「エッケ・ホモ 現代の人間像を見よ」 神なき時代…問題意識の数々

「エッケ・ホモ 現代の人間像を見よ」 神なき時代…問題意識の数々
「エッケ・ホモ 現代の人間像を見よ」 神なき時代…問題意識の数々
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 目をそむけたくなるものほど見たくなるという自己矛盾にとらわれるはずだ。大阪市北区中之島の国立国際美術館で開催中の「エッケ・ホモ 現代の人間像を見よ」展のことである。

 展示は「日常の悲惨」「肉体のリアル」「不在の肖像」の3つの章によって構成されている。

 最初の章は、ジャン・フォートリエの「人質の頭部」、浜田知明の「初年兵哀歌(歩哨)」といった直視しがたい死の現実などを描写、表現した作品が並ぶ。戦争犯罪や大量虐殺などの事実を知ったわれわれは、悪や死を虚飾なしにえぐる人間描写のなかに、理性や同情、博愛といった概念に還元されることのない人間のあり方を見る。

 圧巻は2つ目の章だ。虚実の境があいまいになったいま、現実感を失った者たちが肉体のリアリティーを取り戻す試みを追ってゆく作品などが並ぶ。

 たとえばオルランの「これが私の身体…、これが私のソフトウェア…」は、1990~93年まで9回にわたって行った整形手術パフォーマンスをなまなましく写真で示す。この作品に加え、両足を切断したモデルが舞台装置の上を義足で歩いたり、操作したりする様子をスクリーンに映し出す小谷元彦の「ターミナル・インパクト」、太った女性の「裸体」をこれでもかと提示するローリー・トビー・エディソンの写真作品群の前を素通りするのは困難なはずだ。

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