国連の女性差別撤廃委員会で日本の女性政策を対面で審査する会合がスイス・ジュネーブで8年ぶりに開催され、男系男子による皇位継承のあり方も論点の一つになった。NGOとして参加した「皇統を守る国民連合の会」会長の葛城奈海氏は「女性差別」と批判されるものではないと訴え、日本政府の代表団も皇室のあり方を同委で取り上げることは不適切と反論した。 同委は近く、改善勧告を含む報告書をまとめる。
天皇は祭祀王
2016年の同委の会合では日本に関する見解の最終案に、男系男子の継承を女性差別だとして皇室典範の見直しを求める記述を盛り込み、日本側の抗議で削除された経緯がある。
葛城氏は今月14日の5カ国のNGO関係者が出席する会合でスピーチし、「天皇は祭祀(さいし)王だ。ローマ教皇やイスラムの聖職者、チベット仏教最高指導者のダライ・ラマ法王はみな男性なのに、国連はこれを女性差別だとはいわない。なぜ日本にだけそのように言うのか」と疑問視した。
その上で、「世界にはさまざまな民族や信仰があり、それぞれ尊重されるべきだ。内政干渉すべきではない」と強調した。
この会合には日本から約30団体約100人が参加し、葛城氏の発言時間は35秒だった。
葛城氏は「皇位の『父系継承』は女性差別とは無関係」などと説明する皇位継承の骨子について、英語版パンフレットも用意し、委員らに手渡した。ある委員は皇室について「リスペクトしている」と述べ、「ただ、われわれはスペインなど王室のある国に対して同じことを言っている。日本に対しても平等の観点から言っている。聞くか聞かないかは自由だ」と語ったという。
対面で意思表示する重要性
葛城氏は帰国後、産経新聞の取材に応じ、「短いながらスピーチさせてもらい、各国の委員にパンフレットを配って対話できたのは、一定程度の影響があっただろう。対面で意思表示する重要性を感じた」と振り返った。
「国連から勧告が出されても、対応するかは当事国の判断。主権国家として自分たちの意思は自分たちで決める必要がある」と指摘し、「保守も国連の舞台できちんと主張する必要がある」と述べた。
同委では、17日に日本政府代表団が各国の委員の質問に答える審査会が開かれ、選択的夫婦別姓の導入に向けた取り組みを尋ねる質問に加え、皇室典範の改正の検討を求める意見も出た。
日本政府側は皇位継承について「 皇位継承のあり方は国家の基本に関わる事項で、委員会がわが国の皇室典範について取り上げることは適切ではない」と説明。一方、スペインの議長は「差別的な問題と直接関係がある事例と考えられる。適切だ」と反論したという。
青木一彦官房副長官は18日の記者会見で「委員会の最終見解が今後公表され、その内容を検討した上で、関係省庁が適切に対応したい」と語っている。(奥原慎平)