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葛西駅高架下の東京メトロ「地下鉄博物館」が面白い 20周年特別展も

東京メトロ(東京地下鉄株式会社)が2024年で発足20年を迎えました。それを記念して「地下鉄博物館」(ちかはく)では、2024年12月3日から特別展「東京メトロ 20年のあゆみ展」が開幕しました。ここでは特別展と常設展の様子をレポートします。

地下鉄博物館はメトロ文化財団が運営する博物館で、東京メトロなどの地下鉄に関する展示を行なっている施設です。東京メトロと言えば、去る10月23日に東証プライム市場に上場して話題になりました。株主優待の一つとして同館の無料招待券が含まれており、感心を持った人も多かったのではないでしょうか。

地下鉄博物館の入り口

鉄道関係の博物館だとさらに大規模な施設もありますが、この地下鉄博物館もしっかり見て回ると3~4時間はあっという間というボリュームがあります。入場料も大人220円、子供100円とリーズナブルなのでオススメです。

場所は東京メトロ東西線葛西駅高架下で、同駅が最寄り駅となっています。開館時間は10時~17時(入館は16時30分まで)。休館日は毎週月曜(祝日・振替休日となる場合、その翌日)および年末年始(12月30日~1月3日)です。

葛西駅のホームには広告も出ています

特別展「東京メトロ 20年のあゆみ展」

【展示会概要】
会場:地下鉄博物館 企画展示コーナー
会期:2024年12月3日~2025年3月9日
料金:無料(別途入館料が必要)

前身となる営団地下鉄(帝都高速度交通営団)が民営化し、東京メトロに変わったのは2004年4月1日。2024年で20周年になります。特別展ではこの20年間にフォーカスし、その時々で用意されたアイテムや解説のパネルで歴史を振り返る内容になっていました。

東京メトロは2024年12月現在、9路線195km、180駅を擁しており、1日当たり約652万人が利用する鉄道になってます。

特別展の開催期間は、2024年12月3日~2025年3月9日。入場料のみで見ることができます

展示アイテムは多くが本展のために集められたもので、一般の人が見られる機会としては貴重なものです。展示物は撮影も可能(一部撮影不可あり)となっています。

展示の様子

特別展の入り口には発足日にまつわる展示がありました。シンボルマークはそれまで親しまれてきた「Sマーク」からハートを模した「ハートM」(Mマーク)に切り替わりました。発足前後に新聞などに掲載されたビジュアルも出ていました。

東京メトロ発足でシンボルマークを一新しました
発足日に銀座線の車両に付けられたヘッドマークの実物

中に入るとまず目に入ってくるのは大きなハートMの看板(4面Mマーク標)。拡大模型かと思いきや実物だそうです。上野駅の出口を再現した台座の上に載せています。実際の看板をこの近さで見られるのは、他には無いのではとのこと。

近くで見ると巨大な東京メトロの看板

多数の解説パネルも展示されており、20年の歴史やトピックが詳しく解説されていました。副都心線の開業、丸ノ内線の車両でサインウェーブが復活、総合研修訓練センターの開設、東京メトロ初の新駅となる虎ノ門ヒルズ駅の開業などがありました。

詳細な年表も。20年で路線の延長のほか直通運転も広がりました
東京メトロ設立までの経緯もまとめてあります
東京メトロ誕生に関する当時の写真も
2004年当時の東京メトロ設立関連品。ハートMのプレートは車両に付いていたものです
東京メトロと営団の懐中時計。会場で背面も見るとそれぞれの刻印があります
駅での掲出用に作られた横断幕。展示品は配布された駅に掲出スペースが無く、未使用で保管されていたという貴重な一枚
発足を記念したパスネット(PASMO以前に使われていた磁気式の共通カード)も作られました。右は発足10周年の関連品で、記念切手も発行されました
本展のパンフレットは上の写真にある発足時の「Tokyoメトロニュース」にちなんで、上野のグラフィックや同様の体裁が採用されています

東京メトロが発足してから新たに開業した路線は2008年6月開業の副都心線のみとなります。その開業時のテープカット用ハサミなどのほか、列車の形をした非売品の弁当箱も見ることができます。

副都心線開業の関連品
現在の制服も間近で見られます
大手町駅を再現したフォトスポット。この出口(B5)は現在では少なくなった丸形の看板が実際にある場所だそうです

2024年5月11日と12日に行なわれた東西線南砂町駅改良工事で実際に使われたスタフとスタフキャリアも初めて展示が実現しました。

工事に伴って、西葛西駅~葛西駅間の複線区間で片方の線路のみを使用して列車が往復する運行が行なわれ、その際にスタフが使われました。いずれも今回の運行のために新しく作ったもので、新しめのスタフやキャリアを見るのは新鮮なものです。

スタフとスタフキャリア
スタフ
「スタフ閉そく式による単線運転」の解説
こちらは銀座線リニューアルの関連品
虎ノ門ヒルズ駅開業や東京メトロ20周年を記念したアイテムも
1/20スケールと迫力のある半蔵門線18000系車両の模型。常設展示には無く、東京メトロ本社にあるもの移動しての公開となりました

東京メトロの株式上場は知名度と大型案件ということで注目を集めました。その上場に関する展示もあり、上場通知書や小槌も飾ってありました。

上場通知書
上場セレモニーで「立会開始の鐘」を打ち鳴らした小槌
例年話題になる干支シリーズの「駆け込み乗車防止ポスター」。来年の“巳”デザインも制作中とのこと
特別展の壁の外側には10周年の法被や山田武雄氏による絵画も展示してありました
トークライブが予定されているほか、ランダムでシールがもらえるアンケートが実施されていました
筆者が当てたのは全3種類のうち営団地下鉄のSマークで、一番レアな種類だそうです。背景色は各路線のカラーですが、営団時代に無かった副都心線の色は含まれていないというこだわりです

常設展も珍しい展示がずらり

特別展の内容を見てきましたが、ここからは常設展の一部を紹介します。常設展は7つのテーマに分かれた構成になっており、実際に操作したりできる体験型の展示も多くあります。

入館券の売り場。PASMOなどでも購入できます
1/20スケールの大きな車両模型が出迎えてくれます
入館券は自動改札機に通して入ります。このタイプは今ではほとんど見なくなりました。右奥に営団線の券売機があります
集改札ボックスの実物。この位置から見ると、後のポスターが当時使われていた切符と改札鋏になっています
順路は「地下鉄の歴史」からスタート
地下鉄開業時の資料が並びます

進んで行くと、日本初の地下鉄開業に大きな貢献を果たし“地下鉄の父”と呼ばれる早川徳次(のりつぐ)氏の像がありました。同じ表記で早川徳次(とくじ)氏と読むと現シャープの創業者が有名。鉄道なので「乗り継ぐ→のりつぐ」と憶えるとよいと学芸員が話してくれました。

早川徳次像。銀座駅のコンコースにも同じ早川氏の像があります
営団地下鉄や東京メトロのマークに関するパネル
丸ノ内線301号車。現在の丸ノ内線車両にも見られる「サインウェーブ」がデザインされています。当時、鮮やかなカラーは珍しかったそうです
丸ノ内線301号車は内部に入れます
日本初の地下鉄で使われていた自動改札機。通過を体験できます(コインは戻る)
地下鉄博物館の目玉展示となっている日本初の地下鉄車両「1001号車」。現在の銀座線で活躍しました
1001号車は国の重要文化財に指定されており、イベント時などを除いて通常は内部には入れません
使わないときにつり手が傾く「リコ式」は車内を広く見せる効果もあったそうです。間接照明なのもしゃれています
1001号車のホームは1927年の開業当時の上野駅を再現した作りになっており、壁のスクラッチタイルは実際に上野駅で使われていたものです
地下鉄の年表。各路線の開業時期がわかりやすい構成です
かつて使われていたアイテムも多数ありました。こちらは昔の切符や改札鋏
運転士の関係品。開業当時からのものも
駅で使われていたアイテム。右奥はダッチングマシンとして知られる日付印字機
開通時の記念乗車券コーナー。下は各種の企画乗車券です

続いては「地下鉄をつくる」のエリア。トンネルの作り方などが解説されています。ミニチュア模型が充実していて見応えがあります。

地上から掘り下げていく開削工法の説明
開削工法で出土したナウマン象の骨もありました
シールドマシンで掘り進めるシールド工法。シールドマシンのうしろにも設備が連なった大がかりな装置です
展示されているシールドマシンのカッターディスクは副都心線の工事で使われた実物
御茶ノ水駅周辺の地上と地下。丸ノ内線と千代田線が地下で交差している様子がわかります

「地下鉄をまもる」のエリアでは指令所の仕組みやシールドトンネルを見ることができます。

運行の心臓部である総合指令所の仕組みを解説
指令体験コーナー。大人でも結構難しいとのことで、ぜひチャレンジしてみては
シールドトンネルのコーナー。信号の切り換え操作もできます
電気設備の保守に使われていた軌道モーターカー。ほかに保線関係のアイテムも展示がありました

さらに「地下鉄車両のしくみ」エリアではモーターやパンタグラフ、台車といったパーツが展示されています。

パンタグラフは展開操作が可能。トンネル内では低い位置で使われるそうです
2017年まで運転していた銀座線01系車両の先頭部分。運転席に入れるのでフォトスポットにもなっています

「地下鉄プレイランド」は運転シミュレーターや鉄道模型を楽しめるエリアとなっています。シミュレーターは追加料金無しで体験できます。また、シミュレーター体験時は運行に関わった経験のあるスタッフがサポートしてくれるとのこと。

千代田線の運転シミュレーター。揺れも再現した本格的なタイプで小学生以上が体験できます
他にも全年齢で体験可能なシミュレーターが3台設置してあります
東京メトロ線を再現したジオラマの「メトロパノラマ」も人気の展示
メトロパノラマが動くのは11時、13時、14時、15時30分の1日4回

鉄道関係のガチャやグッズも充実

地下鉄博物館では、展示以外にも映画の上映やグッズの販売などがあります。また、プレゼント付きの館内スタンプラリーも行なわれています。

併設のホールでは、地下鉄建設に関する映画を土日祝日に上映しています
休憩コーナーには鉄道関係のガチャがたくさん!
「東京メトロ ライトマスコット」が第3弾まで揃っていました
地下鉄博物館限定のプリントシール機も
ミュージアムショップもぜひ立ち寄りたいところ
店内にはメトログッズが並びます
ショップで一番人気というのが「探検スタンプノート」。スタンプを集めると日替わりでプレゼントがもらえます
路線ごとの記念スタンプコーナー
時期的におすすめというのが2025年のカレンダー。そして隣のTシャツは博物館オリジナルです
車両をデザインしたオリジナルキャップ
こちらもオリジナルとなる巾着
東京メトロの銘板キーホルダーとネックストラップは20周年記念のグッズ
今年登場したオリジナル絵本を作れるサービスのギフトカードも販売していました

都心の大手町駅から地下鉄で18分ほどの場所にこれだけの博物館があるのはなかなか貴重なのではないでしょうか。初めて訪れると、思った以上の規模に驚くと思います。子供連れでも楽しめる工夫が多いのも良いところでしょう。今回の特別展を機に一度訪れてみてはいかがでしょうか。

なお、博物館を出る際に「メトポ」(メトロポイントクラブ)の会員証を見せるとオリジナルノートがもらえる特典もありますので、まだの人はメトポに登録してから行くと良いでしょう。

メトポの特典でもらえるノート。1001号車のほか、同館のキャラクター「まるちゃん」(上)と「ぎんちゃん」(下)のデザインです(2024.12月現在)

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。