悪質な客には氏名公表の罰則も辞さず カスハラ対策、相次ぐ自治体の条例制定

全国初のカスハラ防止条例を可決した東京都議会
全国初のカスハラ防止条例を可決した東京都議会

顧客らが従業員に理不尽な要求や迷惑行為をする「カスタマーハラスメント(カスハラ)」を防止するため、条例を制定する自治体が相次いでいる。従業員だけでなく、公的機関も対象として自治体職員を守る狙い。三重県桑名市が全国で初めて悪質な客の氏名を公表する「罰則」付きの条例を整備したが、顧客側の萎縮につながる恐れもあり、慎重な対応が求められる。

桑名市議会は昨年12月、カスハラへの制裁として、氏名公表を盛り込んだ条例案を賛成多数で可決した。

条例によると、市内の事業者や従業員向けのカスハラ相談窓口を設置。弁護士らでつくる対策委員会が、事業者側と客の双方からの聞き取りなどの調査にあたる。カスハラと認定後、悪質な場合は警告し、改善されなければ氏名を公表する。条例は4月1日に施行。市は3月末までにガイドラインを作成する予定だ。

罰則は盛り込んでいないものの、昨年10月には東京都で全国初のカスハラ防止条例が成立した。カスハラを「著しい迷惑行為で、就業環境を害するもの」と定義し、事業者に適切な措置を講じる努力義務を定めている。同11月には北海道でも条例が成立した。

熊本市が職員を対象に2023年度のカスハラの有無を調査したところ、回答した約6700人のうち2割弱の1103人が「カスハラを受けた」と答えた。またカスハラを受けた職員の21%が精神面で不調をきたしたという。市の担当者は「従業員や職員を守らなければ人材獲得にも影響する」と話した。(桑島浩任)

従業員追い込むカスハラ 問われる企業の覚悟

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