日本の議論

JR東日本、電車内の携帯電話「電源オフ」ルール緩和へ ペースメーカーに影響なし

東日本の鉄道各社が電車内の優先席付近で携帯電話の電源を切るよう求めている規制ルールについて、JR東日本が10月から、混雑時を除いて「電源オフ」は求めないとルールを緩和する。同社のほか、同様のルールを定めている関東、東北、甲信越の計36の鉄道事業者も足並みをそろえる。現行ルールをめぐっては、医師や心臓ペースメーカーの利用者団体が「機器に影響はない」と患者に冷静な対応を訴えてきた。ただ、緩和に当たっては「患者への安全性の周知が十分でない」として、患者の混乱を懸念する声もあり、周知徹底が課題となっている。

関西では先駆けて緩和

現行ルールは、携帯電話から出る電波が心臓ペースメーカーなど医療機器に影響を及ぼす恐れがあるとの理由から定められた。JR東によると、ルールは規則として明文化されているわけではなく、「乗客にお願い」していたという。

総務省などによると、現行ルールの根拠は、有識者や業界団体などでつくる民間団体「不要電波問題対策協議会」(現電波環境協議会)が平成9年に定めたガイドラインだ。その中では、当時の実験結果で、電波が医療機器に影響を及ぼしたケースもあったことから、携帯電話からペースメーカーを22センチ以上離すことを推奨した。

これを受け、鉄道各社で調整を進め、15年に関東、16年には関西の各社で「優先席での電源オフ」を統一ルール化した。足並みをそろえたのは、各社でルールが異なれば、乗客から「何であの会社は電源を入れていいのに、こっちはだめなんだ」(私鉄担当者)など苦情が出る恐れもあったからだ。また、近年は各社で相互直通運転をする路線が多く、ルールの違いが混乱を招く可能性があることも影響しているという。

17年には総務省も、ガイドラインの内容を踏襲する形で、国として22センチ以上離すことを盛り込んだ指針を定めた。

しかし、第2世代と呼ばれる携帯電話サービスが終了し、出回っているのが発する電波の弱い第3世代のみとなったほか、医療機器も国際規格で電波に対する耐性を強化することが定められたことを受け、総務省は25年1月に指針を「15センチ以上離す」に緩和した。

同3月には市場に流通する主なペースメーカー26機種について、総務省が近距離から携帯電話などの電波を当てる実験を実施した結果、「いずれも日常生活を送る上で影響はない」(総務省担当者)とする結論を得たことを明らかにした。

同省の実験結果を受け、JR西日本と関西の私鉄各社が加盟する関西鉄道協会は26年7月、関東に先駆けて電源オフを「混雑時のみ」とルールを緩和した。

関東では混雑の度合いが関西より激しく、乗客同士の距離が密接する可能性が高いほか、「ペースメーカー利用者の中には不安に思う人がいる」として規制が続いていたが、実験結果を受けた先月の総務省の指針改訂を受け、各社がルール変更を検討していた。

会員限定記事

会員サービス詳細