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らくからちゃ(id:lacucaracha)さん「もう『非正規雇用』って言うのやめにしない?」記事への反論あるいは法律用語としては「非正規」ではなく「有期労働契約」だけどそう言い換えて何が解決するのか?

タイトルには「反論」と書きましたが、他人のブログに乗っかって自分の言いたいことを言いたいだけかもしれません。らくからちゃ(id:lacucaracha)さんの、この記事に関連してです。

www.yutorism.jp

上掲記事には、「法律用語に『正社員』という言葉はない(『正社員』という言葉は日常使われる意味と異なる定義で用いられている)」「いわゆる『非正規雇用』にもパート、アルバイト、契約社員・嘱託社員、派遣社員とさまざまで、『正社員』と明確に区別されるものではない」とあります。

これは事実誤認であることを指摘したいと考えます。

労働者契約法という法律があります。この法律では、いわゆる『正社員』を「無期労働契約」、パート、アルバイト、契約社員・嘱託社員…を「有期労働契約」として、明確に区別しています。

厚労省のサイトへのリンクを貼ります。以前にも貼ったことがあります。

www.mhlw.go.jp

厚労省のサイトの最初のほうに、まさしく「パート、アルバイト、契約社員・嘱託社員…」という言葉を用いて、次のような注釈があるのです。

※有期労働契約・・・1年契約、6か月契約など契約期間の定めのある労働契約のことをいいます。
 有期労働契約であれば、パート、アルバイト、契約社員、嘱託など職場での呼称にかかわらず、対象となります。

この「有期雇用契約者」の直面する問題を網羅的に述べることができればいいのですが、とっさには間に合いませんでした。おそらくまとまったサイトはあると思いますし、もしなければ私自身が作るべきか、くらいに考えています。

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ともあれ、現状で「有期雇用契約者」が、広範囲に共通して直面している問題を一点のみ。これまで弊サイトではしばしば扱ってきた話題の繰り返しになりますが。

それは、上掲厚労省サイトに記されている「有期雇用者5年無期雇用転換ルール」が原因なのです。なぜか画像データで掲載されているので、テキスト起こしして引用します。

改正労働契約法のポイント
3つのルール
I 無期労働契約への転換
 有期雇用契約が繰り返し更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期雇用契約)に転換できるルールです。
II 「雇止め法理」の法定化
 最高裁判例で確立した「雇止め法理」が、そのままの内奥*1内容で法律に規定されました。
 一定の場合には、使用者による雇止めが認められないことになるルールです。
III 不合理な労働条件の禁止
 有期契約労働者と向き契約労働者との間で、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違を設けることを禁止するルールです。 

この結果、実際に多発しているのは、5年未満による「雇い止め」の横行です。これに関しては、しばしばエントリーにしています。労働者の保護を目的とした法律の制定が、かえって非正規労働者の身分を余計に不安定にしてしまっているのです。

watto.hatenablog.com

上掲引用部のII項目とIII項目に関しても、字面だけ読むと結構なことのように見えるかもしれませんが、現実に行われていることは、雇用契約書への「○年を超えて雇用を継続しない」という条項の挿入なのです。

そのような一方的な契約書は無効なんじゃないかと言いたいところですが、日本の裁判所は雇用側と被雇用側で争われた訴訟の場合、毅然として雇用側の味方をするようで、例えば上記検索結果にも出てくる 2014年11月7日のエントリー にも書いた通り、非正規雇用者は「契約書にハンコを押したら負け、ハンコを押さなくても負け」なのです。

らくからちゃ さんは、正規も非正規も抱えている問題はさまだまだとおっしゃています。確かにそうでしょうが、一面、これはネットの流行り文句を逆手にとると「主語が小さい」ようにも思われます。広範な非正規雇用者が共通の危機として直面している喫緊の問題が、失礼ながら らくからちゃ さんには見えていないのではないかと疑わざるを得ません。

本エントリーは「5年雇止め問題」一本に絞って論じましたが、非正規雇用者が共通に抱えている問題は、これだけにとどまりません。例えば正規雇用者が当たり前と考えている各種社会保障が、なかなか受けられないという問題もあります。「すき屋」他のゼンショーが、「雇用」ではなく「業務委託」だからと従業員の健康保険や年金に加入させることを拒み続け、何度も敗訴しているにもかかわらず改善を行っていないことは、しばしば「はてな」のホッテントリにも上がったので記憶に新しいはずです。同一労働同一賃金の原則が、まるで守られていないことも別の例です。

今、らくからちゃ さんのエントリーのブックマークを見に行ったら、参考文献を挙げているブコメを見つけましたので、これから勉強してもっと網羅的に論じられるようにならなければと思っています。

念のため書き添えておきますが、らくからちゃ さんのエントリーの趣旨が、正規雇用労働者も非正規雇用労働者も、同じ労働者として手を携えて、共通の問題の解決にあたろうということであれば、それに異を唱えるつもりはありません。

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*1:タイプミスにつき訂正しました。NAPORIN さんご指摘ありがとうございます