大阪都構想否決 九州でも動揺 路頭に迷う維新議員 「野党再編」は諸刃の剣

 「大阪都構想」をめぐる住民投票の否決から一夜明けた18日、九州選出の維新の党所属国会議員らに動揺が広がった。橋下徹・同党最高顧問が今年いっぱいでの政界引退を、江田憲司代表が党代表の辞任をそれぞれ表明したためだ。党の屋台骨を失い、金看板の大阪都構想を否決された維新議員に展望はあるのか。1年後の参院選を前に、視界不良が続きそうだ。 (九州総局 村上智博)

 「厳しい結果で、この先の参院選のことはまだ考えられない」

 松野頼久幹事長(比例九州)は電話による産経新聞の取材にこう繰り返し、衝撃の大きさを物語った。辞任を表明した江田氏から代表後継に指名された松野氏だが、自分のことよりはまず、党の態勢立て直しで頭がいっぱいのようだった。

 同氏周辺は「参院選はこのままでは戦えない。民主党との連携も真剣に考えざるをえない」と松野氏の苦しい胸の内を代弁する。

 松野氏は平成25年、江田氏と国会内で勉強会「既得権益を打破する会」を民主党の細野豪志政調会長と3人で設立するなど、民主党とも気脈を通じている。このため、民主党内にも「行政改革」を旗印にした維新との連携に期待する声がくすぶる。

 松野氏が代表になれば細野氏とのパイプを生かした野党再編の足がかりになる可能性もある。

 ただ、維新は自民や公明のように地方支部が整備されておらず、組織政党とはほど遠い。野党再編は諸刃の剣でもある。野党だけでなく、自民を含む他党の草刈り場となって、分裂する恐れもあるためだ。

 九州は伝統的に自民党が強く、維新への理解と支持の広がりが期待しにくいのも事実だ。松野氏自身、実父の頼三元農林相(現農水相)は自民党出身だ。

 維新の下地幹郎衆院議員(比例九州)は、「大阪都構想は行革が進む試金石だっただけに残念だった。来夏の参院選までにどう組織政党に生まれ変われるかだ」と語るが、今のところ処方箋は見当たらない。下地氏は周辺に「民主党が再編に慎重な岡田克也代表から、再編派の細野氏に代わればいい」と漏らしている。

 また、維新の河野正美衆院議員(比例九州)は産経新聞の取材に、「何でも反対の他の野党とすぐにくっつくのはどうなのか。第三極としての受け皿を目指すべきだ」と述べ、拙速な論議は慎むべきとの考えを示した。

 実際、九州以外の維新議員の中には「一緒にやろうと誘っても、泥舟に乗りたがる人なんかいない」と自虐的に語る向きもある。野党再編による党勢立て直しは容易ではないとの見方を示す。

 維新は昨年12月の衆院選比例代表九州ブロックで約75万票を集め、かろうじて3議席を獲得した。次点に泣いた前職の山之内毅鹿児島県総支部長は「『小選挙区は自民』『比例は維新』に投じた有権者をつなぎ止めるのは、より厳しくなった」と頭を抱える。

 九州選出のある与党幹部は、「維新はもともと九州では求心力はない。安倍政権に近かった橋下氏がいなくなれば、ますます野党化するだろう。参院選でも風が吹くわけはない」と冷ややかに語った。

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