ミニレビュー
LEDの色変化でわかりやすい! シンワ測定の光学式デジタルCO2濃度計
2024年6月29日 09:30
室内の二酸化炭素(CO2)濃度を測定するCO2チェッカーは、部屋の換気を行なうべきタイミングを把握するためのツールとして、コロナ禍以降、その存在感を増しています。2021年には経済産業省から機器選定のガイドラインが示されたこともあり、それまで流通していた低品質の製品の多くは淘汰され、かつてより選びやすい状況になっています。
今回紹介するのは、そんなCO2チェッカーの中でも新顔にあたり、上記のガイドラインにも準拠した、シンワ測定の光学式デジタルCO2濃度計「78977」です。今回は本製品を、国内で販売されている個人向けのCO2チェッカーの中では売れ筋のひとつと考えられる、カスタム社の「CO2-mini」と比較しつつ紹介します。
過去24時間のCO2濃度の推移をグラフで表示可能
本製品は、卓上に設置して利用するCO2チェッカーです。バッテリーは内蔵しておらず、USBからの給電によって動作します。同梱品は本体、ケーブル、取説のみとシンプルです。
本体の液晶画面にCO2濃度(単位:ppm)が表示されるのは、一般的なCO2チェッカーと同様ですが、本製品はリアルタイムの値を表示するだけでなく、過去24時間の推移をグラフ化して表示できるのが特徴です。
これを見れば、前日からこれまでのCO2濃度の推移が一目瞭然ですので、例えば昼間に室内に人がいる時はCO2濃度が上がり、退室したら減少するといった、傾向を把握しやすくなります。換気の計画も立てやすくなるでしょう。ちなみにCO2濃度の測定は2秒ごとに行なわれ、液晶画面では30秒間隔で更新されます。
実のところ、このグラフ表示は想像以上に有益です。例えば、窓を開けようにも事情があって開けられない場合、部屋の扉を開けたり、エアコンや扇風機をオンにすることで多少はCO2濃度が改善されるのかといった、リアルタイムで見ているだけではなかなか分からないデータも、グラフでの推移を見ればひとめで分かるからです。
CO2濃度は最大9,999ppmまで対応するなど、表示レンジはかなり広め。カスタム社の「CO2-mini」が3,000ppmまでしか表示できないのとは好対照です。またCO2濃度だけでなく、温度や湿度、時刻も同時に表示できますので、デスクトップ上のコンパニオンとして活躍してくれます。
LEDの色の変化でCO2濃度を「警告」
さて本製品は、CO2濃度の変化に連動して、液晶のバックライトの色が変化するギミックを備えています。この色分けの分かりやすさこそが、本製品の最大の特徴と言っていいでしょう。
モードは大きく分けて2つ。ひとつはCO2濃度に応じて、バックライトの色が緑、黄、赤と変化する「AUTO」モードです。具体的には、1,000ppm以下は緑、それを超えると黄色になり、さらに2,000ppmも超えると赤へと変化します。
色の意味は信号とおおむね同じで、黄は要注意、赤は至急の換気が必要ということになります。冒頭で紹介したCO2チェッカー「CO2-mini」は、小さなLEDひとつだけでしかステータスを表示できないのに対して、本製品の液晶画面はサイズも大きいため、遠くから見た時の分かりやすさは抜群です。
もうひとつは、ふだんはバックライトは消灯しており、CO2が基準値を超えた時だけバックライトが赤く点灯して知らせてくれる「AL」モードです。換気が必要になった時だけ点灯するので、色とは関係なく点灯=要換気と判断できます。
またCO2の基準値は、デフォルトでは1,400ppmに設定されていますが、400~3,000ppmの範囲で任意の値へと変更できるので、1,400ppmではやや条件が緩すぎるようならば、1,000ppmに変更したり、あるいはさらに厳しい800ppmに切り替えることも可能です。ネックなのは、バックライトが消灯した状態だと、値がやや見づらいことでしょうか。
ちなみに筆者は、就寝時にバックライトが眩しいという理由で、購入後しばらくは換気が必要な時だけバックライトが点灯する「AL」モードを使っていたのですが、ECO設定なる機能を使うことによって22~6時はバックライトの照度を下げられることが分かったため、現在はこの設定を有効にした上で、前者の「AUTO」モードを使っています。
ただしこちらは22~6時という時間帯は固定されており変更できないこと、またバックライト自体は色や照度は別にして常時点灯したままなので、換気のタイミングを知るには「AL」モードのほうがふさわしい気はします。このあたりは帯に短し襷に長しで、ユーザーの好みが出る部分と言えそうです。
CO2濃度の基準値がなぜか2種類ある理由とは
さて、本製品の仕様のうち把握しておきたいのが、これらバックライトの色と、画面左側に表示されるグラフにおけるCO2の基準値は、必ずしも連動していないことです。
具体的には、バックライトは緑色から黄色に変わる第1段階が1,000ppm、さらに赤色に変わる第2段階が2,000ppmであるのに対して(AUTOモード時)、画面上のグラフは第1段階が800ppm、第2段階が1,400ppmで固定されています。つまり2種類の基準があることになります。
現在、この手のCO2チェッカーでは、800ppmを第1段階の基準としている製品も存在しますが(冒頭で紹介した「CO2-mini」もそのひとつです)、800ppmというのは人がこもっている室内ではすぐに超えてしまう値で、これを基準とするのはややシビアすぎる印象があります。
その点、1,000ppmを基準とするのは現実的な解と言えます。というのも厚生労働省の建築物環境衛生管理基準における室内のCO2濃度の基準値が、ほかならぬ1,000ppmだからです。こちらのほうが桁がちょうど変わるので分かりやすいという理由もあり、より目立つバックライトの色で1,000ppmを基準としているのは、仕様として正しいように感じます。
ちなみにバックライトの色でステータスを表示するもうひとつの「AL」モードでは第1段階がなく、第2段階が1400ppmに設定されていますが、こちらは値を100ppm刻みで自由に変更できますので、手動で800ppmや1,000ppmに切り替えることもできます。すでに別のCO2チェッカーを導入済みの場合、そちらの基準に合わせることができて重宝します。
まあ元はと言えば、グラフ側の基準値は液晶画面上の固定表示であって切り替えられないという仕様上の制約が大きいのでしょうが、ともあれユーザーの側もそうした設計上の事情(一部は筆者の推測混じりですが)を知っておいたほうが、正確な理解につながるように思います。
測定値も正確、幅広くおすすめできる製品
最後に測定値の信頼性についてですが、前述のカスタム社の製品と比べた限り、精度はかなり高いようです。CO2チェッカーの中には、たとえ補正機能を備えていても根本的に測定値がおかしく使い物にならない製品もありますが、本製品は1カ月近く使った限りでは疑問に思うような値もなく、用意されている補正機能の出番もまずなさそうです。
しばらく使っていてやや気になったのは、本体が軽すぎて、ケーブルの反発力に負けて引きずられたり、ケーブルをちょっとねじっただけでうつ伏せに倒れてしまうケースがあることです。背面にはフックも用意されていますので、壁掛けでの設置も検討したほうがよいかもしれません。
また電池が内蔵されていないので当然なのですが、USBケーブルを一旦抜くと、内部に蓄積されたデータがリセットされ、グラフは最初から測定し直しになるほか、時刻やECO設定もやり直しになります。そのため設置場所を決めるにあたっては、一旦設置したらなるべく置き場所は変えないようにするのがベターです。
実売価格は1万円を切っており、冒頭で紹介した「CO2-mini」が9千円前後なのと比べるとほぼイーブンといったところ。PCやスマホと連動する機能はなく完全なスタンドアロンの製品ですが、そのぶん分かりやすさに特化しており、幅広くおすすめできる製品と言えそうです。