シリアなどから記録的な難民・移民の流出が続く。そんななか南米の小国ウルグアイに受け入れられたシリア難民が、出国を求めて抗議行動に出る騒ぎになっている。食べていける仕事がないと将来を悲観したためだが、地元民からは「もうたくさんだ」といった声も。清貧な人柄で知られた前大統領が受け入れを決めたが、温情が徒(あだ)となった小国に困惑が広がっている。
(坂本英彰)
「1500ドルは稼げると…」
「レバノンに戻ったっていいんだ」
ウルグアイの首都モンテビデオの大統領府近くで9月はじめ、シリア難民の男性、アンドリース・マヘルさん(36)は報道陣に、憤懣(ふんまん)やるかたないという調子でまくしたてた。ロイター通信などによると、マヘルさんはレバノンの難民キャンプに避難していたところ、昨年10月、ウルグアイに家族とともに難民として受け入れられた。
ところが来てみて、描いていた夢はすっかり打ち砕かれたという。
「安心して暮らせる場所が必要なんだ。来る前に大使館は月に1500ドルは稼げると話していたのに、家族を養えるような仕事は全く見つからない」
マヘルさんは8月、「国外脱出」も試みた。欧州に向かうためにトルコのイスタンブールに飛んだが、空港で足止めをくらった。パスポートやビザなど入国に有効な書類がなかったからだ。約20日間にわたり空港で居座り続けたが結局、あきらめてウルグアイに戻ってきたという。