松本、地下鉄両サリン事件などに関わった元オウム真理教幹部、中川智正死刑囚(55)と面会を重ねてきた台湾出身で米国在住の化学者、杜祖健(と・そけん)氏(87)が産経新聞のインタビューに応じた。杜氏は中川死刑囚との面会時の様子を語るとともに、日本統治下の台湾で医学博士となった父が、「中華民国初代大総統の袁世凱(えん・せいがい)(1859~1916年)の暗殺を企てたことがある」と激動のアジア近代史に関する秘話も明かした。(吉村剛史)
大阪と広島で中川死刑囚と面会
「(元教祖の麻原彰晃(しょうこう)死刑囚について)彼はずっと『麻原氏』と呼んできたのに、初めて『麻原』と呼び捨てにした」
中川死刑囚と3月13日に東京拘置所で面会した杜祖健氏(英語名、アンソニー・トゥー)は、そのときの様子をこう振り返った。
毒物研究の世界的権威である杜氏は米コロラド州立大名誉教授、順天堂大客員教授を務める。オウム真理教が関わった一連の事件では、かつて同教団が拠点とした山梨県の旧上九一色村の土壌から検出されたサリン分解物の検出などで警察の捜査に協力。平成21(2009)年に旭日中綬章を受章している。
23(2011)年以降、研究目的の特例許可による面会を重ね、面会は「今回で14回目」。話は常に事件のことが中心で、これまでに猛毒のVXガス事件の実行グループだった中川死刑囚と連名でVXによる殺人に関する学術論文もまとめた。