SMBCグループの中期経営計画「Plan for Fulfilled Growth」で、成長性を踏まえたグローバルポートフォリオの構築という観点から選定した重点戦略領域の一つが、アジア地域で中長期的に「第2、第3のSMBCグループ」を創るマルチフランチャイズ戦略だ。具体的にどのようなアプローチを行っているのか。同戦略の狙いや具体的な取り組みについて、フリーアナウンサーの宇賀なつみ氏が同事業を担当する2人のキーパーソンに話を聞いた。
※本記事は2024年2月19日に日経電子版広告特集で公開されたものです。掲載内容は公開当初のものであり、最新情報と異なる場合があります。
宇賀 中期経営計画では「質の伴った成長」を掲げています。グローバル事業部門は何を目指しているのでしょうか。また、アジア地域で目指すマルチフランチャイズ戦略とはどのようなものでしょうか。
内田 グローバル事業部門はSMBCグループの成長ドライバーとして3つの戦略のポイントを掲げています。一つは従来展開しているグローバルな大企業のお客さまにサービスを提供するグローバルビジネスの強化である「Transformation」、そしてアジアにおけるマルチフランチャイズ戦略の確立を始めとする成長ビジネス創出を目指す「Growth」、さらに「Quality builds Trust」、競争力のある経営事業基盤の強化です。
マルチフランチャイズ戦略が目指しているのは、成長著しいアジアの4カ国において「第2、第3のSMBCグループ」を創り出すことです。これまで海外ではホールセールがメインでしたが、買収や投資を通して伸び代の大きな中小企業やリテールもカバーし、そこにSMBCグループの人材やノウハウ、資金を投入することで、より高い成長を目指していきます。
宇賀 アジアの4カ国とはどこですか。また、なぜその4カ国に絞ったのでしょうか。
石川 金融業はGDPが大きくなるにつれてビジネスも大きくなっていくGDPビジネスです。経済規模、成長性、人口構成などを勘案し、インドネシア、インド、ベトナム、フィリピンの4カ国で展開する戦略をとりました。
宇賀 私が独立しようと考えるようになったのは、2018年6月にベトナムに旅行したときからです。ベトナムの自由な雰囲気に刺激されて生き方を変えようと思い、翌週から独立の準備を始めました。ベトナムは若い人が多く、活気にあふれている印象でした。
内田 ベトナムを含む4つの国で事情はそれぞれ異なりますが、共通しているのは金融のデジタル化が急速に進んでいて、政府もそれを後押ししていることです。金融サービスの利用者数が急増しており、キャッシュレス決済も一気に広がっています。日本のリテール金融の歩みとはまったく状況が違うので、非常に刺激的で新鮮です。
宇賀 SMBCグループとして意識しているのはどんなところでしょうか。
内田 長年にわたってSMBCグループの海外業務は大企業のお客さまを中心にビジネスを展開し、総合力を生かした高いソリューション提供力があります。そこに中小企業・リテールもカバーする投資先パートナーと協働することで、従来のお客さまのサプライチェーンや販売先、従業員などにも金融サービスの提供が可能となります。また、SMBCグループが投資先パートナーのサービスや経営基盤の強化を支援したり、お客さまを紹介したりすることで、各社のさらなる企業価値向上を実現することが出来ます。
石川 2013年にインドネシアで幅広い金融サービスを展開するBank BTPNに出資してから、これまで10年かけてマルチフランチャイズのプラットフォームを構築してきました。2021年にはインド、ベトナム、フィリピンへと矢継ぎ早に投資、買収出資活動を拡大し、2023年には中小企業やリテールを含むフルバンキング機能が整いました。
宇賀 投資先パートナーの金融機関にはどのような特徴があるのでしょうか。
石川 例えば、Bank BTPNでは2016年にオンラインで口座が開設できるデジタルバンキングサービス「Jenius」の提供を開始しました。残高照会や入出金明細の照会はもちろん、振り込みや公共料金の支払い、定期預金や個人ローン、家計簿機能やQRペイメントなどまでスマートフォンだけで行えるサービスです。
先駆け的な存在というだけでなく、各サービスのエッジが効いているところも特徴的です。例えば、振込先の銀行口座にニックネームをつけて利用することができます。口座番号を覚える必要がなく振り込みが完了するので便利です。
インドではSMFG India Credit Companyというノンバンクを買収しており、SMBC拠点が取引してきた大企業のお客さまの取引先が属する個人や小規模企業などのリテールセグメントのお客さまにファイナンスサービスを提供しています。マルチフランチャイズ戦略の投資先パートナーとのエコシステムを生かして、既存のお客さまが持つ商流の全てをカバーすることができるようになりました。
宇賀 「質の伴った成長」という面ではどのような貢献ができるのでしょうか。
内田 質の伴った成長には、経済的価値の追求と社会的価値の創造の両面が重要です。経済的価値の追求としては、2028年に投資先パートナーからのSMBCグループ連結利益貢献で900億円を超えるという目標があります。これには、アジアの高い成長を取り込み、SMBCグループが投資先パートナーの更なる成長を後押しすることで達成可能だと考えています。
社会的価値の創造としては、投資先パートナー各社の意義ある取り組みが挙げられます。例えばインドネシアでは貧困や格差を解消する金融サービスとして「BTPN Syariah(シャリア)」という子会社がマイクロファイナンスを展開しています。またインドでもSMFG India Credit Companyが同様のビジネスを展開しています。
こうした投資先パートナーと一緒にユニークな金融サービスを提供することで、全ての人々に経済活動のチャンスを提供する金融包摂を実現することができるのです。
石川 シナジーという意味では、投資先パートナー各社同士の連携を深めることで、新たな価値が生み出せると考えています。その一つとして開催しているのが「Asia Partners Executive Summit(APExS)」です。
4カ国の主要出資先のCEOを日本に招致し、SMBCグループと各社間全体のシナジーを創出する場として開催しています。成功事例の共有のセッションやビジネスミーティングなどの幅広いプラクティスを通して、連帯意識を高めるとともに連携の道を探ります。
業種や出資比率、マーケットなどは違いますが、デジタルの活用、エコシステムの拡大、資金の回収方法など共通する課題もあり、それを一堂に介して議論することで、経済的価値と社会的価値の両方に貢献することができます。
そして、私たちも「Driving Asia’s growth together.」という共通の思いをもって、同じ目線でビジネスをリードできるよう頑張っています。
宇賀 アジアでの事業モデルから参考になる点もあるのではないでしょうか。
内田 クレジットカードを飛び越してQRペイメントが広がるなど、日本よりもキャッシュレス化が進んでいる国もあります。それをクロスボーダー送金にも適用しようという動きがあり、従来の国際金融取引のネットワークであるSWIFT(スイフト)等に拘らない方法として普及する可能性もあります。
また、インドネシア・インドの投資先パートナーが手掛けているマイクロファイナンスは、日本には事実上存在しませんが、今後格差が広がっていくことを考えると、学ぶものもあるかと思います。
石川 個人向けの取引がデジタルから始まっているので、支店のつくりが数年前の日本の支店とはまったく違っていました。当時から書類はデジタル化され、保管スペースや処理スペースが不要なため、バックヤードの事務スペースがなく、コンパクトにつくられていました。日本でも取り入れられるところがあると思っています。
宇賀 グローバル事業を成功させるためのポイントとしてはどんなことが挙げられるのでしょうか。
内田 まず重要なのは、長期的な視点に立つことです。長期にコミットしなければ成果には結びつかないでしょう。それに加えて必要なのがローカリティーの重視です。ローカル市場では国の特性を尊重したビジネス展開が重要になります。
伸び代のある中小企業やリテールのお客さまを取り込んでいくためにも、長期的な視点に立って、グローバルスタンダードを意識しつつも、国ごとのローカリティーを尊重した事業展開を心がけ、アジアの成長にも貢献していきたいと考えています。
1990年に住友銀行(現三井住友銀行)入行。長年にわたり東京・香港・シンガポールにて国内外のコーポレートファイナンスやプロジェクトファイナンス等の業務に従事。2014年より8年間ロンドンに勤務、2020年に常務執行役員・欧阿中東本部副本部長に就任。2022年4月より現職のアジア事業部戦略本部長 兼 アジア・大洋州本部副本部長に就任。
2014年に三井住友銀行入行。リテール企画部、新興国戦略本部(シンガポール)、事業開発部を経て2022年4月より現職。インドネシアやベトナムにおける合併、出資、PMI業務に従事。
2009年立教大学社会学部を卒業し、テレビ朝日入社。入社当日に「報道ステーション」気象キャスターとしてデビューする。「グッド!モーニング」「羽鳥慎一モーニングショー」等、情報・バラエティ番組を幅広く担当。2019年に同局を退社しフリーランスとなる。現在はテレビ朝日系「池上彰のニュースそうだったのか!!」、カンテレ・フジテレビ系「土曜はナニする!?」のメインMCを担当。TBSラジオ「テンカイズ」やTOKYOFM「SUNDAY'S POST」等のラジオパーソナリティにも挑戦している。