晩婚化が進む日本では、不妊に悩むカップルは6~10組に1組に上るとされる。一般的に不妊治療のために病院に駆け込む以前に夫婦がトライするのは、妊娠しやすい時期を狙って性交するタイミング法。しかし、夫は妊娠の仕組みや妻の体調の変化には無知な場合が多い。「この日にお願い」と言われる夫の気持ちはどうなのか? 夫側の気持ちを聞いてみると…。
「この日、お願い」にプレッシャー
妊娠、出産、育児に関するスマートフォン向け情報サイト「ルナルナファミリー」を提供するエムティーアイ(東京都新宿区)が8月に会員602人(女性)にアンケートしたところ、妊活開始の平均年齢は30.9歳。平成23年の妻の平均初婚年齢が29歳だから、結婚2年以内に妊活を開始している計算だ。
妊活内容は、「基礎体温を付ける」(79.2%)、「情報収集」(49.8%)、「産婦人科受診」(36.2)%を上回り、「排卵日に合わせた性交渉」が最も多い86%(複数回答)。妊娠希望の妻の多くがタイミング法を利用しているようだ。
一方、夫側からは「タイミングと聞くだけで元気がなくなる」という意見も。不妊カップルから相談を受けることが多い都内の産婦人科医、竹内正人さん(53)は「男性は、女性が思う以上にナイーブ。妊娠のためのタイミングを計られているというだけで、男として否定されたようで、落ち込みます」。
都内のある会社員(38)は、第2子を希望する妻から「この日、お願い」と頼まれたが、プレッシャーが高くなりすぎ断念。妻からは次回、アダルトビデオを見る提案をされ「ここまでする必要があるのか」と男のプライドをひどく傷つけられた。
一方、不妊治療の末、2人の子供を授かった別の都内の会社員(42)は「仕事で疲れていても、その日を変更することができない。帰宅途中に栄養ドリンクを飲んで、ひたすら頑張るしかなかった。夫婦関係は悪くなるし、つらい経験」と振り返る。
「5日間」を知ろう
夫のプライドを傷つけずに、妊活するにはどうしたらいいのだろう。
「性に対してオープンで、子供がほしいと一致している夫婦なら『この日』と妻から言われても、明るくできそう」と話すのは、各地で妻への愛を叫ぶ活動をしている日本愛妻家協会主任調査員で初代サケビストの小菅隆太さん(39)。小菅さんが提案するのは夫婦だけの「イエスorノー」マーク。言葉にしなくても妻の気持ちが分かり、照れくささがなくなるとする。また、新婚当時からは性に関する話をタブー視せず、ユーモアを忘れないこと。セックスは、夫婦仲を良くするための手段と共通理解しておくのも良い方法だ。
妊娠は卵巣から卵管に放出された卵子(排卵)と精子が出合って受精、子宮内に着床することで成立する。しかし、男性の多くは「排卵」という言葉すら知らず、「性交したら妊娠する」程度の知識しかないのが実情だ。
小菅さんは28歳で結婚したとき、会社の先輩から「子供がほしいなら、1カ月のなかでゴールデンの5日間しかないぞ」とアドバイスされたのが役立ったという。
「普通の男は、妊娠しやすい時期が5日間しかないなんて、知らない。避妊の知識を習っても、妊娠ポイントは教科書には書いていないですから。こんな知識があれば、妻から求められる前に自らなんとなくタイミングを測れる」と話している。(村島有紀)
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