防衛省は30日、過去最大となる総額5兆4898億円の令和3年度予算の概算要求を決定した。前年度当初予算比3・3%増。中国やロシアが開発する極超音速滑空兵器(HGV)を追尾・探知する「衛星コンステレーション」の研究費として2億円を計上するなど、従来の陸・海・空にとどまらない新領域「宇宙・サイバー・電磁波」に重点を置いた。
衛星コンステレーションは低軌道に大量の小型人工衛星を投入し、高速で複雑な動きをするHGVに対応。米国のミサイル防衛構想の一環で、日本も参加を目指す。
令和8年度をめどに打ち上げる宇宙状況監視衛星の設計・研究費に211億円を盛り込んだ。同衛星は、日本の衛星に衝突する危険性がある宇宙ごみ(スペースデブリ)などの動きを監視する。宇宙状況監視態勢の構築に取り組む航空自衛隊の宇宙作戦隊(20人)などを指揮下に置く「宇宙作戦群」(70人)も新設。これら宇宙関連経費は計724億円となる。
サイバー分野では、サイバー防衛機能を一元的に担う自衛隊サイバー防衛隊を3年度末に540人規模で新設し、各自衛隊のサイバー関連部隊から人員の一部を移す。
防衛費は当初予算ベースで今年度までに8年連続で増加している。今回の概算要求では、政府が検討中の地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の代替策に関する経費は金額を示さない「事項要求」にとどまり、総額に含まれない。