阪神大震災で救助活動を繰り広げた神戸市消防局員らの体験談をベースにした舞台「ORANGE(オレンジ)」が上演される。救えない命に直面する消防士の苦悩を通じて命の大切さを描いており、31日の大阪公演からスタート、東日本大震災の被災地など全国各地を回る予定だ。19日にはMBS系でテレビドラマ(上川隆也・杉本哲太・小池栄子さんら出演)も放映。舞台ではお笑いタレントの「キム兄」こと木村祐一さんが出演する。劇団代表の宇田学さん(37)は「東北の被災地も神戸のように必ず復興できると伝えたい」と意気込む。阪神大震災から20年。被災地で「生と死」に揺れた消防士のリアルな〝群像劇〟は、震災の記憶を継承するだけにとどまらず、国民の命を守る「防災意識の啓発」という重要な使命を帯び始めている。
(梶原紀尚)
100人以上に取材
平成7年1月17日。阪神大震災当時、高校2年生だった宇田さんは、住んでいた岡山県倉敷市から神戸にボランティアに入った。そこでオレンジ色の制服に身を包んだ神戸市消防局の救助隊員らが奔走する姿を目の当たりにして、「いつかこの事実を伝えなければいけない」と強く思ったという。
平成12年に神戸で劇団「PEOPLE PURPLE(ピープル パープル)」を旗揚げ。劇団も軌道に乗った16年、震災をテーマにした脚本作りに取りかかった。
取材のため神戸市内の消防署を訪ねたが、門前払いの毎日。それでも熱心に通い続け、何とか知人のつてをたどって会った救助隊員が「隊員全員の話を聞くなら」という条件で取材に応じてくれた。
約2カ月かけて、最前線で救助活動に当たった救助隊員ら100人以上に取材。壮絶な現場で何人も救助しながら、「わしらは負けや」と口々に漏らした隊員らの姿が印象的だった。