中期経営計画に「Plan for Fulfilled Growth」を掲げ、「幸せな成長」のために社会的価値の創造に取り組むSMBCグループでは、社会課題解決のためのコミュニティー「GREEN×GLOBE Partners(GGP)」を立ち上げ、2023年9月からは社会的価値の創造を目指す企業や組織を支援する「GGP Edge Program」をスタートさせた。これらの取り組みを通してどのようなことを実現しようとしているのか。三井住友銀行 サステナブルソリューション部の大湊和貴氏と同プロジェクトを支援する日本総合研究所(日本総研)創発戦略センターの木村智行氏に、フリーアナウンサーの宇賀なつみ氏が話を聞いた。
※本記事は2024年8月30日に日経電子版広告特集で公開されたものです。掲載内容は公開当初のものであり、最新情報と異なる場合があります。
宇賀 SMBCグループはパートナー企業・団体の社会的価値創造を支援しています。どのような相談が寄せられているのでしょうか。
大湊 現在、GGPは社会的価値創造本部が運営しており、事務局には社会課題解決に向けた取り組みについてさまざまな相談が寄せられています。
例えば「生鮮流通に新しい循環を」をビジョンに掲げ、2022年に東証グロース市場に上場しているフーディソンは飲食店向け生鮮品のECサイトを運営しており、常に社会的価値を認識して事業に取り組んでいます。それをステークホルダーに伝えるために「どう言語化すればいいか」など外部からインプットを得たいという相談でした。
そこでGGP Edge Programで社会的価値を論理的に経済的価値に結びつけるロジックモデルにフォーカスし、経営者や事業責任者、担当者など異なる立場の人たちに参加していただきました。また、大学の先生方とのフリーディスカッションも経てロジックモデルをアップデートしていきました。
宇賀 GGPはどのような経緯でスタートしたのでしょうか。
木村 4年前にサステナビリティ推進の事業者のコミュニティーとして立ち上げ、日本総研が持つ知見を生かして支援してきました。スタート時点では約30社が集まり、気候変動対応等を中心として1社ではできない社会的な課題の解決を目指す仲間づくりの場として立ち上げました。
当初は勉強や情報収集のために参加した企業・団体が多かったのですが、最近ではそれぞれのテーマに対して「誰とどう進めるか」という議論も盛んになっています。年々参加パートナーが増え、現在は1700社超になっています。
大湊 大企業だけでなく、ベンチャー企業や中堅・中小企業も多く参加していただいています。最近は自治体や省庁も増えてきました。
宇賀 GGPではどのような活動が行われているのでしょうか。
大湊 企業や団体によってモチベーションはさまざまです。それに応えるために「情報発信」「ネットワーキング」「プロジェクト共創支援」の3つのステップで社会的価値創造につなげていこうとしています。ワークショップを通して異業種の交流も広がっています。
2023年9月からスタートしたGGP Edge Programは3つ目のプロジェクト共創支援に位置付けられるもので、それまでのプロジェクト支援の活動を本格化していく中で構想された公募プログラムです。数を絞って重点的に伴走型支援を実施し、モデル事業として得られた知見を情報発信することで、よりインパクトの大きな動きにつなげるのが狙いです。
木村 GGP Edge Programでは、具体性、先見性、先駆性という3つの選定軸を設けています。特に重視しているのがより大きなインパクトにつながるかという「先見性」と、黎明(れいめい)期の市場にいち早く参入しているかという「先駆性」です。京都大学 経営管理大学院の山田仁一郎教授と日本総研 創発戦略センター チーフスペシャリストの村上芽が選考にあたり、昨年は10社の応募から3社を選定しました。
宇賀 なぜSMBCグループは企業の社会的価値創造を支援しているのでしょうか。
大湊 SMBCグループは中期経営計画で「『幸せな成長』への貢献」をキーワードに掲げています。社会のために行動を起こす事業者を応援しながら、中長期的には経済的価値も享受するという社会的・経済的価値の両輪が大切です。GGP Edge Programはその代表的な取り組みの1つです。
木村 これまでGGPではコミュニティーづくりに注力してきました。コミュニティーはアクションの土台であり、GGP Edge Programはより直接的に社会的価値の創造を支援するものです。こうした事業が次々と起こることで多くの社会課題が解決されていくようになります。
宇賀 社会的価値と経済的価値は一見すると両立しづらいように感じます。やり方次第では両立できるものなのでしょうか。
木村 トレードオフの関係にあると考えがちですが、そうではありません。確かにこれまではCSR(企業の社会的責任)のように社会的価値を本業と切り離して別物として取り組んできたケースが多かったのですが、今求められているのは本業を通して社会的価値を追求していくことです。
GGP Edge Programで整備を支援しているロジックモデルは、社会的価値がいかに経済的価値につながるのかということを論理的な構造で整理するものです。例えば水を資源とする事業を展開している企業は水を大切にし、いかに長く活用できるかを循環モデルとして考えています。ロジックモデルによってそれがわかりやすく伝えられるようになります。
宇賀 ここ数年で社会的価値に目を向けるように価値観は変わってきているのは確かですね。ただ、社会的価値にフォーカスした支援はあまり聞いたことがありませんでした。
木村 企業としては他にあまり例がないと思います。昨今の起業家や2代目社長の方たちは社会課題解決を組み込んだ事業構想からスタートしているケースが増えてはきていますが、基本的に資本市場から求められるのは財務的価値とその成長です。
金融グループとしてさまざまな財務的なサポートができるからこそ、まずはその前提となる社会的価値にフォーカスした支援の仕組みを提供することが、多くの事業者にポジティブに受け止めてもらえているのではないかと考えています。
大湊 取り組みを始めたのが早かったこともあり、GGPは幅の広いコミュニティーになりました。
宇賀 今後の展開としてはどのようなことが予定されているのでしょうか。
大湊 GGPとしてはこれからも情報発信やイベントに継続的に取り組んでいきます。2024年下期にはサーキュラーエコノミー(循環経済/循環型経済)や生物多様性×デザイン思考などのテーマで月1回のペースでイベントを考えています。
2024年度のGGP Edge Programは7月3日に募集を開始しました。資料請求をいただいた企業には日本総研によるロジックモデル作成ワークショップに任意でご参加いただけます。年内に交流会を兼ねた最終選考会を行い、年明けから本格的に有識者の個別相談会や記事作成などサポートを開始していく予定です。
木村 昨年度、ロジックモデルは、各企業で作成・提出して、選出企業にブラッシュアップの機会を提供しました。今年は応募段階から支援するためにワークショップを提供することにしました。
ロジックモデルで成果を上げるために大事なのは、さまざまな方々に参加していただくことです。経営から現場担当者までが一緒に作成に取り組むことにより、異なる視点から見直すことができ、見えなかったところが見えてきます。
宇賀 本業で社会課題を解決するというのはベンチャー企業だけではなく、既存企業でもできるということですね。
木村 経済的価値ではない価値の創出を考えることで、既存の事業の意義を見直すことができます。選定基準にもしている先見性や先駆性はイノベーションにつながるものです。多くの企業がよりイノベーティブになることは日本経済の活性化を促します。積極的な応募をお待ちしています。
2016年に三井住友銀行入行。法人営業を経て、2022年10月から現職。戦略企画グループにて、お客さまのサステナビリティ推進を軸にサステナブルビジネス全般の企画・管理、デジタルソリューションの企画・開発・推進に従事。
株式会社NTTデータを経て、株式会社三井住友フィナンシャルグループにてグループ全体のイノベーション推進に従事。株式会社日本総合研究所に出向し、先端技術(web3等)を活用した社会課題解決を専門とする。現在はニューロダイバーシティ推進のための新たな仕組みづくりを行う。
2009年立教大学社会学部を卒業し、テレビ朝日入社。入社当日に「報道ステーション」気象キャスターとしてデビューする。「グッド!モーニング」「羽鳥慎一モーニングショー」等、情報・バラエティ番組を幅広く担当。2019年に同局を退社しフリーランスとなる。現在はテレビ朝日系「池上彰のニュースそうだったのか!!」、カンテレ・フジテレビ系「土曜はナニする!?」のメインMCを担当。TBSラジオ「テンカイズ」やTOKYOFM「SUNDAY'SPOST」等のラジオパーソナリティにも挑戦している。