海の森林のことを「藻場」という。水産資源の豊かな北海道でも最近特に、この藻場の磯焼けが進み、「海の砂漠化」が大きな問題になっている。
こうした中、「砂漠化防止に貢献できないか」と、函館港で昨年6月から、海の森づくりに向けた調査に取り組んでいるのが、札幌市内のテクノパークにオフィスのある環境調査会社のエコニクスだ。エコニクスは、光ファイバーを使った海洋観測システムの開発を行っている。
同社のマリンラボ所長の鹿糠幸雄さん(52)は、専門は化学分析だが、手先が器用なことからさまざまな機械を手づくりし、海洋調査の効果を上げている。
「海の森(藻場)作りにはまず、海を知らなければいけない」と、光ファイバーを使った海洋観測システムで、海中のデータを取得する。リアルタイムの24時間データだ。
現在、函館港の内側と外で計測しているのは、潮位、水温、PH、塩分、溶存酸素など。「湾内でも水温の変動がこれほど急激に起きるとは思わなかった」。細かいデータを取ることで、分かってくることがある。
そのために、さまざまな機械を開発し、改良を続けている。リアルタイムでの観測が、研究室にいながらにして可能になり、藻場の整備の効率化が飛躍的に高まった。
「今は手探りだが、人間の見えないものが、こうしたデータから見えてくる。10年後までに藻場を元通りにしようとすれば、今すぐにやらないといけない。いかに早く回復させるかだ」と、鹿糠さんは力を込める。
「興味を示してくれるところは多い」とは言うが、なかなか商売には結びつかない。研究開発には、かなりの費用がかかるが、「北海道の海だけでなく、日本中の海が再び豊かに蘇るときを期待」して、研究は続く。
(松垣透)