第二次大戦中に旧日本軍「731部隊」所属の軍医将校がまとめた論文は人体実験を基にしていた疑いがあるとして、研究者らでつくる会が将校に学位を授与した京都大に検証を求める方針を表明した。研究者らは、サルを使って実験を行ったとする論文の不自然さを指摘。検証結果次第では学位授与の取り消し要請も辞さない構えだ。成り行きが注目されるが、戦後70年あまりが経過した中で真実は見えてくるのか。
動物園の飼育担当者も「?」
「人体実験が事実なら、速やかに学位授与を取り消すべきだ」
「満州第731部隊軍医将校の学位授与の検証を京大に求める会」のメンバーで滋賀医科大名誉教授の西山勝夫氏らは訴える。
同会によると、論文はサルを使ってノミの一種「イヌノミ」によるペストの媒介能力を研究した内容。昭和20年5月31日付で京都帝大(現京大)に提出された。筆者の軍医将校は直後に事故死したとされるが、大学は終戦後の同年9月に文部相(当時)の認可を受けて医学博士の学位授与を決定した。
論文では、計9頭のサルにイヌノミをつけて研究。サルの様子について、「付着後6~8日に頭痛、高熱、食思不振を訴えた」「『39度以上』の発熱が5日間続き、発症から6日目に死亡した」などの記述がある。
しかし同会は、サルが人に頭痛を訴えるのは不自然▽39度の体温は、サルにとっては高熱とは言いにくい▽サルの分類学上の記載がない-などの点から、論文の内容に疑問を呈している。「サルが頭痛を訴えるだろうか」。西山氏らは、実験対象が実際にはサルではなく人間だったのではないかと疑念を向けている。