現場とも対立し頭を抱えている中、再会した恩師から受けたアドバイスを元に、工場を立て直していく。といった感じの小説仕立てのお話です。

本作にインスパイアされて作られた同じ作風の書籍が多いことからも、その影響力の強さが見て取れますが、当初は「この知識を日本人に与えたら、日本の製造業が強くなりすぎて大変なことになる」と原作者が翻訳を禁止していたとの曰く付きの一冊です。

本書で取り扱っている内容は制約理論(TOC)とよばれています。

ものすごく雑にいうと

  1. 組織全体の生産性は、最も効率の低い工程によって決まる
  2. 効率の高い工程があっても、無駄に仕掛中の作業が増えるだけ
  3. よって部分部分の効率を改善するよりも効率の低い工程の改善を重点的にせよ

といった感じかな。私の雑な説明よりも、本書を読んだほうが早いかと思います。

イノベーションのジレンマ

イノベーションのジレンマ 増補改訂版 (Harvard Business School Press)

イノベーションのジレンマ 増補改訂版 (Harvard Business School Press)

 

 本書も、中で取り上げられている「破壊的イノベーション」という言葉とともに、広く知られている一冊です。今回紹介する本の中では(比較的)アカデミックな書き方になり、やや固めの部類になると思いますが、事例も豊富で読みやすい一冊です。

本書は、イノベーティブな製品を生み出すことのできた組織が、何故次のイノベーションを生み出せないのか?というテーマに挑んだ本です。

技術革新(イノベーション)を大きく、「既存の枠組みの中での進歩」である持続的イノベーションと、「枠組みを根本から覆す」破壊的イノベーションの2つにわけ、顧客や組織構造が求める前者のみに依存することにより、新しい市場を手に入れるチャンスを失う事例を多く取り上げています。

この考え方が普及する前のマーケティングの教科書には「自分の作れるものを売ってちゃだめですよ、お客さんが欲しいものを売らないとダメですよ」という話が良く書かれていました。ところが本書では「お客さんが欲しいものだけ売っていてもダメ」という事実が明らかになったわけですね。

誰が、いつ頃言い出したのかは定かではありませんが、「近江商人商売十訓」という訓話のなかに、こんな一説があります。

無理に売るな、客の好むものも売るな。客のためになるものを売れ

その大切さが分かる一冊じゃないかなあと思います。

コンテナ物語 

コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった

コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった

 

 前の2冊と比べると、知名度も高くなく、特にパンチの効いたキーフレーズがあるわけではありません。しかも取り上げるのは、何の変哲もないように見えるただの金属の箱、「コンテナ」に関するお話です。

コンテナが日常生活に影響する実感なんて大抵の人は無いんじゃないかなーと思います。でももし、この箱がなかったらと考えて見てください。

船には一個一個ダンボールで積み込んで行くしかないですよね。それには途方もない時間と労力が掛かります。ところが、統一された規格のコンテナさえあれば、トラックから運ばれて来たまま、そのまま釣り上げて乗せれば良い。

ただし、みんながてんでバラバラのコンテナを使っていたら、その恩恵を十分に享受できません。統一された規格があって、誰もが同じサイズのコンテナを使って初めて、効率的な輸送ができる。

結果的にコンテナは、世界の物流の形を変えました。港はただの通過点にしか過ぎなくなり工業地帯は内陸部へと移り、港からは大量の腕自慢の男たちが姿を消しました。そして大量の製品が世界を飛び交うようになった。

本書は、規格形成による影響とそのダイナミズムを、まさに「物語」として学べる一冊です。細かい書評は、下記にも記載しましたので、よければぜひ!

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ヤバい経済学

ヤバい経済学 [増補改訂版]

ヤバい経済学 [増補改訂版]

  • 作者: スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー,望月衛
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2007/04/27
  • メディア: 単行本
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 たぶん、この記事を読んでいるオジサンたちは、「何を今さら?」と思っているかもしれませんね。でももうすでに発売から10年以上たっているので、知らない人も多いかなーと思ったので、敢えてあげてみました。

「経済学」と銘打ってはいますけど、経済学の話はあまりありません。統計の話もたくさん出てきますが、統計学の話でもありません。じゃあ何の話なのかというと、データの読み方、解釈の仕方って感じの本かなあ。

冒頭に、こんなエピソードが出てきます。

ある保育園で、子供を迎えに来るのに遅れてくる父母が多かったので、遅れたときに罰金を取るようにしたら、ますます遅れてくるようになった。

結論としては「なんだ、金さえ払えばよいのか」と父母が解釈し、その額が大したことなかったため、堂々と遅刻してくるようになったという話です。

いかに高度な分析手法を身につけても、その裏にいる現実世界で人間がどのように振る舞うのか?を抑えておかないと、誤った結論を導きだしてしまいます。そうしたデータの切り取り方については、早めに学んでおいて良いかな、と思います。

新ネットワーク思考

新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く

新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く

 

割りと個人的な趣味です(笑)。

ネットワークと書いてありますが、通信やTCP/IPの話、はたまた怪しげなマルチまがい商法の話ではありません。と言いたいところですが、そうしたものも含めて、複数の参加者が各々の状況に合わせて自律的に行動する世界における共通法則みたいなものを扱った本です。

  • SNSのバズはどのように生まれて広がっていくのか
  • HIVはどうした経路をたどって感染していったのか
  • 世界的な大恐慌はどのようにして起きるのか
  • 事故に強い交通網はどうすれば作られるのか
  • 電気自動車を普及させるにはどうすればよいのか

そんなことがまるっと全部テーマに入ります。書き方も「科学読み物」といった感じで、するすると入ってくると思います。

キーワードとしてあげると、スケールフリーネットワークだとか、ティッピング・ポイントとか、六次の隔たりとか、バタフライ効果とか、弱い紐帯の強さとか、そんな話が関連してきます。これらは、オジさんたちの頭の中には無いかもしれませんが、これからの時代を生きる若者には、かなり重要な知識です。

学生時代、夢中になって勉強した分野ですけれど、卒業後も多いに役に立っていますので、合わせてぜひー。

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というわけで、他にも良い本はいくらでもありますが、紹介を何十冊も書かれても、読み疲れて肝心の本を読む時間がなくなっても困りますので、この辺にしておこうと思います。完全に個人的な選書ですし、わたしの雑な説明より、実際に手にとって貰うのが良いかなあと思います。

それでは、前途洋々たる皆様の会社員ライフに幸多からんことを祈って!

ではでは、今日はこのへんで。

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