【プロレス大賞:特別選考委員・内館牧子氏の目】今年のMVPには柴田勝頼を挙げました。彼を見ていると「いいプロレスを見たなあ」と思えるのね。1・4ドームの試合も素晴らしかった。レスラーとして揺るぎない精神、殺気立つものを見せてくれる。その存在にMVPをあげたいなと思いました。

 ベストバウトは石井智宏VS飯伏幸太(新日本5月25日横浜アリーナ)。これは誰が見ても文句なし。石井の面白さもあるし、飯伏は飛ぶし、縦横無尽よね。私は、飯伏は「プロレス界のダルビッシュ」だと思ってます。

 石井、宮本裕向、田中将斗の3人を、殊勲、敢闘、技能の三賞に挙げました。石井は若い女の子にキャーキャー言われるタイプでは決してないけど、プロレスを見たことのある人なら誰もがすごいと思える。天龍イズムの継承者は彼で、もっと評価されてもいいしMVPでもいいんじゃない。

 宮本は決してジャニーズ顔じゃないけど戦う男の華がある。デスマッチで伊東(竜二)に勝ったこともすごいこと。田中はあらゆる団体であらゆるスタイルをやっていて、プロレス啓蒙に努めている姿勢が素晴らしい。柴田、石井、宮本、田中の4人を見てたら、逸ノ城が立ち合いで変化してる場合じゃないわ。

 タッグは杉浦、田中組と迷いましたが、宮本、木高イサミ組。お仕着せのタッグに見えないところがいいわよね。

 それから新人賞は限られたレスラー人生で一度しかもらえない賞。今は弱くても将来プロレス界を背負っていくような人か、もしくは少なくとも逸ノ城のように「今年跳ねた」存在であってほしい。そういった部分を見せてくれた人材は幾人かは散見できたけど、これぞという該当者はなしという判断にしました。今後を楽しみにしています。(内館牧子=脚本家)