殺処分ゼロへ譲渡会に注力 埼玉県、犬猫の受け入れ先拡大目指す

 県は、引き取り手が見つからない犬や猫の譲渡会に力を入れている。これまで適正な飼い方の啓発や野良猫の繁殖抑制に取り組んできた。その結果、平成29年度の殺処分数は1千匹を下回り、18年度の約10分の1にまで減少した。今後は県主催の譲渡会を通じて引き取り手を見つけて「殺処分ゼロ」実現を目指す。

 これまで犬猫を管理する県動物指導センターの収容能力を超え、一定の期間、引き取り手が見つからない犬猫に対して殺処分したケースがあった。殺処分数を減らすため、県はさまざまな施策を実施してきた。26年10月から犬猫を10匹以上飼う住民に届け出を義務づけた。個人の限界を超えて多数の動物を飼育する「多頭飼育崩壊」による野良犬や野良猫の発生を防ぐためだ。また、野良猫に対する不妊・去勢手術活動への助成制度を推進するなどして抑制してきた。

 県生活衛生課の担当者は「繁殖抑制などの活動を『蛇口を締める』と呼んでいるが、ようやく蛇口が締まってきた。これからは(犬猫の)受け入れ先を増やす譲渡会の活動に力を入れていきたい」と話している。

 これまでの譲渡は、県動物指導センターから動物愛護団体を経由して引き取り手に渡るケースと、同センターが直接、引き取り手に譲渡する2ルートがある。これに今年から始めた県主催の譲渡会が加わることになり、県庁で開かれた3回の譲渡会では、犬12匹と猫20匹の飼い主が決まった。

 ただ、現時点では動物愛護団体への依存度が高い。29年度に譲渡されたのは733匹。うち552匹は団体を経由しており、団体の活動が限界を迎える可能性もある。県が譲渡会に力を入れるのは、団体への依存度を引き下げる狙いもある。

 今後は県主催の譲渡会にとどまらず、県内の市町村や民間企業との連携を模索している。県は、買い物客ら大勢の人目に触れる大型ショッピングセンターの入り口などで譲渡会を開催すれば認知度も高まり、引き取り手が見つかる機会も増えるとしている。

 上田清司知事は11月の記者会見で「公益活動などを熱心に取り組んでいただいている企業に、まずは連携を働きかけたい」と意欲を示している。 (川上響)

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