【山口敏太郎オカルト評論家のUMA図鑑#246】昔から“地球内部は空洞である”“地底には地底人たちが理想郷を作っている”という説がある。大部分が昔話や民話であったり、妄想や創作の類いであったりするのだが、中には事実として語られている話も存在している。

 有名なエピソードが作家レイモンド・バーナードが1969年に出版した「空洞地球——史上最大の地埋学的発見」で紹介した米軍人であり探検家のリチャード・バード少将の体験談だ。

 バード少将が1947年に実施した南極上空の探検飛行中に、大きな穴の中へ迷いこみ、氷ではなく緑豊かな谷間を発見し、走るマンモスらしき生物を見たというエピソードが紹介されている。地球の内側には巨大な空間が空いており、もう一つの世界が存在していたというのだ。

 この話には続きがあり、後に米国でバード少将の子孫の協力により発見されたと言われている“マンモス目撃事件”以降の事実が書かれた日記が発見されている。

 そこに書かれていた内容は奇想天外なもので、バード少将はさらにハーケンクロイツのマークが描かれた飛行機に遭遇し、ドイツなまりの英語で誘導してくる管制塔も見た。さらに地底人たちと会うことに成功したというのだ。

 この「地底世界に住む巨人」は人間に比べて非常に大きく、まさに巨人ともいうべき姿だったという。地底人は金髪で落ち着いた様子の人々であり、戦争を続ける地上の人々に警告を伝えてほしいと、バード少将に告げたそうだ。

 なお、世界中でいまだにささやかれている都市伝説として、ナチスドイツが第2次世界大戦の敗戦を見越して南極に逃げていた、というものがある。この都市伝説に「ナチスドイツがUFOを開発していた」という噂とバード少将の「南極には地底に続く穴が開いている」という話が合体して、バード少将の地底世界のエピソードが膨らまされたのではないかと見られている。

 だが、地底世界に住む巨人を目撃した人物は他にも存在している。米作家W・G・エマーソンは、ノルウェー人の漁師オラフ・ヤンセンという老人から聞いた奇妙な話を、小説「スモーキー・ゴッド」(1908年)としてまとめて発表している。オラフ・ヤンセンと父親は1829年、小さな漁船に航海に出たのだが、暴風雨に巻き込まれ、煙がかった赤い太陽(スモーキー・ゴッド)を神とあがめる地下世界に迷い込んでしまう。

 ヤンセン父子は、その世界で身長が4メートルもある巨人たちと出会う。基本、巨人たちは彼ら父子に親切で、進んだ文明生活を享受しており、平均寿命は800歳に達するというのだ。さらに、聖書に描かれたエデンの園のモデルと思える「エデン」という町に案内され地下世界の王に謁見する。

 親子は数年間滞在し、元の世界に帰るとき、多くの金塊をもらったが、帰路で父は死亡し、金塊も沈没。生き残った自分も狂人扱いされ、死に際に出会った作家W・G・エマーソンに自分の体験を語ったというのが、筋書きである。

 やはり、地底人はいるのであろうか。正直、筆者は地底には人はいないと思う。地底人がいるとしたら地球の局地に時空のひずみが存在していて、そこから行くことのできる異世界・異次元の住民だったのではないだろうか。