【プロレス大賞:殊勲賞】殊勲賞は並み居るエース級を押しのけ、新日本プロレスの石井智宏(38=新日本プロレス)が初受賞した。2月にNEVER無差別級王座を奪取。5月の飯伏幸太戦はベストバウト候補にも挙がる充実ぶり。ファンの支持は絶大なものがあり、新日マットになくてはならない存在だ。

 選考委員会ではノアのエース・丸藤正道との決選投票を1票差で上回った。内館牧子特別選考委員からは引退した鉄人・小橋建太の後継者に指名され、他の選考委員からも「どこへ行っても手を抜かない」「明日死んでしまうかもしれない」などと全身全霊ファイトに称賛の声が相次いだ。

 受賞を受け、本紙が取材に向かうと石井は横浜にある、なかがわにし鍼灸接骨院で治療中だった。突貫ファイトの代償で巡業後は治療を欠かさないほど体はボロボロ。他のレスラーからは「このスタイルでは長くない」「体もたないよ」と言われることも増えた。実はドクターストップもかかっているが、石井は「関係ないですよ。それが俺が見た昔のレスラーのすごさ。このスタイルで短いレスラー人生が終わっても何の後悔もない」と平然と言い放った。

 根底にあるのは天龍源一郎、長州力の遺伝子。「20年前、俺ぐらいの身長といえば、ほぼレスラーがいない時代だった。それを拾ってくれた天龍さん。さらに何ステップも上に上げてくれた長州さんですかね。この2人の教えがなかったら今の俺はいない」。数少ない昭和プロレスの体現者は「俺がいつも心がけていることが評価されたことに関しては素直に受け止めたい」と表情を緩ませつつも、これで満足しない。「一番興味あるのはベストバウトだからね」と目を光らせた。