初夏の運動会シーズンを迎えた大阪府東大阪市で、市立小学校3校が組み体操の演目で7段ピラミッドや5段タワーを行おうとしていたことがインターネット上で拡散され、問題となった。過去には大きな事故も起こっており、複数の自治体が段数制限や廃止などの対策に取り組む一方で、高い段数に挑戦し続ける学校も。巨大な組み体操はなぜ無くならないのか。(木ノ下めぐみ)
問題になったのは、6月1、2日に運動会を行った東大阪市立小学校3校。いずれも7段のピラミッドを予定し、1校は5段タワーも練習していたが、5月29日にツイッターに書き込まれた「子供の命を助けてほしい」とのメッセージが拡散され、騒動に。意見を求められた吉村洋文府知事は「重大な事故が起きている。やめるべきだ」と言い切った。結局、この3校はピラミッドを3~6段に、タワーを3段に減らして実施した。
ある学校の校長は「子供たちには成功させたいという強い思いがあったが、安全面を考えやむなく中止にした」と悔しさをにじませる。学校には5月27日に「地域はみな怒っている。低い段数で行ってほしい」との匿名の電話があったが、「安全に配慮すると丁寧に説明した」(校長)。練習中も大きなけがはなかったが、運動会3日前の30日時点での完成度を見て校長が「当日、安全に成功させられそうにない」と判断、児童に減段を伝えたという。「児童は皆残念がっていたが、皆の安全を考えての決断だと納得してもらった」と校長は話す。
教育現場では、運動会の目玉演目として、組み体操を支持する声は根強い。「全員で組み体操の練習を重ねることで信頼感が醸成され、不登校がちだった生徒が学校に戻ってきた」という校長経験者や、「長年の伝統となっており、子供があこがれを持っている。その意欲をくんでやりたい」と話す教員も。「運動会本番、段を積み上げては失敗を繰り返す子供を懸命に応援した。成功したときは感動したし、周囲の歓声もすごかった」と振り返る保護者もいる。
一方で、平成27年9月には大阪府八尾市立中学校で行われた運動会で、全学年の男子生徒で挑んだ10段ピラミッドが崩落。下敷きになった生徒1人が右腕を骨折し、事故の様子が動画投稿サイト「ユーチューブ」で流れ、社会問題になった。このとき、23~26年度には組み体操の練習中に年間8000人を超える児童生徒がけがをしていたことも判明した。